展望2025:日銀は1─2回の追加利上げ、円金利は緩やかな上昇基調に
[東京 3日 ロイター] - 2025年の円債市場は、日銀による金融政策正常化の動きが継続するとの想定のもと、円金利は緩やかな上昇基調をたどり、イールドカーブはベアフラット化するとの見方が多い。日銀の金融政策を巡っては、1─3月期に0.5%への利上げが行われるとの見通しが市場のコンセンサスとなる一方、0.75%への追加利上げが年内に実施される可能性については見方が分かれている。
市場関係者の見方は以下の通り。
◎日銀追加利上げは1─3月と9─12月の2回、長期金利は緩やかに上昇へ
<ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ 運用部シニア債券ストラテジスト 駱正彦氏>
日銀の追加利上げは25年に2回行われるとの想定のもと、長期金利は年末には1.0─1.25%程度への緩やかな上昇を見込む。このうち、次の0.5%への利上げは、1月か3月の会合での実施を予想する。
リスクはトランプ次期米大統領の政策と、国内では7月の参議院選挙だ。政治的リスクが高まる局面では、相場はボラタイルとなる可能性がある。われわれは政治的なビューは持たないが、石破茂首相の支持率が低いまま選挙に臨む可能性も含めて、リスクとして注視している。このため、日銀の0.75%への利上げは、参院選を無事に終えてから、9─12月期のどこかになるだろう。
その先については、米経済が堅調を維持している場合に日銀は26年1─3月期にももう1回、1.0%への利上げをする可能性があるとの見方で、ターミナルレートは0.75%または1.0%と考えている。
日本の長期金利は、基本的には米金利に追随しながら緩やかに上昇すると見込む。年末の着地点が1.0%になるか1.25%になるかは、0.75%で利上げが打ち止めとなるか、1.0%への利上げが展望できるか次第だろう。
投資妙味については、日本国債にもようやく利回りが戻り、長く我慢を強いられてきた国内投資家にとっては朗報となる。特に注目したいのは、アベノミクス以降の日銀の国債買いに関連して、銀行勢の待機資金が300兆円ほどあることだ。規制の厳格化はあるにせよ、少なくとも150兆円程度の国債買い余力がある。これは円金利上昇をある程度抑える要因となるとみている。
一方、外国人投資家にとってはキャピタルゲインの観点では米国債の方が魅力的だが、短期ゾーンの円債には引き続き需要が見込めるだろう。かつて「YCCアタック」(イールドカーブ・コントロール政策の修正を見込んで許容上限を試す円債売り)を仕掛けていたような海外投機筋は、妙味を求めて、その矛先を既に円債からドル円相場へと変えている。
ちなみに米国については、25年は3月以降に3回の追加利下げを行い、ターミナルレートは3.5%程度との想定のもと、年末の10年金利は3.75─4.25%程度と予想する。緩やかな利下げサイクルの一方で国債増発が売り材料となるため、年末に向けて2年/10年のカーブはややスティープニングするだろう。
新発10年国債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:0.75%─1.25%
◎イールドカーブはベアフラット化へ、日銀の追加利上げは2回を想定
<モルガン・スタンレーMUFG証券 債券戦略部エグゼクティブディレクター 杉崎弘一氏>
日銀の金融政策について、政策金利は25年9月会合までに0.75%まで引き上げられると予想。ベースシナリオの元では、長期金利の予想レンジは0.80―1.20%程度で、25年第4・四半期は1.10%程度と現行の水準からそこまで変わらないとみている。
日銀の追加利上げ期待を背景に短中期債までは金利上昇圧力がかかりやすい。一方、米金利の低下が見込まれる中、外部環境の影響を受けやすい長期・超長期債は、金利上昇を抑制されやすい。25年度から超長期債の発行が減額されれば、同ゾーンの需給が改善に向かうとみられることや、国債とスワップの金利差の縮小を狙った裁定取引であるアセット・スワップの動きが超長期ゾーンで活発化すれば、超長期債の金利低下圧力につながる。このため、イールドカーブはベアフラット化しやすい。
米金融政策について、25年6月までに2回の利下げがあると予想。足元の政策金利は中立金利の水準まで距離があるものの、米連邦準備理事会(FRB)からより緩やかな利下げパスが示唆されている。短期債を中心に金利低下圧力がかかり、長期金利は25年第4四半期に3%台半ばまで低下すると見込む。トランプ米新政権による関税の引き上げや移民政策による影響などは25年後半以降だとみている。
リスクシナリオは、米国のインフレが再加速した場合だ。FRBが再利上げを実施する方向で動けば、ドル/円は160円を超えて円安が進行する可能性がある。市場では日銀がよりタカ派的な利上げを実施するとの思惑から、円金利に上昇圧力がかかる。その場合、新発10年債利回りは1.65%まで上昇する可能性がある。
一方、米経済が25年第1四半期からハードランディングの懸念が強まれば、FRBの利下げが一段と進められる。日銀の利下げが織り込まれ、新発10年債利回りは0.25%まで低下してもおかしくない。
新発10年国債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:0.80─1.20%
◎日銀は慎重に利上げ、1-3月期を予想 長期金利は緩やかな上昇に
<太陽生命保険 常務執行役員 清友美貴氏>
日銀の金融政策については、1─3月期に追加利上げが実施され、政策金利は0.5%に引き上げられると予想。日銀が年後半にもう1回の追加利上げを実施する可能性はあるものの、米国が利下げしていく中で、日銀が逆方向の動きとなる利上げを進めた場合のマーケットへのインパクトに加えて、0.5%を上回る政策金利は1990年代以来となり、市場や消費者に与える影響を踏まえると、日銀は一段の利上げに慎重になるだろう。
円金利は日銀の追加利上げ期待を背景にじりじりと上昇していく。長期金利の予想レンジは0.70―1.30%で、25年12月時点では1.30%を見込む。先々の景気減速が意識される中、長期・超長期債は金利上昇圧力が抑制されるとみており、イールドカーブはややベアフラット化していくだろう。
米金融政策については、25年に3─4回の利下げを実施すると予想。米連邦準備理事会(FRB)からはより緩やかな利下げパスが示されたものの、物価の落ち着きとともに過去に想定されていた利下げペースに戻っていくとみており、政策金利をいったん3%台まで下げると見込んでいる。短期債を中心に金利が低下する一方、緩やかながら米経済は減速していくため、反転の兆しが見えない限り、長期金利は上昇圧力がかかりにくい。このため、イールドカーブはブルスティープ化しやすい。
リスクシナリオは、トランプ米新政権の政策によりインフレが再燃した場合だ。FRBによる利下げ回数が減少もしくはスキップとなれば、米金利は上昇し、それに伴い円安が一段と進行する。輸入インフレの上振れリスクから、日銀は政策金利を0.75%に引き上げ、その後は1%も視野に入ってくるのではないか。
米国との対立などによる中国経済の急減速を警戒している。世界経済に大きな影響を及ぼす事態となれば、輸出の縮小で企業業績が悪化し日本経済は減速するとみられ、日銀は利上げを見送るだろう。
新発10年債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:0.70─1.30%
※この記事は12月25日にLSEGグループのニュース・データ・プラットフォームWorkspaceに掲載されました。当時の情報に基づいています。
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