金相場、3000ドル突破後も銀行は強気見通し維持-一段高の余地見込む
米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)やシティグループ、オーストラリアのマッコーリー・グループなどは、金価格が1オンス=3000ドルを突破した後も、金について強気の見通しを維持している。世界の経済成長に対する不安の高まりなどを理由に挙げている。
金価格は2022年終盤から上昇傾向にあり、中央銀行の購入拡大と中国勢の爆買いにより、わずか2年余りでほぼ2倍に値上がりした。今は金の伝統的な安全資産としての地位が投資家の関心を集めている。
トランプ米大統領のかく乱的な貿易政策から生じる景気リスクの懸念が強まる中、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場は14日、節目の3000ドルを一時上回った。米消費者マインドが落ち込む一方でインフレ期待は急上昇しており、不安の高まりに伴い、多くのアナリストが目標価格を引き上げている。
マッコーリーのコモディティ戦略責任者、マーカス・ガーベイ氏は金価格について、なお強気な展開を見込む。「今回の上昇局面が過熱ないし行き過ぎた領域にあると示唆するものは特に見当たらない」と述べた。同氏は先週、金価格が3500ドルまで上昇すると予想。従来の見通しは3000ドルだった。
ウォール街が金価格にさらなる上昇余地があると予想する主な要因を、次の四つのチャートで説明する。
ETF
金を裏付けとする上場投資信託(ETF)は過去4年にわたり純流出が続いていたが、今年に入り純流入に転じている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、北米では2月の流入額が月間ベースで20年7月以来の高水準となった。ニューヨークのCOMEX市場とロンドンのスポット市場との価格差を狙い、金を米国に送ろうとする動きが世界中で強まったことが背景にある。
シティのアナリスト、マックス・レイトン氏は、景気減速を巡る懸念から、米家計部門がポートフォリオの多様化を図ろうと金ETFの購入に走っている可能性もあると分析。そうした動きは「始まったばかり」かもしれないとの見方を示した。
North America sees strongest inflow for February ever
Source: WGC, Bloomberg
逆風に強い
金市場は長期の景気低迷期に活況を呈する傾向にある。ただ、株式相場が大きく下げれば、投資家が損失を補うために利益の出ている金のポジションを解消し、金相場は短期的に打撃を受ける恐れがあるとアナリストは警告している。
TDセキュリティーズの商品戦略グローバル責任者、バート・メレク氏は「大規模なリスクオフの動きがあれば、金は他の全ての資産クラスと共に深刻な打撃を受ける」と語った。
実質金利
ここ2年にわたる金相場の上昇局面で際立った特徴の一つは、金利の急上昇にもかかわらず、値上がりしたことだ。通常ならインフレ調整後の金利上昇は、金にとって逆風となる。金には金利が付かないが、投資家は国債市場で安全かつ魅力的なリターンを得られるためだ。
しかし、債務と財政赤字の拡大で、今では先進国の一部国債にクレジットリスクを織り込み、金を選好する投資家もいるとマッコーリーのガーベイ氏は指摘した。
中銀の購入
24年の金価格上昇は中銀の買いが主因だった。WGCによると、中銀は今年に入り金価格が上昇を続ける中で購入を継続し、今年1月には正味18トンを買い入れた。
昨年の上昇局面で重要な役割を果たした中国人民銀行(中央銀行)は今年2月、4カ月連続で金保有を拡大。同月末時点の総保有量は7361万オンスに達した。
It resumed buying in November after a six-month pause
Source: PBOC, Bloomberg
ゴールドマンは先月、金価格の年末目標を1オンス当たり3100ドルに上方修正した。現在は、中銀の積極的な購入と投資家の需要増加を追い風に、さらに上昇する可能性が強まりつつあるとみている。
原題:Banks That Saw $3,000 Gold Coming Are Staying Bullish for Now(抜粋)