Google「検索」に排除措置命令、公正取引委員会が違反認定 巨大ITで初

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自社の検索サービスをスマートフォンの初期画面に搭載するよう要求したのは独占禁止法違反(不公正な取引方法)に当たるとして、公正取引委員会は15日、米グーグルに排除措置命令を出した。「人工知能(AI)検索」の台頭を背景に、欧米の競争当局と足並みをそろえ公正な競争環境の整備を急ぐ。

巨大IT(情報技術)企業への命令は初めて。グーグルへの行政処分はデジタル広告事業で自主改善を約束させた2024年4月の「確約手続き」に続き2回目。端末メーカーなどとの取引における違反行為の影響の大きさを重くみて、再発防止などを求める排除命令に踏み込んだ。

命令としては初めて、グーグルから独立した第三者が再発防止の履行状況を5年間報告することも求めた。

グーグルは15日、「調査結果に遺憾の意を表明する。当社と日本のパートナー企業との契約は、競争を促し、各社の製品イノベーションへの投資を促進することで、消費者の皆様により多くの選択肢を提供してきたと考えている。今回の命令を精査し、今後の対応を慎重に検討する」とコメントした。

公取委が違反認定したのはグーグルが開発した基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマホに関する端末メーカーや通信事業者との2つの取引だ。

グーグルは遅くとも20年7月以降、アプリストア「プレイストア」のライセンス契約時に、メーカー6社に対して検索サービス「サーチ」やブラウザー「クローム」をユーザーの目に留まりやすいスマホの初期画面に設定するよう求めていた。国内で販売されたアンドロイド端末の8割が契約の対象だった。

検索を通じて得た広告収益の一部を分配する契約もメーカーや通信事業者5社と結んでいた。収益分配を受けるために、自社サービスを初期画面に配置するほか、他社サービスを搭載しないといった条件を全て満たす必要があった。

独禁法は有力な事業者が取引先に対し競合他社との取引を制限する行為を「拘束条件付き取引」として禁止している。公取委はグーグルの2種の契約が新規参入や競合他社との取引を妨げていたと認定した。

命令は自社サービスをスマホ初期画面に搭載するよう強いる行為や他社サービスの実装を妨げる行為の取りやめを求めた。広告収益の分配契約も適用条件を緩和し、メーカーの選択肢を広げる。

ウェブ解析の「スタットカウンター」によると、検索エンジンにおけるグーグルの世界シェアは25年3月時点で約9割となり、日本国内でも8割を超える。広く浸透した検索におけるユーザーとの接触機会の多さは同社の収益力の源泉となってきた。

検索分野では近年、生成AI技術の活用が進む。AIが人の意図をくんで文章の形で答える「対話型検索」はグーグルが強みとした従来の「キーワード型検索」に比べて利便性が高く、新興勢力も多くのユーザーを獲得している。

公取委は検索の主戦場であるスマホでグーグルが優遇される状況を放置すれば、新たなプレーヤーの参入余地が小さくなるとみた。命令を出した背景に、検索の市場で公正な競争環境の整備を急ぐ公取委の意図が透ける。

グーグルの検索サービスや取引契約を巡っては、複数の市場にまたがって影響を及ぼし合うことで不当に同社の競争力を高めていないか、各国の競争当局が監視を強めてきた経緯がある。

欧州連合(EU)の欧州委員会は18年、アンドロイド端末を製造するスマホメーカーに対し、検索サービスをアプリストアと抱き合わせた行為などがEU競争法(独禁法)違反にあたるとして43億4000万ユーロ(約7000億円)の制裁金を科した。22年のEUの一般裁判所も決定の大筋を支持した。

米司法省はアンドロイド端末における問題に加え、米アップルとの契約が反トラスト法(独禁法)に違反しているとして、20年にグーグルを提訴。連邦地裁は24年8月にグーグルの検索サービスが独占状態になっていると認定し、司法省は是正案としてクロームやアンドロイドなどの事業分割を求めた。

今回の公取委の排除措置命令は世界の競争当局の監視強化と歩調を合わせた形といえる。今後は命令により競争環境がどれだけ回復するかに焦点が移る。

排除措置命令に事業者が従わなければ懲役や罰金など刑事罰の対象になる。命令に不服があれば事業者が処分の取り消しを求めて提訴することもできる。

公取委は独禁法に加え、25年12月までに施行されるスマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)との両輪でグーグル側に対応を迫る見通しだ。

スマホ新法はスマホのOSやアプリ配信で企業の競争を促すことを目的とする。検索分野ではブラウザーなどをユーザーが選択できるよう複数サービスの表示を義務付けた。アプリ配信や決済でも他社の参入を妨害する行為を禁止する。違反が認定されれば、違反分野の売上高の20%を課徴金として納付するよう命じる。

公取委は3月、グーグルのほかアップルとその子会社のiTunesを対象にすると発表した。デジタル分野に関わる専門人員を拡充し、新法下で規制の実効性を高める方針だ。

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