相場展望11月24日号 米国株: 物価上昇が止まらない米国⇒トランプ共和党不利、民主党優勢 トランプ関税、来年の最高裁で判定⇒違憲判決ならトランプ大打撃 日本株: 日経平均寄与度上位によるアップ・ダウン相場が続く:中島義之

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/20、NYダウ▲386ドル安、45,752ドル  2)11/21、NYダウ+493ドル高、46,245ドル

【前回は】相場展望11月20日号 米国株: 仮想通貨・ビットコインの暴落と連動した株式相場の下落に注意 日本株: エヌビディア売上は予想上回る増、海外短期筋は株買い復活か

●2.米国株:物価上昇が止まらない米国 ⇒ トランプ共和党の不利、民主党の優勢へ

      トランプ関税について、来年の最高裁で判定 ⇒ 違憲判決ならトランプ氏大打撃

 1)物価上昇が止まらない米国 ⇒ トランプ共和党の不利、民主党の優勢へ   ・トランプ氏は、昨年11月の大統領選挙でバイデン民主党政権の失敗で物価高騰したとキャンペーンした。そして、物価高騰で生活に苦しむ民主党支持者たちから、トランプ共和党支持に転換させ、大統領選挙で勝利を勝ち取った。

  ・しかし、バイデン政権下で、インフレ抑制策が奏功し低下を始めた。

  ・トランプ氏は「私が大統領になれば、翌日から物価は下がり始める」と公言した。

  ・だが、トランプ2次政権が関税措置を導入した結果、物価上昇率は低下から上昇の兆しを示した。ブラジルの司法判決が、トランプ氏の意に反するとして関税を50%に引き上げた。結果、輸入牛肉が高騰したこともあり、牛肉価格は前年比+10%を超える値上がりをした。コーヒーで+19%、ひき肉は+13%の値上がりとなった。もともと、物価高騰の影響から、外食を止めて家庭で食事するようになり、牛肉の消費量が増えていた。そこに、ブラジルへの50%関税発動による輸入牛肉価格の上昇が米国インフレを高めた。

  ・米国インフレ上昇で国民の不満が高まっていた。そこに、NY市長選挙、バージニア州・ニュージャージ州などの2つの州知事選挙でトランプ共和党は3選3敗した。

  ・トランプ氏は、急遽、ブラジルに課した関税を撤廃した。

  ・トランプ氏は、米国連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長に「政策金利引下げ」要求を強圧的に求めている。理由は、減少する雇用者対策のため、金利低下で米国経済の上昇を狙ったもの。トランプ氏の(1)関税措置と(2)政策金利は、物価上昇(インフレ)をもたらす。結果、トランプ政策は選挙におけるトランプ共和党を不利に導く。

  ・トランプ氏が来年の中間選挙と次期大統領選に勝利するためには、物価上昇の根絶が必要である。そのためには、トランプ氏は自身の政策の否定を迫られている。つまり、(1)関税措置の撤廃(2)政策金利の低下が、物価上昇対策になる。果たして、トランプ氏が目指した政策を自ら否定できるだろうか。

 2)トランプ関税について、来年の最高裁で判定 ⇒ 違憲判決ならトランプ氏大打撃   ・米国憲法では「関税」の決定権は「議会」にある、となっている。つまり、大統領権限では「関税」を決められない。

  ・トランプ関税の根拠は、     ・国際緊急経済権限法(IEEPA)        「相互関税」と「フェンタニル関税」が対象     ・通商拡大法232条

       自動車関税や鉄鋼・アルミ関税などの「分野別関税」が対象

  ・トランプ大統領は、関税措置は大統領権限の範囲内、と主張している。

  ・そもそも米国の英国からの独立は「ボストン茶会事件」に端を発している。その歴史的事件を基に、関税は議会が決めると米国憲法で制定された経緯がある。

  ・今、裁判対象になっているのは、「IEEPA」に関わる関税についてである。米国連邦地裁、高裁は「関税措置は議会にある」として、トランプ大統領決定を違憲とした。トランプ大統領は最高裁に上告した。その最高裁判決が来年に下される。最高裁判事はトランプ第1次政権時代に任命された判事を含めると保守強硬派が9人中6人と多数を占める。今のところ、最高裁判事の多くが「関税措置は議会にある」とトランプ氏に対し懐疑的にみているようだ。

