決勝アシスト&スーパークリア! “8番”でも新境地の町田DF望月ヘンリー海輝「自分もちょっとやってみようかなと」
[8.6 天皇杯4回戦 町田 1-0 京都 Gスタ]
新境地を感じさせる大活躍だった。FC町田ゼルビアのDF望月ヘンリー海輝は天皇杯4回戦・京都戦に右ウイングバックでフル出場。後半14分には攻撃の流れからペナルティエリア際にポジションを取り、DF昌子源からのロングフィードを受けると、振り向きざまのスルーパスでFW藤尾翔太の決勝点をアシスト。さらに終了間際にはゴールライン上で相手の決定機をクリアして大ピンチを阻み、攻守にわたる働きでクラブ史上初のベスト8入りに導いた。
0-0で迎えた後半14分、一度は左サイドに流れた望月だったが、攻め残りで違いを見せた。「展開していくなかで右に戻ったけど(ナ・)サンホさんが(右に)張っていたので、誰かがいるべき場所にいようと思ってあそこにいた」。昌子からのロングフィードは低弾道の強いボールとなったが、絶妙なトラップに成功。すぐにラストパスにつなげた。「源くんが対角(のナ・サンホ)を狙っていて、とっさに判断を変えて僕に出してくれたと言っていたので、そのボールに対して自分が反応して、ちょうど間に立てたのでそこで前を向いて、翔太が動き出してくれたので出した」。パスはDF鈴木義宜に当たって軌道が変わり、「ラッキーな部分はあった」のも事実だが、流れたボールを藤尾が冷静にフィニッシュ。素早い攻撃の流れが貴重な先制ゴールに結びついた。
この日は得点の場面だけでなく、シャドー起用のMF仙頭啓矢とポジションを入れ替えつつ、中央寄りでビルドアップに関わる場面が目立った望月。これまでは左サイドにボールがある時こそクロスへの準備で同様のポジションを取ることはあったものの、ビルドアップでは大外で起点を作る場面が多く、新たな役割だ。この役割はJ1前節・東京V戦など崩し切れない時間も続いた試合の課題を踏まえ、直近の中断期間に取り組んできたものだったという。 「ヴェルディ戦では張っているシーンが多かったけど、それでなかなかうまくいかないこともあって、それ以降の練習で他のウイングバックの選手が中に入ってプレーしているのを見て、自分もちょっとやってみようかなと思って、オプションを増やすためにやってみたという感じですね」(望月) 近年ではサイドバックやウイングバックの選手が“8番”のポジションで攻撃に関わるのが一つのトレンド。「簡単なプレーエリアではないけど、相手が食いついてくれたら翔太が走り出したり、僕も前向きに動けば速いので裏を取れる。相手が食いついたらラッキーくらいのイメージでやっていて、相手も警戒していたのでより足元で受けやすいのかなと思う」と明確なイメージを持って取り組んでいるようだ。 さらにこの日は攻撃だけでなく、守備でもチームを救う大仕事を成し遂げた。後半アディショナルタイム終了間際、京都の右CKにファーサイドで反応したMF福岡慎平のヘディングシュートがGK谷晃生の頭上を越え、枠内に飛んできたが、望月がこれをゴールライン上でクリア。決まっていれば延長戦突入という状況でのビッグプレーだった。 「自分がファーストストーンだったのでGKがニアにスライドしたらカバーをするのが鉄則だと思うので、自分の仕事をやって、ボールが来て、弾いたという感じですね」。そう照れ笑いを浮かべつつも、「ゼロで終われるのは当たり前のことをやり続けた結果だと思う。当たり前のことをやって、最後は目立ったけど、その結果がいい仕事につながったと思う」と素直な喜びを語った。望月は今年7月、EAFF E-1選手権に臨む日本代表に選ばれ、A代表デビュー戦を含む全3試合出場で初ゴールも記録。勝負の日韓戦でもフル出場を果たし、「いろんな場所を目指しながら積み上げてきた1年半の成長が少しずつ出てきたと思う」という充実した期間で自信を重ねてきた。
それでも地に足をつけて取り組んでいく姿勢は変わらない。「まだまだ前半のクロスが手前にショートしてしまったりとか、運びながらのクロスがオーバーになってしまったりとかもあった。できることは増えているけど、さらにもっとやれることを増やせると思うので、一つひとつ向き合いながら気楽に頑張っていきたい」。成長著しい23歳は謙虚に先を見据え、さらなる成長を目指す。 (取材・文 竹内達也)●第105回天皇杯特集▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中