メタバースは終わってしまったのか? “コロナ禍後の仮想空間”の現在地 日常として定着しないワケ
少し前になるが、22年10月に米The Vergeが「Meta’s flagship metaverse app is barely used by the employees building it」(Metaのフラッグシップ製品であるメタバースアプリは、開発している従業員からほとんど利用されていない)という記事を公開している。 それによると、The Vergeが入手した社内メモから、MetaのVRソーシャルネットワーク「Horizon Worlds」(同社の主力メタバースアプリ)が多くの品質問題を抱えており、開発チームの従業員ですらほとんど使っていないことが明らかになったという。同アプリは21年12月にMetaの「Quest」ヘッドセット向けにリリースしたもので、「ヘッドセットの装着・セットアップが面倒」「セットアップに時間がかかる」といった不満が漏れているそうだ。 メタバースを巡る技術は日々進化しているが、まだ一般の人々が気軽に参加するという環境には至っていない。参加のハードルをさらに下げ、その魅力を上げるために、いくつかの技術進化が期待されている。 まずはデバイス系の進化だ。もちろんメタバース系サービスにはVRが必須というわけではなく、PCやスマホ上で実現しているものも多いが、メタバースの価値をフルに引き出すためには、VR環境が手軽な形で提供されるようになることが望ましい。 現在のVRヘッドセットの多くは、まだ大型でかさばり、重量もあるため、長時間の日常的な使用には向かない(快適さや実用性に欠ける)と指摘がある。また価格も高く、例えばApple初のMRヘッドセット「Apple Vision Pro」は、もっとも廉価な256GBモデルであっても約60万円という価格設定となっている。 米国で行われたアンケート調査では、回答者の29%が「機器の高額なコストがメタバースへの参加を制限する主な要因だ」と回答している。また少し古い調査になるが、22年3月に米国で行われた別のアンケートでは、メタバースを試すかどうかの決定において非常に重要な要因として「低価格のVRヘッドセット」を選んだ回答者は24%、「より多くのメタバースコンテンツ」の15%、「友人や家族がメタバースを利用していること」の14%を上回っている。 これらの結果を考えると、まずはデバイスの小型化と低価格化が求められるところだろう。