米ドル/円は138円を引き続き目指す! 相互関税90日停止でも、トランプ政策のバイブルとなる論文が米ドル高是正を提案し、米財務長官が「円高進行は自然なこと」と発言
14:07 配信
⚫️トランプ政権の相互関税発動後、半日後に「90日停止」という報道でマーケットは乱高下
みなさん、こんにちは。 日本時間4月9日(水)13時、トランプ政権による相互関税が発動されました。 これでマーケットが神経質になったところで、中国政府が「米国からの輸入品に50%の追加関税を課すとコメント。すでに発表している34%の報復関税に上乗せして84%の税率となる」と発表したことから、マーケットの緊張感は高まります。 リスクオフにより、日経平均は暴落。米ドル/円は一時144.00円まで急落しました。 しかし、わずか半日後に「米相互関税、上乗せ分90日停止。日本も対象。10%の一律関税は維持」と報じられ、株価は急反発。 もっとも、報復措置を打ち出した中国に対しては、関税を125%に引き上げるようです。。。この125%が続くようだと、米国で中国の輸入品を扱っている企業は壊滅的な打撃をうけることになります。 ともあれ、これで日米の株価は急反発。本日(4月10日)の日経平均は一時2600円も反発しています。 相互関税発動からわずか半日後に一時停止といったニュースが飛び出るようだと、マーケット参加者はリスクを取りにくい。 当然、マーケット参加者の多くは、トランプ大統領が「どういった発想、流れで政策を決めているのか?」を模索しています。 そんな中、マーケットで大きな注目を集めている論文があります。
その論文を書いたのが、スティーブン・ミラン(Stephen Miran)です。
⚫️トランプ政策のバイブルと言えるスティーブン・ミランの論文が、米ドル高是正を提案
スティーブン・ミランは現在、トランプ政権下で大統領経済諮問委員会(CEA、Council of Economic Advisers)の委員長を務めています。 この役職は、経済政策に関する助言を大統領に提供し、経済戦略の立案に重要な役割を果たすものです。 その経済政策に関する助言を大統領に提供しうる立場にあるスティーブン・ミランが執筆した論文「A User's Guide to Restructuring the Global Trading System(国際貿易システム再構築のユーザーガイド)」がマーケットで注目を集めています。 内容を要約すると、下記のようになります。(A)問題の診断:ドル高と貿易不均衡スティーブンは、米ドルが世界の準備通貨として機能することで恒常的に過大評価されていると指摘します。このドル高は輸入品を安くする一方で、アメリカ国内の製造業を弱体化させ、経済的不満を引き起こしています。この不均衡が、現在の貿易システムに対するナショナリスト的な批判の根源であり、貿易赤字や雇用の海外流出に繋がっていると分析します。(B)解決策としての関税の活用関税を主要な政策ツールとして提案し、これを戦略的に使用することで貿易条件を改善し、アメリカの競争力を高めると主張します。2018-2019年の対中関税を例に挙げ、関税が通貨相場の調整(例:ドル高に対して人民元安)を引き起こし、インフレを抑えつつ貿易赤字を是正する「通貨オフセット効果」をもたらしたと説明します。関税は単なる税ではなく、貿易相手国との交渉レバレッジとして機能し、アメリカ市場へのアクセスを「特権」と位置づけます。(C)通貨政策と金融市場への影響ドル高是正のために、外国為替介入や連邦準備制度による金利上昇の抑制など、関税以外のツールも検討しています。これらの政策が金融市場に与える影響(ボラティリティの可能性など)を分析し、段階的な導入や事前ガイダンスで不確実性を軽減する案を示します。 ここで気をつけたいのは、本論文は政策提言ではなく、可能な政策オプションの分析であるとスティーブンが強調していること。 あくまでも目的は、経済・金融市場への影響を評価するための枠組みを提供することだと言っています。 そのうえで、関税導入はリスク(報復関税や短期的なインフレ圧力)を伴うものの、適切に管理すればアメリカ経済を強化しつつ、消費者への悪影響を最小限に抑えられると主張していることが重要。 つまり、この論文をチェックすると、トランプ大統領が推し進める相互関税は、スティーブンが執筆した論文をもとに進められている政策だということがわかります。 この中でトレーダーが気になるポイントは、米ドル高是正のために、外国為替介入や連邦準備制度による金利上昇の抑制など、関税以外のツールも検討しているといったところでしょう。
通貨に関しては、ベッセント財務長官もコメントしていますのでチェックしてみましょう。
⚫️ベッセント財務長官が「日本では円高が進んでいますが、自然なこと」と発言。米ドル/円は引き続き138円への過程に
「米相互関税、上乗せ分90日停止」といった報道でマーケットが荒れた4月9日(水)のNY市場では、ベッセント米財務長官が通貨について、FOX newsにコメントしています。「ヨーロッパ人は防衛費を増やすつもりなので、ヨーロッパの財政支出にようやくアップグレードが見られるでしょう。そして、それは『相応の負担をせよ』というトランプ大統領のNATO(北大西洋条約機構)に対する圧力であり、軍事同盟に対する圧力であり、それが彼らの経済を後押しするでしょう。日本では円高が進んでいますが、それは日本経済の非常に力強い成長とインフレ期待の上昇の結果であり、日銀が金利を引き上げているので、すべてが自然なことです」とベッセント氏は説明した(出所:FOX news) このコラムで何度もご紹介させていただいているベッセント財務長官は、日本経済の成長とインフレによって日銀が金融正常化を速め、円高になるのが自然なこととしています。 その文脈においては、仮に米ドル/円が急騰すれば、ベッセント財務長官にとっては「自然なことではない」となります。 前述のスティーブン・ミランの論文とベッセント米財務長官にコメントを考慮すると、米ドル/円の上値はどうしても重くなってしまうのではないでしょうか? 「米相互関税、上乗せ分90日停止」報道で、日米の株価が反発したため、米ドル/円も当面144円台あたりでサポートされるのでしょうが、米ドル/円の上値は重いまま。
138円レベルを目指して米ドル/円は戻り売りを継続です。
ザイFX!
最終更新:4/12(土) 14:07