ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した「∞銀河」の注目点とは?
※この記事には進行中の研究に関する情報が含まれています。今後の進展にともない、研究者の見解は変更される可能性があります。
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した相互作用銀河。
ろくぶんぎ座の方向にあり、私たちは約84億光年前の姿を観測しています。
2つの銀河の中心をそれぞれ囲むリング構造が「∞(無限大)」の記号のように重なって見えるので、研究者からは「Infinity Galaxy(インフィニティ銀河、無限銀河)」と呼ばれています。
【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した「Infinity Galaxy」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Pieter van Dokkum (Yale))】相互作用銀河とは、接近したり衝突したりすることで重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河のこと。
そのなかには潮汐力によって形が大きくゆがんだり、渦巻腕(渦状腕)が長い尾のように伸びていたりするものもあり、時に生物的な印象を受ける姿をしていることもあります。
ガス雲の“直接崩壊”で誕生したブラックホールを観測?
イェール大学のPieter van Dokkumさんやコペンハーゲン大学のGabriel Brammerさんたちの研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したインフィニティ銀河のデータを、X線や電波などのデータも加えて詳しく分析しました。
その結果、2つの銀河の中心にあるとみられる超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)とは別に、太陽の100万倍ほどの質量がある3つめの超大質量ブラックホールが、2つの銀河中心のほぼ中間付近に存在することが示されました。
この第3のブラックホールは、インフィニティ銀河を構成する2つの銀河の相互作用によって圧縮された巨大なガス雲が自重で潰れる、直接崩壊によって形成されたかもしれないといいます。
近年の観測によって、超大質量ブラックホールは宇宙の初期の段階から存在していたことがわかってきました。ガス雲の直接崩壊によるブラックホールの誕生というシナリオは、こうした超大質量ブラックホールの形成過程を説明できる可能性があるとして注目されています。
ただし、今回の発見は直接崩壊で誕生したブラックホールの観測事例とはまだ断言できず、研究チームは引き続きデータの精査を進めていくということです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部