  ・トランプ関税措置に違憲判決が出た場合、世界を巻き込んだ混乱が起こり、トランプ2次政権のレイムダック化が進展する可能性がある。もちろん、2026年中間選挙でのトランプ共和党はアゲインストとなる。来年の中間選挙で下院議会は、民主党が多数派を占めるだろう。トランプ共和党は上院で優位だが、下院では民主党多数となり、トランプ政権は困難な議会運営を強いられることになりそうだ。

●3.クリーブランド連銀総裁、利下げに慎重姿勢、インフレ長期化のリスク (ブルームバーグ)

●4.米国9月雇用統計、就業者数+11.9万人増、予想+5.3万人増を上回った(読売新聞)

 1)政府機関の一部閉鎖の伴い約1カ月半遅れた。

●5.9月失業率は4.4%、予想と前月は4.3%だった(ブルームバーグ)

●6.バフェット氏傘下のバ―クシャ、バンク・オブ・アメリカの保有45%を売却(モトリーフル)

 1)売却株は4億6,500万株を売却

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/20、上海総合▲15安、3,931  2)11/21、上海総合▲96安、3,824

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/20、日経平均+1,286円高、49,823円  2)11/21、日経平均▲1,198円安、48,625円

●2.日本株:日経平均寄与度上位によるアップ・ダウン相場が続く

 1)11/20は全面大幅高も、上値は重い ⇒ 翌11/21は▲1,198円安   ・11/20の日経平均の推移     11/19終値  48,537円     11/20高値  50,574

    11/20終値  49,823

  ・前日比+2,037円高・+4.96%高したものの、終値では+1,286円高・+2.64%高で終えた。つまり、高値から▲751円安と伸び悩んだ。ここに、日経平均の強弱感がある。

  ・その要因としては、海外短期投機筋が朝方、株価先物に買いを入れたが、日経平均が前日比+2,000円近辺から売り転換して利益確定売りをしたと考えられる。海外短期投機筋は、日経平均を強いとみていないということだろう。前日11/19も朝方に海外勢の先物買いがあって日経平均はプラスに転じたが、その後、売り優勢となり日経平均は▲165円安で終えた。11/20の日経平均の大幅高は、エヌビディアの好決算を反映したもの。ただ、エヌビディア効果は長続きしないだろう。海外短期投機筋は「反発狙いの買い」はするものの、「買いの牽引役は降りた」ものと予想する。

  ・やはり、翌11/21の日経平均は▲1,198円安と大幅安となった。

 2)エヌビディアの好決算を受け半導体関連銘柄に買い   ・エヌビディアは11/19夕に好決算を発表し、翌11/20の相場に好影響を与えた。   ・しかし、11/21には剥げた。

  ・むしろ、将来投資への懸念が強まってきた模様。

 3)日経平均寄与度上位のアップ・ダウン相場が続く   (1)11/20、日経平均+1,286円高に占める寄与上位5銘柄で+795円高・+61.8%占有    ・日経平均寄与上位5銘柄     寄与度    株価上昇幅       アドバンテスト     +451円高   +1,685円高       東京エレクトロン    +164     +1,640       ソフトバンクG      +71      +355       ファーストリテイ    +60      +750       TDK           +49      +97

       合計         +795

  (2)11/21、日経平均▲1,198円安に占める寄与上位5銘柄で▲1,418円・▲118%占有    ・日経平均寄与上位5銘柄     寄与度    株価上昇幅       アドバンテスト     ▲674円安   ▲2,520円安       ソフトバンクG      ▲419     ▲2,090       東京エレクトロン    ▲233     ▲2,320       フジクラ        ▲52      ▲1,565       イビデン        ▲40     ▲1,205        合計         ▲1,418円    ・日経平均の下落寄与が高い上位3銘柄だけで、相場が決まった。日経平均は大幅安したが、他の個別銘柄への波及は極めて限定的だった。       日本株主要株価指数11/21の動き         日経平均   ▲2.40%安         TOPIX    ▲0.06         JPX日経400  ▲0.18         グロース250  +0.17高

   ・日経平均のアップ・ダウン相場が続くとみられる。

●3.ニデック、格付け会社ムーディーズが「Baa3」に2段階格下げ(ロイター)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5929 三和        チャートに妙味  ・7832 バンダイナムコ   業績堅調

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