越谷アルファーズ、山形ワイヴァンズでコーチのハラスメント——Bリーグにおける暴言・暴力根絶の道険しく
Bリーグは7月28日に会見を開き、島田慎二チェアマンから2024-25シーズン中に越谷アルファーズと山形ワイヴァンズで起こった規約違反事案に関する説明を行った。 越谷での事案は、安齋竜三HCが選手に対して怒鳴ったり威圧的な態度をとったりなどのハラスメント行為を反復継続して行った。具体的には下記のような行為があったという。
越谷——安斎HCが非常に程度の重いハラスメント行為
1) 試合中の選手が通りすぎたタイミングなど、当該選手が自身に向けられたと認識せざるを得ない状況で「死ね」と発言
2) 選手に向け、その選手が自身に向けられたと認識せざるを得ない状況で「クソが」などと複数回発言3) 今年1月4日に行われたシーホース三河とのアウェイ戦で、ハーフタイムにロッカールームで特定の選手複数名に対し、ロッカーを叩きながら「お前、給料いくらもらってんだ、言ってみろ。恥ずかしくないのか」と発言4) 今年2月1日の広島ドラゴンフライズとのホームゲーム終了後、ロッカールームで特定の選手に詰め寄りながら、課せられた責任を果たしていないことを指摘して「言いたいことがあるなら言ってみろよ」、「お前も人間だろ。言ってみろよ」と発言安斎HCのこうした行為に対し、Bリーグは安斎HC個人の責任に言及するだけでなく越谷がクラブとしての監督責任およびを果たしていなかったとみなし、Bリーグ規約第3条第9項と第127条第3条第9項を適用して以下の裁定を下した。
安齋HC:けん責およびバスケットボール関連活動の全停止・禁止3か月間※本制裁決定の翌日(2025年7月23日)から2025年10月22日(水)まで
越谷:けん責および制裁金200万円安斎HCのバスケットボール関連活動の全停止・禁止が解ける時点で、B1は第4節までが終了している。ペナルティーの重さとして適切かは議論もあるだろうが、シーズン開幕前のチーム作りにかかわることができない安斎HCは、その時点で現場復帰がかなうとしても、ほかのスタッフが作り上げたチームを引き継ぐ形となり、シーズン中のチーム運営は簡単ではないだろう。
また越谷は、クラブとして本件に関し「コンプライアンス事案に関する制裁について」とするリリースを発信し、その中で安斎HCとの2025-26シーズンの契約について、すでに継続を発表済みではあるものの「3か月後に判断」としており、安斎HCが指揮官の職務を継続するかは不明確。同リリースには、クラブとして安斎HCの月額報酬額100%返上(3か月間)、上原和人代表取締役社長も月額報酬額30%返上(3か月間)との処分も記されている。
Bリーグは、ヘッドコーチが選手に対して威圧的で人格否定的、人格侮辱的言動を長期間繰り返し、それに起因して複数の選手が心身の不調をきたし、中には競技環境の変更を余儀なくされた例もあるとして「非常に程度の重いハラスメント事案といわざるを得ない」と制裁理由を挙げた。「長年にわたり、各クラブに対し、ハラスメントの根絶を指導してきたにも関わらず、越谷アルファーズは本件の発生を防ぐことができなかった」とクラブの監督責任不履行に対し遺憾の意を示した。
山形——契約解除済みの元アシスタントコーチがスタッフに暴力行為
山形のハラスメント事案では、アシスタントコーチの一人(すでに契約解除済み)がスタッフに対し暴言・暴力を行使した。詳細は以下のとおりだ。1) 今年年1月初旬頃から同年2月末頃まで、スタッフの一人(以下スタッフA)が業務上のミスをした際に、「ポンコツ」、「使えない」、「どんな育て方をしたらお前みたいな人間になるんだ」、「親の顔が見てみたい」などと日常的に繰り返し発言
2) 今年年2月初旬頃、スタッフAの二の腕を複数回つねった行為3) 今年年2月19日、他のチームスタッフの自宅においてスタッフAの頬を拳で数回、にぶい音がなる程度の強さで殴打4) 今年2月24日、自動車を運転するスタッフAに対して助手席から殴る動作これらの行為に対しBリーグ規約第127条、第3条第9項を適用し、山形にけん責および制裁金100万円の処分が科された。
山形はクラブとして、吉村和文代表取締役社長、渡邉聡代表取締役常務、佐藤洋一執行役員兼GM、徳武大地GM代行、そして石川裕一HCに月額報酬から10%減俸2か月の処分を下している。
ただし、ハラスメント事案の当事者である元アシスタントコーチは、すでにBリーグにも山形にも所属していないことから何も処分を科されていない。また、その当事者を特定する情報も公にはなっていない。
Bリーグでは過去に複数回、クラブ組織内のハラスメント行為が発生しており、2021年9月に「Bリーグパワーハラスメント防止ガイドライン」を設定するなど、暴言、暴力、ハラスメントの撲滅に努めてきた。今回の2つの事案は、リーグ創設10周年の節目を迎えようというBリーグはもちろん、バスケットボール界全体の努力を水泡に帰し、ファンの期待を裏切る残念な出来事と言っていいだろう。
☆越谷アルファーズの発表内容☆山形ワイヴァンズの発表内容