メスのボノボたちがオスを襲撃してボコボコにする事態が発生、子どもに危害を加えようとしたことへの報復の可能性も

サイエンス

コンゴ民主共和国に生息するボノボはチンパンジーによく似た霊長類で、人間に非常に近く平和を好むことで知られています。ところが2025年2月、野生のメスのボノボ5頭がオス1頭を襲撃し、前例がないほどの暴力をふるったことが報告されました。

Coalitionary intra-group aggression by wild female bonobos: Current Biology

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(25)01041-3

'A forest with bonobos has never been so quiet': Most extreme case of violence in 'hippie' species recorded, with females ganging up on male in unprecedented attack | Live Science https://www.livescience.com/animals/land-mammals/a-forest-with-bonobos-has-never-been-so-quiet-most-extreme-case-of-violence-in-hippie-species-recorded-with-females-ganging-up-on-male-in-unprecedented-attack

チンパンジーはかなり攻撃的な性格であることが知られている一方、ボノボでは個体間の争いがほとんど確認されておらず、平和な生活を営んでいることがわかっています。また、ボノボは「自分しか知らないおやつの場所」を人間のパートナーに教えることができるなど、高度な知的能力を持っていることも報告されています。

しかし、平和なことで知られるボノボであってもオス同士の攻撃は一般的だそうで、メスのボノボたちはこれに対抗するべくチームを組むことも確認されています。こうしたメスによる連合行動は、ボノボの社会におけるメスの優位性の基盤になっているとみられ、これがボノボの社会において致命的な攻撃や子殺しが少ない理由かもしれないとのこと。

by Jeroen Kransen

2025年2月18日、マックス・プランク動物行動学研究所の博士研究員であるソニア・パシュチェフスカヤ氏は地元のアシスタントと共に、コンゴ民主共和国のサロンガ国立公園で約60頭からなるボノボの群れの観察を行っていました。その日の朝は前兆らしきものもなかったそうで、「いつも通りのデータ収集日でした」とパシュチェフスカヤ氏は語っています。

ところが突然、約500メートル離れたところからボノボの叫び声が聞こえ、森の中に響き渡ったとのこと。その声の甲高さからパシュチェフスカヤ氏は当初、小型のレイヨウを捕まえたことによる興奮で出したものではないかと思ったそうです。

すると群れのボノボたちが現場に向かったため、パシュチェフスカヤ氏らもその場に移動しました。パシュチェフスカヤ氏は、「その時一緒にいたボノボたちはみんな木から降りて、そこへ駆けつけ始めたんです」と語っています。

声が聞こえてから数分後に駆けつけたパシュチェフスカヤ氏は、まず最初に血の臭いを感じたとのこと。現場では5頭のメスからなるチームがうつぶせになったオス1頭を踏みつけ、殴り、かみついていたそうで、これを見てパシュチェフスカヤ氏はレイヨウ狩りではないことを悟りました。

襲撃されたのは「ヒューゴ」という名前の19歳のオスで、暴行によって髪の毛の大部分、複数の足指、耳の一部、そして指関節の肉を失いました。また、ほとんど顔が識別できないほど傷つけられており、睾丸(こうがん)にもかみつかれていたそうです。

by phōs graphé 他の群れのメンバーも襲撃現場にいましたが、誰も介入しようとはしませんでした。パシュチェフスカヤ氏は、「みんなとても静かでした。ボノボのいる森がこれほど静かだったことは、今までありませんでした。こんなのは見たことがありません」と語っています。 約30分にわたり続いた暴行のきっかけは不明ですが、パシュチェフスカヤ氏らは襲撃の2日前に、ヒューゴが襲撃グループにいたメスの赤ちゃん1頭をつかもうとしているのを目撃していました。今回の襲撃は、このヒューゴの行為に対する報復だった可能性もあるとのこと。 パシュチェフスカヤ氏は、「もちろんこれは2日前の出来事のひとつに過ぎませんが、仮にこのようなことが続いていれば、襲撃の引き金になっていた可能性もあります」と語っています。今回の現場から約300km離れた別のボノボの群れでは、今回の襲撃に類似した唯一の事例が確認されており、このケースは赤ちゃんの殺害未遂に対する罰だったとみられています。ヒューゴは最終的に何とか逃げることができたものの、その後は行方不明になっており、研究チームはヒューゴが死亡したのだろうと推測しています。

一方、日本の中央大学でボノボを研究しており、今回の報告には関与していない徳山奈帆子氏は科学系メディアのLive Scienceへのメールで、ヒューゴがまだ生きている可能性があると指摘。徳山氏らの長期的調査では、数カ月間姿を見せなかったオスが群れに戻ってくるケースもあったそうで、ヒューゴが死んだかどうかについては慎重に検討する必要があるとのことです。

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