【日本市況】日経平均続落、中国AI高度化を懸念-米関税警戒で円安
28日の日本市場では株式が下落。中国製人工知能(AI)の高度化に対する警戒からAI・半導体関連株が売られた。トランプ米政権の関税政策によるインフレ懸念からドルが全面高となり、円は値下がり。債券は上昇した。
中国のスタートアップ企業、DeepSeek(ディープシーク)が低コストのAIモデルを披露したことを受け、米企業がAI開発に過度に資金を投じているとの懸念が再燃。 27日の米株式市場ではAI向け半導体大手、エヌビディアが急落し、時価総額が5890億ドル(約91兆円)減と、米企業1銘柄の1日当たりの減少額としては過去最大を記録した。
AI関連株の急落で投資家はリスク回避姿勢となり、債券や円に資金が向かった。28日はドルが買われ、円は前日の大幅高の反動もあって売り戻された。
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、AIショックを受けた米金利の低下が一服する中、国内勢からのドル買いが入っていると指摘。トランプ政権の一律関税については、段階的に引き上げる間に交渉の余地を残す意図があるとし、「ドル高要因かもしれないが、どのくらいインフレに影響するかは不透明」と述べた。
国内株式・為替・債券相場の動き-午後3時32分現在- 日経平均株価の終値は前日比1.4%安の3万9016円87銭
- TOPIXは1.17ポイント安の2756.90
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.7%安の155円61銭
- 長期国債先物3月物の終値は前日比29銭高の141円18銭
- 新発10年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.195%
株式
東京株式相場は下落。ディープシークのAIモデルが米国企業の優位性を脅かすとの見方から米半導体関連株が急落したことを受け、アドバンテストや東京エレクトロンといった半導体関連株が前日に続き売りに押された。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、米大手テクノロジー企業の将来の収益性が損なわれることへの懸念でエヌビディア株が大幅に下落し、日本の半導体関連銘柄の下げにつながったと話した。
一方、銀行や不動産など内需関連が買われ、TOPIXは上昇に転じる場面があった。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、決算発表前で短期の先物売りに追随する投資家も少なく、足元の米国市場の割高感からロング(買い)オンリーの中長期の投資家が買いにきている話もあると述べていた。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=155円台後半に下落。トランプ米政権の関税政策によるインフレ懸念からドルが全面高となり、円は売り戻された。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、トランプ政権の関税発動に対する懸念と水準感の両面からドル買い・円売りが出たと指摘する。もっとも、中国のAI企業をきっかけとした今回のショックが続くのがどうか注視する必要があり、「リスクオフが強まると、もう一段の円買いが入る可能性もある」との見方を示した。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、「きのうのディープシークショックが過剰反応だった」と言う。トランプ大統領の発言も含めて米政権の関税に関する報道を受けたドル高と、前日の円買いの逆回転による円安があるとの見方を示した。
債券
債券相場は上昇。リスク回避の流れで米国の長期金利が大幅に低下したことを受け、買いが優勢となった。日本銀行が通知した中期や超長期債を対象にした国債買い入れも相場を支えた。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、1月の日銀金融政策決定会合に向けてフラットニング(平たん化)が続いていたと指摘した上で、海外市場の流れを受けて、特に金利上昇が大きかった5年債や先物主導で買い戻されたと述べた。
一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、エコノミストの5割超が次の利上げ時期を7月と見込んでいることから、「7月利上げが意識されてくると金利低下を抑制する」とみている。
日銀は28日、定例の国債買い入れオペを実施した。対象は残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、10年超25年以下。買い入れ額はいずれも前回オペから据え置かれた。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.685% 0.865% 1.195% 1.880% 2.240% 2.630% 前日比 -1.0bp -2.0bp -2.0bp -2.0bp -2.0bp -1.0bpこの記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。