【分析】なぜ暗号資産市場は暴落しているのか(CNN.co.jp)
ニューヨーク(CNN) 暗号資産(仮想通貨)の基準に照らしても、この数週間は波乱続きだ。 【映像】仮想通貨企業経営者の娘、辛くも拉致逃れる 仏 デジタル資産の投資家は極端な値動きに慣れているものの、ここ6週間で1兆ドル(約155兆円8000億円)が吹き飛び、暗号資産の筋金入りの信奉者でさえ信念が試される展開になりつつある。新規参入者の間では暗号資産離れが相次ぐ。 代表的な暗号資産のビットコインは、10月上旬に過去最高値となる12万6000ドルを付けて以降、急落している。ビットコインは今月21日に8万1000ドルを割り込んだ後、週末にやや回復。24日には株式市場全体が持ち直し、ビットコインも24時間で2%近く上昇して8万8000ドルを上回った。(暗号資産市場は週7日、1日24時間開いている) 今月は記録に残る限り、暗号資産にとって過去最悪レベルの月になりそうだ。しかも、市場が底を打ったのかどうかは判然としない。 ドイツ銀行のアナリストは24日、「今回の調整後にビットコインが安定するかは依然見通せない」と指摘。「個人投資家による投機が主因となっていた過去の暴落とは異なり、今年の下落は機関投資家の大規模参入、政策の動向、世界的なマクロトレンドの中で起きつつある」と記した。 近年、暗号資産の値動きは株式市場とおおむね連動してきたが、現在の不安はもっと根深い。その大きな要因として、暗号資産投資家の資金とは非常に異なった動きをする主流資金の流入がある。 S&P500の下落が直近のピークから3%にとどまる一方、ビットコインは直近の高値から30%下げて弱気相場入りしている。このままいくと2022年に暗号資産の「冬」が到来して、サム・バンクマン・フリード被告が設立した暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXトレーディングの崩壊を招いて以来、最悪の月になりそうだ。 株式と暗号資産に不安が集まっている主な理由は二つ。投資家が連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げを懸念していること、そしてAI(人工知能)バブルが眼前ではじけるのではないかとの不安を抱いていることだ。 デジタル資産はハイテク株と同様、FRBの基準金利の変化に極めて敏感なことから、これら全てが暗号資産トレーダーの心理に重くのしかかっている。金利の変化は借り入れコストに影響を及ぼし、投資家のリスク許容度を急速にしぼませる可能性がある。 だがこれに加え、暗号資産投資家は10月10日に発生した「フラッシュクラッシュ」の後遺症にも悩まされている。トランプ米大統領がこの日、中国との貿易戦争を再燃させたことでパニック売りが広がり、ハイレバレッジの暗号資産市場でロスカットを誘発。1日で190億ドル分の暗号資産が吹き飛んだ。胃が痛むような暴落をきっかけに暗号資産市場から完全撤退する投資家も多く、ビットコインなどのトークンは一段と大きな変動にさらされている状況だ。 フラッシュクラッシュの結果、多くの投資家は保有資産を売却してマージンコール(追証)に応じることを余儀なくされた。これは雪だるま式に影響を誘発する傾向にある。ビットコインが下がれば下がるほど、投資家は証券会社から追証を求められ、ポジションをカバーするためにビットコイン(その他の資産)を売らねばならなくなる。 今回の暗号資産の暴落がこれまでと違うのは、米規制当局が昨年承認した現物ビットコインのファンドを通じて数十億ドルの主流資金が流入している点だ。 主流の投資家は相場上昇の波に乗ろうと暗号資産に参入したが、初期の参入者ほどその理念に傾倒しているわけではない。初期参入者はインターネット上の熱心なコミュニティーに支えられており、押し目買いを入れて信念を貫くよう互いに励まし合ってきた。 インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「要するに、今やビットコインは一般投資家のものになった」と筆者にコメント。「結果として、一般投資家は今後、ビットコインをポートフォリオ内のもう一つの投機資産とみなし、変動の激しい主流投資商品と同じように扱うだろう」と指摘している。 ◇ 本稿はCNNのアリソン・モロー記者による分析記事です。