メルカリが「Switch 2は出品禁止にすべきだった」と反省した理由 「安心・安全を損なう場合は出品禁止」へ方針変更
2025年、メルカリを巡っては、さまざまな問題が起きた。その代表的な事象が、任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」の転売だった。Switch 2の新品が入手困難な中、高額な値段での出品が後を絶えないことに加え、箱のみ、絵や写真の出品、Switch 2に見せかけた商品など、ユーザーの誤認を狙った悪質な出品も散見された。また、出品者のコメント欄に誹謗(ひぼう)中傷の投稿が増えたことも問題を助長した。 メルカリは、誤認を狙った出品に対しては出品物を削除し、利用者への誹謗中傷に対してはアカウント利用制限を実施した。こうした措置は、メルカリの利用規約やガイドラインにのっとったもの。誤認を狙った詐欺出品は減ったが、現在も定価を超える金額でSwitch 2がメルカリに出品されている。 他社のサービスを見ると、「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」ではガイドラインを改正してSwitch 2の出品を禁止した。では、なぜメルカリはSwitch 2の出品そのものを禁止しなかったのか。こうしたメルカリの判断は、「マーケットプレースの基本原則」に基づいている。これは利用規約やガイドラインの背景にある基本的な考えだ。この基本原則が、出品を制限したり不正行為に対処したりする際の判断材料になる。 メルカリでは、自由な取引を通じた需給のマッチングが最大限発揮されるマーケットプレースを目指している。その中で、Switch 2のような、需給のバランスが著しく崩れる商品が登場した場合、基本原則に照らし合わせながら対応を検討してきた。 まず考えたのが「外部性」だ。この場合の外部性とは、「ある取引が、売り手と買い手だけでなく、第三者や社会に影響を及ぼすこと」(山本氏)を示す。その際、プラスの影響を及ぼす「正の外部性」と、マイナスの影響を及ぼす「負の外部性」に分けられる。 正の外部性の一例として、パンデミックにおけるマスクや消毒液が挙げられる。コロナ禍において、メルカリはマスクや消毒液の出品を禁止していたが、2022年5月~8月に制限を解除。マスクの場合、着用することで疾患にかかるリスクを軽減し、周囲の感染リスクも減らせるというプラスの影響があると判断したためだ。 一方、負の外部性はどうか。メルカリでは、他人に具体的な危害を生じさせる「危害原理」と、他人に不快感を及ぼす「不快原理」に分けて考える。その中で、不快原理は「主観的になるので、それを基準にすると、恣意(しい)的な介入を招きかねない」との理由で、より客観的で公平な危害原理を判断基準にすることを決めた。 こうした議論の末、マーケットプレースの基本原則として、「安全であること」「信頼できること」「人道的であること」の3つを定めた。この原則に基づいて出品を規制した例として、コロナ禍のマスクや消毒液、2025年の備蓄米がある。これらは、本当に必要な人へ早期に届かないことは安全性を損なうと判断し、出品を禁止した(マスクや消毒液は2022年に出品禁止を解除)。また、空薬きょうについては、警察庁から危険性についての情報提供があり、違法・犯罪行為につながる可能性が高いと判断して出品禁止にした。