【オートレース】中村雅人がボヤく時ほど・・・強烈パンチが出る時だ~SG伊勢崎オート第29回オートレースグランプリ

◆第29回オートレースグランプリ(SG、14日・5日目、伊勢崎オートレース場)

 SGセミファイナルの0メートルオープン戦。その大外8枠は、西遊記の“天竺”ぐらいはるか彼方遠くって話なんですが、業界最強のテクニシャンはそれをも完全克服した。

 オートレースグランプリ準決勝戦9Rを中村雅人がピンクの勝負服をまとって、後方から猛然、悠然、泰然と追い上げた。抜かせない芸にかけてはオート界屈指の粘り強さを誇りまくる女王・佐藤摩弥をも必然のごとく抜き去って先頭ゴールを奪取した。これは偶然にできる芸事ではない。

 レースを終えてロッカーに戻った時のライバルたちの声をここに書いてしまうと、もう他に伝えることがなくなってしまうが、ご紹介します。

 「さすがマサトっ!」「よっ!メージンゲ~!」「お勉強させていただきました~」

 同じ選手たちから、名人芸、勉強になったと称賛されまくるんですから、もう言葉じゃないんです。決まり手は「名手マサト」です。そこに尽きちゃいます。マンパワーの勝利です。人間がレベチでした。

 「まあねえ、今回はうまくは行きましたけどね。エンジンも今節なら準決勝が一番でした。ただねえ…。最近はいっつもここまでは、なんですよ。自分は何とか準決勝まではなんだよなあ~。ここからなんだよねえ」

 その後、大きくため息を吐きながら、自虐を込めまくって続けた。

 「もうさ、最近の若手や後輩は熱量が違うんだなあ。ケーイチロー(10R2着でV戦進出の鈴木圭一郎)なんてさあ、検査に車を出す直前まで練習に行っちゃうんだもんね。自分なんてさ、同期たちから一周ぐらい練習に出て感触を試してみたら?と言われちゃうぐらだから(超苦笑)。やっぱりさ、SGの優勝戦を獲りに行くならもっと整備をしないとだよね」

 4日目の最終予選を終えると鈴木圭一郎はメタル、ロッド、リングをチェンジして、この後はSGタイトルを授けてくれたクランクに切り替えるプランを口にした。

 大会4連覇&6度目の同一タイトルを狙う青山周平はセミファイナルを目前に下回り作業に着手してライバルと同じくロッド、メタル、リングを改めた。

 令和のオートレース界は、パーツ戦争である。栄えある最高峰の勲章を得るためには、果てしな部品交換、設備投資を実践せねば、なかなかてっぺんへは到達できない。

 そんなご時世に「まあ、自分は軽さを感じたら、リングは換えようかなあってレベルだから」とここでも自嘲スマイルはやまなかったが、「でもまあ、今回はね、準決勝戦を勝って優出できたからね。いつもよりは枠が中になるからね。(V戦の枠が遠くなる)準決2着の時よりはまあ、ちょっとは何かあるんじゃないかなって思わなくもないんだけれどね」

 これまでSGは6度制した。今大会も2016年に捕獲している。きれいに5大タイトルを完全コンプリートしたが、その16年GPを最後にもう10年近くSGとは縁遠くなっている。

 「まあ、もう一度どこかで獲れたらいいなと思って、そこはやってはいるんですけれどね。でもこれが甘くはないんだよなあ~」

 最後の最後までボヤキ口調に徹したが、紙面でも紹介しましたが、このボヤキがおっかない。

 マサト名人はそこそこ勝機がある時ほどそのボヤキ節は強くなる。

 「だめだろうなあ、きっと」とボヤく時ほど、強烈パンチを繰り出しているシーンは何度も見た。

 今回はそういう風の時と同じ雰囲気を結構感じちゃっています。これあるんじゃないですかね。9年ぶりのSG表彰台。パーツ戦争を人間力で耐久できるのか。エンジン力を人間で上回っていくことはできるのか。中村雅人ならやれちゃいそうな気がします。だって、名人ですから。達人ですから。雅人ですから。(淡路 哲雄)

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