アメリカ、一部のイラン産石油につき制裁解除を検討 財務長官が発言

画像提供, EPA

アメリカ政府は19日、イランとの戦争がエネルギー市場に及ぼす影響を抑えようとする中、イラン産石油の一部について制裁解除を検討していると明らかにした。

スコット・ベッセント財務長官は米FOXビジネスのインタビューでこの案を示し、これによって世界の買い手に供給される石油を増やせるかもしれないと述べた。米・イスラエルのイラン攻撃をきっかけに、世界中で海上輸送と生産が打撃を受け、エネルギー価格が急騰している。

ベッセント財務長官は、すでに海上にある約1億4000万バレルのイラン産石油について販売規制を取り除く可能性を検討中で、それにより世界価格が10〜14日間下落するだろうと推定した。販売規制の免除により、インド、日本、マレーシアなど石油を必要とする他国へ供給を回し、中国には「市場価格」で購入させることができると述べた。

開戦前、イラン産石油の主要な買い手は中国で、アメリカなどによる制裁のため、中国は大幅に値引きされた状態で購入していた。

他方、ベッセント氏は、免除がどのように機能するのか、売却代金がイラン政府に流れるのを防ぐ仕組みを含められるのかなど、詳細には踏み込まなかった。財務省は追加説明を拒否した。

トランプ大統領は同日、この案を進めるかどうかという記者団の質問に対し明確な回答を避け、「価格を維持するために必要なことは何でもする」と述べるにとどまり、途中で発言を打ち切った。

ベッセント長官の示した案が実行されれば、長年続いたアメリカの政策の劇的な転換となる。効果のほども不確実だ。

専門家らは、議論されている供給量は需要全体から見れば小さいため、販売規制免除による価格への影響は限定的だと警告する。加えて、アメリカが攻撃しているイラン政権の資金源になりかねないという。

「控えめに言っても、これはめちゃくちゃだ」。海事制裁を専門とするコンサルタント、ブラックストーン・コンプライアンス・サービスのディレクター、デイヴィッド・タンネンバウム氏はこう述べた。「要するに、イランに石油販売を許すことになり、その売り上げがイランの戦争遂行の資金になる可能性がある」。

さらに、制裁解除を受けて多くの買い手が現れる可能性がある一方、対象となる石油の大半はすでに市場に流通している。

「(販売される石油は)多少は増えるかもしれないが(中略)状況を一変させるほどの効果はないし、むしろ大量の疑問を生む」と、米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」のレイチェル・ジエンバ客員上級研究員は述べた。

アメリカはほかにも、石油備蓄の放出や、ロシア産石油に対する制裁緩和といった方法で、石油供給を拡大しようと取り組んでいる。

しかし、対ロ制裁の緩和には欧州首脳が強く反発。プーチン政権を強化し、ウクライナ戦争を長引かせると欧州はアメリカを批判した。

ベッセント長官の提案が、アメリカ国内でも同じような反発を招くかは不明だ。連邦議会の下院は16日、イランの石油部門への制裁を強化する法案を可決したばかり。

この法案を提出したマイク・ローラー下院議員(共和党、ニューヨーク州)は、BBCの取材に応じなかった。上院外交委員会の民主党トップ、ジーン・シャヒーン議員も同様だった。

ジエンバ研究員は、石油売却の資金がイラン政府に渡ることをアメリカは望んでいないはずだが、実際には防ぐのが難しいかもしれないと指摘した。

アメリカがこのような措置を検討していること自体、現在のエネルギー・ショックをいかに懸念しているかの表れだとジエンバ氏は述べた。

「供給ショックの規模が大きいため、アメリカ政府はまさに『1バレルでも多く』の状態にある(中略)手当たり次第に、追加の石油を探している」

通常は世界が1日に消費する1億バレルの石油の約2割が、イラン沿岸の一部に沿うホルムズ海峡を通過する。しかし戦争が2月末に始まって以来、海峡の輸送は停止している。

海峡を通る一部の石油は迂回(うかい)ルートで輸送されるようになったが、戦争により世界的な供給量の約1割が市場から失われていると専門家は見積もっている。

イランと​カタールにまたがる世界最大級のガス田が攻撃の対象となる中、化石燃料の供給能力が数年にわたり制限されるリスクがいっそう高まっている。たとえ紛争が比較的早く収束しても、エネルギー供給への影響は続く可能性がある。

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