“長生きする血管”を目指すための食材、キーワードは「おさかなすきやね」 血管を長持ちさせるには有酸素運動、筋トレなども重要

食事を見直すことで長持ちする血管を目指せる(写真/PIXTA)

私たちの体に張り巡らされた血管は、絶えず全身の細胞に酸素と栄養を運び、二酸化炭素や不要物を回収している。生命維持に必須の役割を担っているからこそ、「早死にする血管」か「100年長持ちする血管」かによって寿命が変わってくる。「早死にする血管」とは動脈硬化が進んでいる状態だというが、一方の「100年長持ちする血管」を目指すにはどうすればいいのか。【前後編の後編。前編を読む

塩分が多い食事後はトマトジュース

もう若くないし、血圧も高めだし、動脈硬化も進んでいるはずだから、いまさらどうしようもない──そう諦めモードになる人がいるかもしれないが、いくつになっても「100年長持ちする血管」を目指すことはできる。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんが説明する。

「すでに動脈硬化がかなり進んでいるからといって早死にするわけではありません。動脈硬化があっても100才まで長生きしている人の共通点は、きちんと検査を受けて血管の状態がわかっていることと、仕事や運動で体をしっかり動かしていることです」(東丸さん)

山形県立保健医療大学学長で高血圧専門医の上月正博さんが推奨するのは、ウオーキングなどの有酸素運動だ。

「血管を長持ちさせるエビデンスがあるのは有酸素運動です。血管の内皮から血管を拡張させるホルモンが分泌されるので、若返り効果があります。全身に酸素をたくさん取り込んで運動するので、血液の循環が改善されて血栓が詰まりにくくなり、血圧も下がる。肺や心臓、腎臓などの機能も改善して、持久力も高まります」

毎日のんびり散歩をするのが日課という人もいるが、血管の健康に与える効果は薄い。上月さんが続ける。

「早歩きなど息が切れるかどうかの中強度だと効果が出やすい。逆にランニングなどの高強度だと、血管が柔らかくならないことがわかっています。中強度で1日20〜30分、毎日歩いてください。暑い季節は、冷房の効いた大きいショッピングモール内を歩くのがおすすめ。室内でエアロバイクをこぐのも効果的です」

早歩きなど息が切れるかどうかのウオーキングだと効果が出やすい(写真/イメージマート)

血糖値を下げるには、筋トレもいい。

「筋肉を鍛えても血圧はあまり下がりませんが、血糖値は明らかに上がりにくくなるので、できるならやった方がいい。高齢者は、筋力が低下するサルコペニアや心身が虚弱になるフレイルの予防にもなる。ただし筋肉は一度壊れると修復に時間がかかるので、筋トレは週2〜3回にとどめてください」(上月さん)

東京医科大学名誉教授で循環器専門医の高沢謙二さんが推奨するのは「血管若返り体操」だ。

「“第二の心臓”ともいわれるふくらはぎは、血流が滞りやすい下半身から血液を押し戻すポンプの役割があります。かかとを上げ下げすることで、血液の循環が改善されて、血栓ができにくくなります。朝晩10回ずつが目安です」

運動に合わせて食事の見直しにも取り組もう。血管を守るには、何より塩分を摂りすぎないこと。

「塩分を摂りすぎると血管が硬くなり、血圧が上がりやすくなります。1日の塩分摂取量の目安は男性7.5g、女性6.5gまで。お酢やだし、ハーブなどを使って、塩分少なめを心がけましょう」(高沢さん)

塩分を摂りすぎたと思った日は、カリウムの摂取を意識しよう。日本歯科大学病院内科臨床教授で高血圧専門医の渡辺尚彦さんが言う。

「カリウムには血管を拡張させる働きがあり、ナトリウムの排出も促します。トマトやレモン、バナナ、りんごはカリウムが豊富です。私は塩分が多い食事をしたときは、トマトジュースでカリウムを摂るようにしています。ただし、腎臓が悪い人はカリウムで不整脈を起こす可能性があるので、注意が必要です」(渡辺さん・以下同)

血管を若返らせるキーワードは「おさかなすきやね」だ。

血管を若返らせる食材8選

「血液をサラサラにする食材の頭文字をとって並べたもので、お茶、魚、海藻、納豆、酢、きのこ、野菜、ねぎ類を食事に積極的に取り入れるといい。ただし同じものばかりを食べるのではなく、バランスのいい食事が基本です」

血管のためには食べすぎはNG。コレステロールが増えるので、腹八分目を心がけたい。

「食事のときは野菜を先に食べる習慣をつけると、満腹感が得やすく、血糖値の急激な上昇が抑えられます。野菜には抗酸化作用があり、コレステロール値を下げる働きもあります。ただし各種の数値が正常な人は、いまのままの食べ方で問題ありません」(高沢さん)

一方、いろいろ試してみても、なかなか血圧や血液検査の数値が改善しないこともある。

「血管や血圧には、睡眠不足やストレスも大きく影響しています。努力して減塩したのに、ストレスが強くて血圧が下がらないということはよくあります。血管の若さを保つには、トータルで健康的な生活を心がけてほしい」(東丸さん・以下同)

“血管の年齢”が気になる人は、調べる方法もある。

「『血圧脈波検査(CAVI、PWV)』といって、血管の硬さをチェックする検査法があります。寝た状態で両腕・両足首の血圧と、胸に心音マイクをつけて脈波を測定するだけなので、痛みはありません。『足関節上腕血圧比検査(ABI)』という上腕と足首の血圧を測定し、動脈の詰まり具合を調べる方法もあります。どちらも人間ドックで受けられます」

いまからでも生活を見直せば、1週間、1か月、1年……と血管を長持ちさせることは不可能ではない。すべては自分の行動にかかっている。

血管若返り体操

(前編を読む)

※女性セブン2025年7月17日号

関連記事: