トヨタの水素カローラ、液体水素に加え新たに「京大方式超電導モータ」装備 京都大学 中村特定教授は「回転数の変化が多い」のが難しかったと語る

水素カローラに搭載した超電導モーターの技術解説を行なう京都大学 大学院 工学研究科 特定教授 中村武恒博士

 11月15日~16日の2日間にわたってスーパー耐久最終戦富士が富士スピードウェイで開かれている。14日には参戦車両が多数運び込まれ、テスト走行などを行なっていた。

 その一角で展示されていたのが、トヨタ自動車の水素カローラ。トヨタの水素カローラは水素を燃料として燃やして走るカーボンニュートラル車両になる。開発初期には気体の高圧水素を燃料としていたが、容積を圧縮できることから現在は常圧の液体水素燃料へと変更。マイナス253℃の液体水素を搭載するため、真空二重槽(いわゆる魔法瓶方式)の燃料タンクをリアに装備している。

超電導モーターをポンプに採用した水素カローラ。モーターの小型化により従来とは燃料タンクの形が異なっている

 これらの改良により、水素カローラの航続距離は富士スピードウェイの約12周(54km、高圧気体水素)から、約20周(90km、常圧液体水素)へと向上。さらに真空真空二重槽のタンクを円柱から楕円柱に形状変更することで、約30周(135km)へと伸ばしている。

 トヨタは、この液体水素カローラで今回のスーパー耐久最終戦富士に参戦するが、そのほかに展示されていた液体水素カローラがあった。

 この展示された新たな液体水素カローラでは、液体水素カローラが必須としていた電動ポンプのモーターを超電導モーターへと変更。超電導モーターとなることで、モーターを小型化でき1.3倍以上のタンク容量増大が可能となる。例としては220Lから300Lになるとしており、その分だけ航続距離が伸びることになる。

 これは、燃料にマイナス253℃の液体水素を使うため、当初から着想されていたもので、2024年の富士24時間レースでは超電導モーターの展示が行なわれていた。

 今回、実際に車両に装着され、エンジン始動デモも行なえるようになったわけだ(レースに参加するまでではない)。

 超電導モーターは、京都大学開発による「京大方式超電導モータ」で、開発をリードした京都大学 大学院 工学研究科 特定教授 中村武恒博士によると、効率も超電導による99%以上と超高効率であるとのこと。

 開発に苦労した点は、液体水素カローラで要求されるポンプの回転数変化が頻繁なことで、超電導モーターの回転数も常に変化させなければならないという。これは加速度変化があることから定常回転で回すより難しく、その辺りを当初より補強しているとのことだ。

 ロケットの燃料にも使われるマイナス253℃の液体水素を背負って走っているだけでも驚きのクルマが液体水素カローラなのだが、その極低温環境を利用して超電導モーターまで採り入れたことになる。

 トヨタは宇宙ロケット並の開発を、水素カローラで行なっていることになる。

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