極超音速の自律飛行を実現へ──ストラトローンチが再利用可能なロケット機のテストに成功
宇宙産業の調査会社Quilty Spaceは、極超音速テストの市場が60億~70億ドル(約8,700億~1兆円)に達すると見積もっている。
米会計検査院が、弾道ミサイルの軌道と極超音速の滑空型ミサイルおよび巡航ミサイルの軌道とを比較した図。
ストラトローンチが現在の基盤を固めるまでの道のりは長かった。かつては、スペースXと提携し、ファルコン9ロケットの空中発射型を利用して人工衛星を軌道に打ち上げていたこともある。その提携事業が立ち行かくなくなると、Orbital Sciences(現在はノースロップ・グラマン傘下)と組んで、空中発射型ロケットの設計に当たった。
ストラトローンチの創業者は、マイクロソフトの共同創業者でもあったポール・アレンであり、そのアレンが18年に死去すると、ストラトローンチの将来性は不透明になった。19年4月には「Roc」という名の巨大航空機が初飛行するも、翌月にはその事業を停止。同年の後半になって、ファンド会社Cerberus Capital Managementがストラトローンチをアレンの遺族から買収し、ロケット打ち上げから極超音速飛行テストへとその事業を転換したのだった。
その後もずっと、同社が飛ばし続けているRocは、翼幅385フィート(117m)という巨大な双胴機だ。一時は、ハワード・ヒューズの巨大飛行艇「スプルース・グース」と似た運命をたどるかと危惧されたことすらある。スプルース・グースは、19年にRoc(正式名称は「スケールド・コンポジッツ モデル351」)が初飛行を遂げるまで翼幅の世界記録を保持していたが、第二次世界大戦後の混乱期に事業が悪化したため、初飛行が最後の飛行になったのである。
いまや、極超音速兵器の開発を急ぐ国防総省の貪欲さが、当面はストラトローンチの収益を支える財源になりそうだ。
現在ストラトローンチは、2機目となるロケット機「Talon-A3」を建造中であり、25年の第4四半期にはその運用開始を予定している。母機となるのは、23年に経営破綻したVirgin Orbit(ヴァージン・オービット)からストラトローンチが取得したボーイング747だ。747は航続距離が長いため、西海岸以外の発射基地からも極超音速テストを実施できるようになる。
(Originally published on Ars Technica, translated by Akira Takahashi/LIBER, edited by Nobuko Igari)
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