化石燃料による排出が再び増加 一方で再生可能エネルギーも急成長、気候変動対策に希望
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マーク・ポインティング気候変動記者、マット・マクグラス環境担当編集委員
世界で化石燃料の燃焼によって排出される、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の量が今年、過去最大になる見通しだと、新たな統計が示している。
一方で、過去10年間で再生可能エネルギーが普及したことで、排出量の増加ははるかに緩やかになっており、世界の温暖化傾向が抑えられる可能性があるという希望を与えている。
また、世界的な気候・エネルギー分野のシンクタンク「エンバー(Ember)」による別の分析では、2025年には発電における化石燃料使用量が横ばいとなっていることが示されている。これは、太陽光発電の急速な成長が主な要因だという。
こうしたデータは、世界の排出量がピークに近づいている可能性があるという考えに説得力を与えている。ただし、それが正確にいつ訪れるかを言うのは難しい。
2025年のCO2排出量(推計値)は、状況が一様ではないことを示している。
21カ国の130人以上の科学者で構成される「グローバル・カーボン・バジェット」チームによると、今年の化石燃料とセメントからの排出量(CO2換算)は増加に転じ、前年比1.1%増の381億トンに達する見通しだ。
一方で、恒久的な森林伐採など、土地利用の変化による排出量は昨年よりも少なくなる見込みだという。
森林損失を増やす要因となる自然のエルニーニョ現象が終わったことが主な要因だが、これは長期的な傾向の継続でもある。
つまり、人間の活動による総排出量は、2025年にCO2換算で422億トンに達する見込みで、2024年の424億トンからわずかに減少することになる。
調査チームによると、より明確な事実としては、過去10年間の排出量の増加率は年間0.3%と、その前の10年間の年間1.9%と比べてはるかに低いことが挙げられるという。
さらに、過去10年間で35カ国が化石燃料の排出量を大幅に削減しながら経済成長を遂げたとされている。これは、前の10年間のほぼ2倍だ。
英イースト・アングリア大学のコリンヌ・ル・ケレ教授(気候変動科学)は、「気候変動対策として必要なくらい急速には、排出量が減少する状況にはまだないが、同時に多くの前向きな動きがある」と述べた。
また、排出量の増加が以前よりもはるかに緩やかになっているのは、「中国やその他の地域で再生可能エネルギーが驚異的に成長したためだ」と、同教授は付け加えた。
再生可能エネルギーの急成長によるこの効果は、電力部門の排出量に表れている。
シンクタンクのエンバーによると、化石燃料による発電は今年、横ばいか、わずかに減少する見通し。これは新型コロナウイルスのパンデミック以来初めてのことだという。
エンバーは、今年の特徴的な点は、経済不況によるものではなく、電力需要が急増したにもかかわらず、この現象が起きたことだと指摘している。
そして、今年の追加的な電力需要は、風力、特に太陽光によって十分に賄われているとしている。
「経済成長のために化石燃料が唯一の手段だった時代が数十年、数世紀続いたが、過去10年間でそれが初めて変わった」と、同社の上級データアナリスト、ニコラス・フルガム氏は述べた。
「太陽光発電は記録的なペースで成長しており、歴史上どの電源よりも速い」と同氏は付け加えた。
エネルギーシステムからの炭素排出のピークは、正確にいつになるのかは依然として不確実だが、気候変動との闘いにおいて画期的な瞬間となるのは間違いないだろう。
ただし、それで温暖化が止まるわけではない。各国は依然として、CO2を大気中に排出し続けるからだ。ただし、より緩やかなペースで。
「CO2を排出し続ける限り、温暖化は続く。さらなる温暖化を止めるには、排出量をネットゼロにしなければならない」と、英エクセター大学で気候システムの数理モデルを専門とするピエール・フリードリングシュタイン教授は述べた。
COP30に合わせて発表された別の分析も、現実を突きつけている。
各国の実際の気候対策を追跡する「クライメート・アクション・トラッカー」は、現在の政策に基づけば、温暖化は今世紀末までに産業革命前の水準を2.6度上回る可能性があると指摘した。この推計値は、過去数年間ほとんど変わっていない。
同グループのビル・ヘア博士は、「これ(温暖化対策)の実現において、いまよりも良い機会がなかったのは明らかだ。同時に、これまでで最悪の状況にあることも明らかだ」と述べた。
「これは悪魔のようなジレンマだ。事態は本当に悪化する可能性がある。このCOPで適切な行動を取らず、化石ガスや石油を固定化すれば、確実に2.5度、あるいは3度の温暖化に向かうだろう」
「しかし一方で、まったく逆のことを行い、世界的に進行している技術変革の勢いを生かすチャンスもある」