現実を超えた風景を 『Galaxy S25 Ultra』の撮影体験はAIを使うともっと面白い

 Samsungが手掛けるフラッグシップのスマートフォン『Galaxy S25 Ultra』が、2025年2月14日に発売された。Samsungオンラインショップでの直販価格は、ストレージ容量256GBモデルが19万9800円、512GBモデルが21万7800円、1TBモデルが25万3800円。

 前モデル『Galaxy S24』シリーズの頃から、SamsungはAI機能に力を入れていた。今回の『Galaxy S25』シリーズもAIスマホを謳っており、賢く便利なAI機能による最先端のスマホ体験が持ち味だ。

 本機ならではのAI機能は『Galaxy AI』として、設定内にまとまっている(通話時の自動翻訳、音声の文字起こし、ウェブページの要約などなど)。では、数々のAI機能のうち、写真体験に貢献するものはあるのだろうか?

 もちろん、存在している。それが『フォトアシスト』というものだ。

 これは撮影した写真に対して、特定のコンテンツを削除するなどの生成AIに関する機能だ。生成AI編集の利用にはネットワーク接続が必須だが、「データをデバイスのみで処理」にチェックを入れると、ローカル環境での処理に切り替わる。

 今回は、この生成AI編集を活用した『Galaxy S25 Ultra』の写真レビューをお届けしよう。いわば、生成AIをフル活用したスマホカメラの楽しみ方だ。

不要なオブジェクトはサクっと削除

 フォトアシストの使い方は簡単。撮影した写真を『ギャラリー』アプリで開くと、下部に星型のアイコンが表示されている。

 タップすると生成AI編集とAIスケッチが利用可能となるが、ここでは生成AI編集を使っていく。画面右上のAI消しゴムのアイコンをタップするだけで、AIが写真を解析し、不要と思われるオブジェクトを自動的に選択してくれる。あとは「生成」をタップして、オブジェクトを消去するだけだ。

 実際に、元写真とAIでオブジェクトを消去した写真とを見比べてみよう。上記がオリジナルの写真だ。

 続いてこちらがAIでオブジェクトを消去した写真。右下に写っていた人物や奥に写っていた人混みが削除されている。目を凝らしてみると生成された部分はシャープさが失われているが、全体で見れば違和感は無い。

 AI消しゴムは自動的に人物を選択してくれるのが便利だが、完璧でないときもある。たとえば上記の例では人物の足元だけが選択範囲から外れてしまったが、そんなときは消したい部分を指でぐるっと囲えば、より正確に消したい部分を選択してくれる。

 また、AI消しゴムは人物以外の認識は苦手だ。上記の写真ではビル手前に写っている重機を消したいが、残念ながらAI消しゴムでは検知してくれなかった。この場合は重機をタップ、あるいは囲うなどしてひとずつず選択していこう。

超現実的な写真を簡単に得られる

 AI生成による写真の面白さは、現実では難しい理想の絵を作り出せる点にあると感じた。例えば観光地での撮影は人が映り込んでしまうことが多かったり、あるいはSNSにアップしたくとも映り込んでしまった人のプライバシーが気になってしまうことがある。

 つまりそこには「もっと人や車が見えないときれいなんだけどな」といった、理想とするビジュアルがあるはず。生成AIは、そのクリエイティブを叶えるツールになりえるのだ。

 上記の写真は博多の観光地として知られる中洲で撮影した。本来は画面右に大勢の人が映り込んでいるのだが、それらを消すことで夜景のコントラストに目が行くように仕向けている。AI生成を使うことで、撮影者が見せたい印象をブーストできる、とも言えるだろう。

 一方で「AIを使った写真はウソになるのでは?」と感じることもあるかもしれない。その気持ちは痛いほどわかるが、重要なのは「こういう風に見せたい」といった、撮影意図があるかどうかだと筆者は考えている。

 例えば上記の写真は、料理の奥にある食器類をAIで消去した。すなわち「奥の食器が見えない方が写真として美しい」と考えたわけだ。雑多さやリアリズムを重視したいならAIは使わないほうが良いだろうが、実際の撮影時にもおしぼりなどは避けるだろうし、それならあとで消しても違いはなさそうだ。

 特に料理写真はAI生成との相性が良いとも感じた。ものを避けたくてもスペースが足りなかったり、周りの席が映り込んでしまうなど、料理写真は制限が多い。AIを使えば、見せたくないものを見せなくできる。

 また、生成AIは背景も生み出してくれる。「この写真、傾けたほうがカッコいいかも」と思ったら、編集時に角度を付けてみよう。足りない部分をAIが自動的に補ってくれるため、元写真を小さくトリミングすることなく傾けることが可能だ。

生成ありきのフォトスタイルも、実用的

 AI生成により、状況によっては生成ありきの撮影というスタイルも確立できるのではと実感した。

 例えば観光地で撮影する場合、背景として生成しやすそうな場所に人がいるタイミングで撮影をする(ビルや森など)。逆に、看板やオブジェといった独自性のあるものは生成が苦手とする分野なので、それらと人がカブらないタイミングでシャッターをきるようにする。こうすればのちの編集がやりやすく、SNSにもアップしやすい写真が得られるだろう。

 現実的に、街や観光地に人がまったくいないタイミングはありえないかもしれない。だからこそ、そのビジュアルを作るのは面白い。現実を超えた現実、まさにハイパーリアリズム的なアイディアともいえるし、撮影者にとっては「消せる手段」を前提とした新たなフォトスタイルを構築できるチャンスでもある。

 そして、AI生成はまだまだ発展途上の技術であり、精度や解像度もまだまだ伸びしろがある。『Galaxy S25 Ultra』が可能としたこのフォトスタイルは、スマホ撮影のユニーク機能としていずれは定番化するかもしれない。レタッチで少しずつ人物を消していた時代からすれば、なんと魔法のような時代になったことか。

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ガジェット、音楽、楽器を主食とするライター。電気の通るモノに囲まれた生活を送りつつ、休日は登山やキャンプで魂を漂白している。

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