日産「ブルーバードシルフィ」発表、クリーンな新エンジンを搭載し159.4万円~、これが11代目ブルーバードだ【今日は何の日?7月27日】

一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月27日は、11代目となる日産自動車のブルーバードが「ブルーバードシルフィ」の車名で発表された日だ。1960年代から1970年代にかけて日本のマイカーブームをけん引したブルーバードも2000年を迎える頃には人気が低迷、シルフィというサブネームを付けて巻き返しを図ったのだ。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:前田 惠介、三栄・80年代日産車のすべて

2000(平成12)年7月27日、日産自動車は11代目ブルーバードの車名を「ブルーバードシルフィ」とすることを発表(発売は8月31日)した。同時に搭載する低排ガス、低燃費を誇る新エンジンについても発表した。

2000年にデビューした11代目ブルーバード「ブルーバードシルフィ」 「ブルーバードシルフィ」のリアビュー 1959年にデビューした初代ブルーバード「ダットサン・ブルーバード」バランスの取れたセダンで人気モデルに

日産のブルーバードと言えば、トヨタの「コロナ」とともに日本における自動車黎明期に日本のモータリゼーション、マイカーブームをけん引したミドルサイズのセダンである。1957年にデビューした初代コロナ「トヨペットコロナ」に対抗するかたちで、1959年に初代ブルーバードは「ダットサン・ブルーバード(310型)」の車名で誕生。1960年代から1970年代にかけて、ライバルのコロナと“BC戦争”と呼ばれた熾烈な販売競争を繰り広げた。

世界ラリーでも活躍した「ブルーバード1800SSS(1970年)」

モータースポーツでの活躍も目覚ましいものがあり、世界で最も過酷と言われたサファリ・ラリーで優勝した初の日本車はブルーバードであり、その後も大活躍して“ラリーの日産”を世界中に知らしめた。当時のブルーバードは、日産の優れた技術の象徴であり、看板モデルとして不動の人気を誇っていたのだ。

ダットサンブルーバード1300SS 1966年第14回東アフリカサファリラリー クラス優勝車 ダットサンブルーバード 1600SSS 1970年 第18回東アフリカ・サファリラリー 総合優勝車 ダットサンブルーバードU 1800SSS 1973年 第21回東アフリカ・サファリラリー 総合2位

ところが、バブル崩壊とユーザーニーズの多様化により、1991年の9代目(U13型)や1996年の10代目(U14型)ブルーバードが登場する頃には、市場のニーズはセダンからRVやミニバンに移行し、ブルーバードの人気も右肩下がりとなり、かつての輝きは失せてしまった。

2000年にデビューした11代目ブルーバード「ブルーバードシルフィ」

2004年7月のこの日、ブルーバードシルフィとネーミングされた11代目ブルーバード(G10型)が発表され、8月に発売された。ブルーバード人気挽回のため、シルフィというサブネームを付けることで新鮮さをアピール、ちなみにシルフィは、風の妖精(Shilph)の造語である。

「ブルーバードシルフィ」のコクピット

ブルーバードシルフィは、当時の50代、いわゆる”団塊の世代”をターゲットに、奇をてらわずオーソドックスな5ナンバーの4ドアセダン、言い換えると大人しい万人受けするスタイリングだった。パワートレインは、1.5L/1.8L/2.0L直4 DOHCの3種エンジンと、CVTおよび4速AT、5速MTの組み合わせ。

米国S-LEV(超低排出ガス車両)の認定を受けた「ブルーバードシルフィ」の1.8L エンジン

注目は、1.8L(QG18E)エンジン搭載車。日本車として初めて米国カリフォルニア州U-LEV(超低排出ガス車)の認定を受けた。これは、電気自動車並みで、当時のハイブリッド車よりも排ガス性能が優れていたことの証だった。

日産「ブルーバードシルフィ」のインテリア

販売価格は、154.9万円(1.5L/2WD)~206.2万円(2.0L/4WD)と比較的リーズナブルだったが、大人しい地味なスタイリング、さらに日本はセダン冬の時代に突入していたので販売は期待したほど伸びなかった。その後、2012年の3代目ブルーバードシルフィ(ブルーバードとして13代目)でブルーバードの冠がとれシルフィの単独ネームとなったが、結局2020年に国内での販売は終了した。

2000年にデビューした11代目ブルーバード「ブルーバードシルフィ」
2000年にデビューした11代目ブルーバード「ブルーバードシルフィ」

しかし、海外では4代目シルフィがデビューして人気を獲得。特に、セダンの需要が高い中国では大ヒット。シルフィは性能、経済性、信頼性の3拍子が揃ったクルマとして、2021年、2022年と中国の新車販売でトップに君臨しているのだ。

ブルーバードシルフィがU-LEV認定を受けた具体的な排ガス低減技術と燃費低減技術は以下の通りである。

ブルーバードシルフィ」の超低排出ガス車のシステム図

・三元触媒の早期活性化低温時の低い排ガス温度でも作動する超低ヒートマス担体触媒により、従来エンジン始動から20~30秒かかっていた触媒の活性化を約10秒に短縮して、暖気前に排出される未燃燃料HCを低減。

・HCトラップ触媒の付加HCを2ステージ式高効率HCトラップ触媒で一時的に吸着・貯蔵して、触媒活性後に浄化する。ちなみに、都市部のHC濃度は2~3ppm、シルフィの排ガス中のHC濃度は2ppm以下だから、大気よりもシルフィの排ガスに含まれるHCは低いことになる。

・高精度空燃比制御と燃焼促進燃費の面では、高精度空燃比制御システムをはじめ、燃焼を促進する高速噴流型ハイスワール燃焼、さらに高応答電子制御型EGRバルブの組み合わせによって、クラストップの16km/Lの燃費を達成。

・・・・・・・・かつての日産の屋台骨だった名車のブルーバードやサニー、セドリック/グロリアが日本市場の販売を止めた。人気が下がり始めると開発に投資できなくなり、復活はより難しくなってしまうという負のスパイラルに陥ってしまったのだろう。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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