詐欺師が使う6つの心理作戦。つい引っかかってしまう理由とは?

米国では、2023年だけでも260万件の詐欺事件が発生し、100億ドルの被害があったと報告されています。

どうやら、あなたが受け取るメッセージの2件に1件は、「ロマンス詐欺」か、「豚の屠殺詐欺(長期間かけて資産を丸ごと搾取する詐欺)」、あるいは「なりすまし詐欺」のようです。

しかも、あなたが「自分は絶対に被害に遭わない」と思っていても、引っかかってしまう場合があるのです。

なぜ人は詐欺師に騙されるのか?

なぜ引っかかるのかと言うと、詐欺師は、さまざまな心理作戦を使ってあなたを混乱させるからです。そして、あとになって考えると、自分でも信じられないような決断をさせてしまうのです。頭に血がのぼって、簡単に操られてしまうのです。

以下では、詐欺師が相手の冷静さを失わせるために用いる心理作戦を紹介していきましょう。

いつかあなたが詐欺に遭うとすれば、おそらく、これらのどれかを経験するはずです。

1. 権威を利用する

詐欺師は、権威ある人物になりすます手口をよく使います。役人、警察官、専門家などを騙るのです。

私たちはみな、権威ある人に従うよう教え込まれています。詐欺師はそれを利用します。

つまるところ、警察から電話がかかってきて、「あなたは裁判日に出頭しなかったから、罰金を払わなければいけません。払わないとすぐさま逮捕されます」と言われれば、私たちはトラブルを避けようとして、本能的に言われた通りにしてしまうのです。

これには、「ハロー効果」も使われています。ハロー効果とは、初めに抱く決定的な印象が、そのあとのやり取りの受け止め方に影響を与える傾向のことです。

私たちは、相手が権威ある人物だと思うと、たとえ妙なことを命じられても、それに従ってしまう可能性が高いのです。

注意すること

本当に権威ある人物かを確認しようとしても、相手が応じない場合は、怪しいです。

たとえば、「電話を切ったら、あなたはすぐに逮捕されます」と脅してきたり、「身元証明のための時間はありません」と主張したりしたら、ものすごく怪しいと思ってください。

本当に権威ある人物ならば、身元の確認という正当な要求をされて困ることはないはずです。

2. プレッシャーをかける

詐欺師は、あなたが感情的、あるいは本能的になることを望んでいます。ですから、望み通りのことをさせるために、希少性や不安感を利用して、プレッシャーをかけようとします。

詐欺は多くの場合、時間が限定されていたり、供給量が少なかったりなど、限られた機会として提示されます。

そして、その機会を逃したくないあなたは、たちまち感情的になってしまいます。

人は、身に覚えのない高額の請求書を見ると、感情的に反応し、すぐにクリックして間違いを正したくなります。ちょっと手を止めて、連絡先の情報が本物かどうか確認しようとは思わないのです。

注意すること

問題を解決するため、あるいは、何らかの利益を確保するために、すぐ行動するよう迫られたときは、常に自分を制しましょう。

正当な取引ならば、そのように即決を求められることはありません。

3. フット・イン・ザ・ドア

人は、莫大な金額や、多大な努力を伴うことを前にすると、たいてい身構えてしまいます。詐欺師はそのことを知っています。

そこで、「フット・イン・ザ・ドア(Foot-in-the Door)」というテクニックを使って、あなたの守りを緩め、詐欺にかけるのです。

その仕組みはシンプルです。詐欺師はまず、簡単でささいな要求をしてきます。「2分だけお時間をいただけますか」などとちょっとした要求をしたり、簡単な質問に答えさせたりするのです。

道で署名集めをしている人から、「動物はお好きですか?」と質問され呼び止められた経験があるなら、それはフット・イン・ザ・ドアのテクニックです。

その最初の質問のあと、次々に追加で要求をされますが、あなたの思考態度はもう、黙って聞き入れる姿勢になっています。

はじめの要求に同意したために、それ以降の要求を拒むことが正当化しにくくなるのです。

たとえば、「ある社会運動は支援する価値がある」という意見に同意したとします。すると、その運動に対する寄付を断れば、自分が嘘つきのように思えてしまうのです。

このテクニックには、「サンクコスト効果」も使われています。質問に答えて、どんどん会話を続けていくことに自分の時間と感情を費やしてしまうと、そのまま立ち去ったり、成果なくやり取りを終わらせたりしたくなくなるのです。

