米株下落、トランプ関税の影響「誰もが悲観」-リスクオフ鮮明に
トランプ米大統領の関税政策が世界経済に打撃を与えるとの懸念が強まる中、31日の米金融市場では株式が下落。投資家は米国債や金など安全資産に逃避する動きを強めている。
貿易戦争による米経済のリセッション(景気後退)懸念が広がり、2025年1-3月(第1四半期)のS&P500種株価指数は、世界の他市場との比較で1980年代以来の大幅なアンダーパフォーマンスとなる見通しだ。
この日のS&P500種は一時1.7%下落。その後は消費財、エネルギーや公益などの高配当セクターで買いが優勢となり、下げ幅を縮小した。ハイテク銘柄の比重が高いナスダック100指数は一時2.5%。エヌビディアやテスラの下げがきつく、ハイテク7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は一時3%を超える下げとなった。
恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は20を上回り、投資家は米国債や金など安全資産に逃避する動きを強めている。
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ティグレス・ファイナンシャル・パートナーズのアイバン・ファインセス最高投資責任者(CIO)は「これは動揺や恐怖を抱き、非常に疲れる状況だ」と指摘。「関税に関する不確実性が非常に大きく、経済や企業の利益、失業率にどう影響するのかについて誰もが悲観的になっている」と電話インタビューで語った。
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年初来の騰落率ではS&P500種が5%安(28日終値時点)となっている一方、MSCIワールド指数(米国を除く)は6%余り上昇している。ブルームバーグがまとめたデータによれば、これは四半期ベースでは1988年以来の大きな差だ。
アドバイザーズ・アセット・マネジメントのスコット・コリヤー最高経営責任者(CEO)は「トレーダーは神経質になっており、経済の減速が当初想定よりもはるかに速いとの懸念から安全資産に逃避している」と指摘。「関税の規模や範囲、利益成長への影響がもっと明確になるまで、投資家にとって本当に厳しい状況が続くだろう」と語った。
ウォール街のストラテジストの間では、4月2日の関税賦課を前に米株見通しを引き下げる動きが相次いでいる。ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、景気後退リスクの高まりとトランプ政権の関税政策を巡る不確実性を理由に、S&P500種の年末水準を従来予想の6200から5700前後に変更した。
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JPモルガン・チェースのトレーディングデスクは、政策の不確実性を理由に「戦術的に弱気」な姿勢を崩しておらず、いわゆる「トランプ・プット」も当面は期待できないと分析している。
ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏など、株の強気派で知られるストラテジストも見通しを弱めている。バークレイズのベヌ・クリシュナ氏は先週、成長鈍化が2025年の株式市場を圧迫し続けるとの見方を示し、S&P500種目標水準を6600から5900に引き下げた。
「さらなる痛みとボラティリティーが続くだろう」と語るのは、ローズ・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、パトリック・フルゼッティ氏だ。「関税を巡るトランプ政権からの情報は二転三転している。ワシントンからの一貫したメッセージがない限り、安全資産に逃避する投資家は増えるだろう」と同氏はみている。
原題:US Stocks Fall, Bonds Gain as Fears Build Ahead of Trump Tariffs(抜粋)