植物性食品のポリフェノールが糖尿病や肥満のリスクを減少 メタボのリスクも大幅に低下

 ポリフェノールや、その一種であるフラボノイドは、植物性食品に含まれる色素などの成分で、活性酸素から身を守る抗酸化作用や抗炎症作用など、さまざまな生理機能を有することから、糖尿病・高⾎圧・肥満・がんなどの予防に役立てられると期待されている。

 緑茶に含まれるカテキン、赤ワインやブドウの果皮に含まれるアントシアニン、ごまなどに含まれるセサミンなども、ポリフェノールに分類される。ポリフェノールは、ホウレンソウやトマトなど、ほとんどの野菜にも含まれている。

 野菜、リンゴ、ベリー、お茶、ダークチョコレートなどの、色とりどりの食品からポリフェノールを摂取すると、2型糖尿病、心血管疾患、がんなどのリスクが大幅に減少し、寿命を延ばす効果も期待できることが、12万人以上を10年以上追跡調査した新しい調査で明らかになった。

 研究は、オーストラリアのエディスコーワン大学、カナダのクイーンズ大学、オーストリアのウィーン医科大学などによるもの。研究成果は「Nature Food」に発表された。

多様なポリフェノールをとると健康効果を高められる

 「野菜や果物、お茶などポリフェノールを含む多様な食品を摂取すると、健康効果を高められることが、大規模な調査で明らかになりました」と、エディスコーワン大学栄養・健康イノベーション研究所(NHIRI)のベンジャミン パーメンター氏は言う。

 「ポリフェノールは、その種類によって生理機能が異なることが示されています。血圧を改善するものもあれば、コレステロール値を下げたり、炎症を抑えたりするものもあります」。

 「さまざまな食品から、より多様なポリフェノールを摂取することで、健康状態の改善効果を高められる可能性があります」としている。

ポリフェノールを多様に摂取している人は糖尿病リスクが20%低下

 研究グループは今回、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した12万4,805人のデータを解析し、ポリフェノールの摂取と健康状態との関連を調べた。参加者の60%が過体重か肥満で、4%が1型糖尿病か2型糖尿病だった。

 その結果、ポリフェノールを多く摂取している人は、全死亡リスク、心血管疾患、2型糖尿病、がん、呼吸器疾患、神経変性疾患などの発症リスクが6~20%低下したことが示された。

 さらに、ポリフェノールを多様に摂取している人は、1日に6~7種類を多く摂取しており、そうした人は全死亡のリスクは14%、心血管疾患のリスクは10%、2型糖尿病のリスクは20%、呼吸器疾患のリスクは8%、それぞれ大幅に低下した。

 「色とりどりの野菜や果物などの植物性食品を食べたり、お茶を飲むと、ポリフェノールに加えてビタミンやミネラル、食物繊維なども摂取することができます。多様な食品を摂取すると、より健康的なライフスタイルを維持するために必要な栄養をとれます」と、パーメンター氏は指摘している。

ポリフェノールがメタボのリスクを23%減少腸内細菌叢も健康に

 野菜やリンゴ、ベリーなどの果物、コーヒーやお茶、赤ワインなどの、色とりどりの食品からポリフェノールを摂取すると、メタボリックシンドロームのリスクを最大で23%軽減できるという別の新しい研究も発表された。研究成果は「Journal of Nutrition」に発表された。

 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に、高血圧、高血糖、脂質異常などのリスク因子が複数重なった状態。メタボリックシンドロームがあると、動脈硬化になりやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気のリスクが上昇する。

 「ポリフェノールを豊富に含む食事は、メタボリックシンドロームを予防するために有用で、心血管代謝疾患のリスクを軽減する可能性があります」と、ブラジルのサンパウロ大学医学部のイザベラ ベンセニョール教授は言う。

 研究グループは、ブラジルの6つの大学や研究機関に勤務する公務員を追跡調査している大規模健康調査に参加した6,378人の成人を、8年間追跡して調べた。うち2,031人がメタボリックシンドロームと診断された。

 その結果、さまざまな食品からポリフェノールを多く摂取していた群(1日 469mg)は、少なく摂取していた群(1日 177mg)に比べて、メタボリックシンドロームのリスクが23%低下した。

 「ポリフェノールが心血管代謝疾患などの予防に役立つメカニズムについて、さらに研究を行う予定ですが、これまでに分かっていることは、これらの化合物に抗炎症作用と抗酸化作用があり、腸内細菌叢にも好ましい影響を与える可能性があることです」と、ベンセニョール教授は述べている。

 「とくに多様な食品からポリフェノールを摂取すると、腸内細菌叢が健康になり、善玉菌であるプロバイオティクスの増加が促されると考えられます。ポリフェノールの摂取源が多様であるほど腸内細菌叢、さらには健康全般への影響は大きくなります」としている。

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