Nintendo Switch 2のUSB-Cポートは独自仕様を採用することでサードパーティー製アクセサリーを排除しておりこれは「戦略的怠慢」であるとテクノロジーレビューチャンネルが批判

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チャンネル登録者数1650万人超のテクノロジーレビューチャンネルであるLinus Tech Tips(LTT)が、Nintendo Switch 2には「全く不要な独自仕様」が採用されていると主張しています。

Nintendo's Greed could Change the Tech Industry - YouTube

LTTが今回取り上げるのはNintendo Switch 2ユーザーの財布に直撃する問題であるという、「不要な独自仕様への転換」です。これについてLTTは「家庭用ゲーム機業界において、他社が普遍的な標準化や相互運用性へと大きく舵を切っている中で、Nintendo Switch 2における独自仕様の採用は、正当な理由がない、『金儲けのため』あるいは『できるからやっただけ』といったものの典型例です」「大きな問題は、任天堂が業界のリーダーであるため、この行動を競合他社が追随する可能性が高いということです」と指摘しました。

Nintendo Switch向けのサードパーティー製ドックはさまざまなものがあります。以下のサードパーティー製ドックは非常にコンパクトで持ち運びやすいもので、Nintendo SwitchだけでなくノートPCなどでも問題なく動作しますが、Nintendo Switch 2でだけは動作しません。これがNintendo Switch 2における「不要な独自仕様への転換」の結果であるというわけ。LTTは「ユニバーサル(共通)規格であるはずのUSBが、Nintendo Switch 2では非ユニバーサルになってしまっている」と指摘。

そもそも、USBは1996年に誕生して以来、多くの端子を置き換え、「簡単に挿せるコネクター」という役割を果たしてきました。改訂を重ねるごとに電力供給やデータ転送速度などのスペックが向上するだけでなく、下位互換性および上位互換性を保ったままであるという点も特徴です。そんなUSBにおいて最も大きな進化が「USB-C」で、もうひとつが「USB PD」です。USB PDは異なる機器同士が正しく電圧や電力をやり取りできるようにするプロトコルで、これによりデバイス同士で「私はこれだけの電力を送れます」「私はこれだけの電力を必要としています」といったやり取りが可能になります。

Nintendo Switch 2のUSB-Cポートにおける通信内容を調べるべく、LTTはInfineon EZ-PD CY4500-EPR Protcol Analyzerを使用。

分析の結果、「VENDOR_DEFINED(ベンダー定義)」というやり取りが多数発生していることに気づきます。これについてLTTは、「要するに、Nintendo Switch 2とやり取りしているアクセサリーが任天堂製か否かを確認しているわけです」と説明しました。これにより、任天堂製のアクセサリーを使用している場合は正常に動作しますが、サードパーティー製のアクセサリー(ドックなど)を利用すると、映像の出力が停止してしまうように仕様が変更されていたわけです。

これについてLTTは「任天堂は一般的なUSB PDの柔軟な動作をわざわざ排除し、任天堂独自のプロトコルを使った通信しか受け付けていないということです。これは『悪意』かもしれませんが、我々の見立てでは『戦略的怠慢』、つまり自社製品で動くようにしたらそれ以上の互換性を確保する努力はしなくてもよい、というものでしょう。その結果、ユーザーは追加のドックが欲しい場合、サードパーティー製の安価なものではなく、任天堂製の高価なドックを購入する必要性を迫られています」と指摘しました。

さらに、「Appleは独自仕様で悪名高いですが、それでもUSB-CやThunderboltの普及をけん引しました。また、2015年にMacBookのI/OをUSB-CのみにしたのもAppleです。任天堂はUSB-Cという共通規格をわざわざ『自社専用』にしてしまいました。これは業界全体に悪影響を及ぼしかねません」とも指摘しています。

LTTはこのような仕様変更に対して顧客側ができることは「任天堂にお金を渡さないこと」だと言及。具体的には、次世代エミュレーターを待つか、任天堂が問題を解決するまでゲーム機の購入を控えることがベストだとしています。なお、サードパーティー製アクセサリーの中にもNintendo Switch 2に対応したもの(Antank S3など)が存在するそうですが、「任天堂がファームウェアアップデートで潰す可能性がある」とLTTは指摘しました。

なお、動画では説明しきれなかったデータや情報を紹介する補足ブログも公開されています。

Nintendo Switch 2 Dock USB-C Compatibility | LTT Labs

https://www.lttlabs.com/blog/2025/08/30/nintendo-switch-2-dock LTTの補足ブログによると、USBでは「電力供給における標準的なネゴシエーション」「データの方向」「フォーマット」「その他事項」に関するやり取りをデバイス間で行う際に、「ベンダー定義メッセージ(VDM)」が使用されるそうです。これはDisplayPortやThunderboltなどの標準フォーマットだけでなく、メーカーが使用している言語やフォーマットに合わせてUSB-Cケーブルを使い分けたい場合の独自モードにも使用されます。VDMの「良い」使用法と「悪い」使用法の違いは、VDMの設計者がプロトコルを公開・登録し、他のメーカーやユーザーが利用できるように互換性を持たせているかどうかで、任天堂はVDMの仕様を公開していません。 実際、任天堂独自のVDMを採用している任天堂純正のアクセサリーである専用ドックとNintendo Switch 2を接続した場合、以下のように最大15Wの電力を消費して、ドックがゲーム映像をディスプレイに出力することを可能にします。

しかし、サードパーティー製アクセサリーを使用すると、本体にACアダプター経由で15Wの電力が供給されるものの、ドックからディスプレイへの映像出力が正しく行われません。

なお、LTTは純正ACアダプター(上)とサードパーティー製アダプター(UGREEN Nexode PD充電器 100W)を使ってNintendo Switch 2を充電し、フル充電までにかかった時間を計測していますが、これには大きな差はなくほぼ同じ速度で充電することができたそうです。

LTTは「Nintendo Switch 2は最大15Wでしか充電できません。充電方法はNintendo Switch 2の専用ドック、サードパーティー製ドック、Nintendo Switch 2の電源アダプター、USB-Cモニターのどれを利用しても同じように充電できます。専用ドックあるいは電源アダプターで充電すると、Nintendo Switch 2をバッテリー90%まで充電するのにかかる時間は約2時間、100%まで充電するのにかかる時間は約3時間だそうです。

なお、LTTは「充電時間を最大化したい場合は、バッテリー残量を約75%(約1時間半の充電)にし、その後、バッテリーが切れるまでゲームをプレイするというサイクルを繰り返してください。これにより、ほぼ常に15Wで端末が充電され、トリクル充電は行われません」「ほとんどのドックがNintendo Switch 2に対応していないのは、任天堂の悪意によるものではないかもしれません。単に怠惰なUSB-C仕様の実装によるものの可能性があります。USB-Cモニターとのやり取りをモニタリングしたところ、ドックが理論上正しい応答を送信しなければならないVDMの段階にさえネゴシエーションが到達していないことが分かりました」とも指摘しています。

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