フット・イン・ザ・ドアは、逆の使い方もできます。まずは、断わるのが簡単な大きな頼みごとをし、そのあとで、それよりもずっと小さい頼みごとをすると、小さいほうが、はじめの頼みごとと比べて急に妥当なものに見えるのです。

注意すること

見ず知らずの人が、前置きや挨拶もなくいきなり質問してきたら、ペースを落として、対応についてよく考えましょう。

4. 相互利益

文明が機能するのは、相互利益があるからです。誰かが何かしてくれると、私たちは、「自分も好意を示さなければ」という「社会的恩義」を感じます

そして、注意すべきは、「そもそも望んでいなかったこと」をしてもらったとしても、恩義を感じてしまうという点です。

詐欺師は、あなたを褒めたり、あなたに関心を示したりして、社会的恩義を感じさせます。

たとえば、「今日の調子はいかがですか」と尋ねられると、あなたは、自分も同様の質問を返さなければというプレッシャーを感じるかもしれません(訳注:「How are you?」と挨拶されると、つい答えて、「and you?」と言いたくなる)。

これが、会話を続けるきっかけになります。

こうした作戦が、あなたを心理的に疲れさせるために使われる場合もあります。詐欺師と長い時間話をしたあとは、疲れ切ってしまい、操られやすくなるのです。

注意すること

初めて会った人に、特別な理由もなく褒められたり、何かしてもらったりしたら、すぐに見返りを要求されるという危険信号です。詐欺師は、あなたに社会的恩義を感じさせたいのです。

5. ラブ・ボミング

ロマンス詐欺は、長期にわたる詐欺行為です。詐欺師は、あなたに恋愛感情を持つ魅力的な人物を装い、遠くにいて会うことができないから悲しい、というフリをします。

2人が恋愛関係にあると思い込ませ、その後、車の修理が必要だとか、旅先でトラブルに巻き込まれたなど、さまざまな理由をつけて、一時的な問題を解決するためのお金を要求してきます。

傍から見ると、知り合って間もない人にお金を要求されて、すぐに怪しいと思わないなんて信じられないかもしれません。しかし、ロマンス詐欺を仕掛ける詐欺師は、「ラブ・ボミング(Love Bombing、愛の爆撃)」という手段を使って、相手の感情を支配し操るのです。

ラブ・ボミングでは、最初はうっとりするような愛の言葉を絶え間なくささやきますが、そのあと、何の説明もなく、その愛情表現をやめて、相手がまた前のように愛されたいと思うように仕向けます。

あなたは、自分でも気づかないうちに、以前のような良い関係を取り戻そうとして、求められることを何でもしようと必死になってしまうのです。

注意すること

初めて会った人が、あれこれと優しくしてくれたり、誉め言葉を浴びせてきたりしたら、詐欺を疑いましょう。

そのあと、相手が不意に「冷たく」なり、あなたに対して怒っているようなら、ほぼ間違いなく詐欺の手口です(でなければ、情緒が不安定な人です。どちらにせよ、その人からはもう離れましょう)。

6. アーリー・ウィン

豚の屠殺詐欺」の多くで使われるテクニックが、「アーリー・ウィン(Early Win:最初は儲けられる)」です。これは、ほかの詐欺でも使われる簡単な手口です。

つまり、相手の信用を得るために、実際にいくらか儲けさせるのです。

投資先は、たいてい暗号通貨です。あなたは、失っても痛手にならない程度の、少額の安全なお金を投資します。

そして、その少額のお金をだまし取られることなく、利益を得ます。お金を引き出すことさえできるのです。

アーリー・ウィンは、相手の信頼を得られるよう設計されています。

一度、実際に少額の利益を得ると、次は、リスクを負って投資額を増やしたくなります。

そして、あとになって投資したお金を引き出せなくても、アーリー・ウィンでこの投資が本物だという「証拠」を見ているために、どんどんお金をつぎ込んでしまうのです。

注意すること

少額のお金を投資してみるよう強く勧められたり、利益を保証されたりしたら、文字通り、豚のように太らされているのかもしれません。

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