菅野智之「お伺いを立てるようじゃ勝負にならない」6月どん底で覚えた自己主張…メジャー1年目前半戦総括
オリオールズの菅野智之投手(35)が13日(日本時間14日)までに、メジャー1年目の前半戦を総括した。オ軍と単年契約と退路を断って海を渡ったオールドルーキーは18試合に先発して7勝5敗、防御率4・44で折り返した。ア・リーグ東地区最下位と苦しむチームにあって開幕からローテを守り抜いてエース級の活躍を見せた一方、6月の月間防御率は6・20と苦戦。その中で実感した日本との違いとは―。(聞き手・一村順子通信員)
―前半戦最終登板で7勝目をつかんだ。ただ、その前の2登板(※1)が乱調だったこともあって、その試合は相当プレッシャーもあったのでは。
「いや。実は自分の中では、その前の(レンジャーズとの)試合で一定の手応えを感じていました。結果は良くなかったけど『こうやれば抑えられる』という。ただ、負けた試合で自分が納得しているとは言いたくなかった。自己満足と受け取られてほしくなかったので。でも『こうやれば大丈夫だ』という球が何個か確認できたんです。その前のレイズ戦で『こうしなきゃいけない』という課題は明確になっていた。自分のやりたいことが分かったんです」
―6月は5試合で2勝1敗ながら防御率6・20。苦しむ中で、きっかけをつかんでいた。
「納得いく球を投げたい、と改めて思ったんです。勝負は紙一重。運もあるけど、結局シーズンを通じたらそれは実力。配球が線でつながっている時、紙一重の差は好転することが多い。逆につながっていないと手痛い1本になってしまう気がします。たまたま抑えた、じゃなく、納得して投げたいなと思ったんです」
―正捕手ラッチマン、控えのサンチェスが相次いで負傷者リスト入り。前半戦だけで5人の捕手と組んだ。
「最初は正直、どうしたらいいんだろうというのはありました。キャンプからアドリー(ラッチマン)と組んできて『ここはこのサインが出るだろう』とか、言葉は通じなくてもバッテリーの会話ができていた。でも、初めて組む捕手は捕ったことがないから、単純にそれぞれが僕に対して持っている印象でリードするしかない。スプリットが軸だと思う捕手もいれば、スライダーがいいという捕手もいる。だからこそ『自分はこうしたい』というのをはっきり言わないと、と思うようになりました」
―それは勇気ある変化だったか。
「このレベルですから、みんないい捕手。ノート取って研究して、すごく考えてもいる。ただ、ちょっとした構えの位置とか。2ストライク追い込んで、僕からすればもう少し外に構えてほしいって。でも正直、それは言いづらいところ。相手が気を悪くするかな、とか。打たれて捕手のせいにしているとも思われたくない。でも、そういう変な気遣いをしたら、こっちはダメ。はっきり自分の意見を伝えないといけない。それは苦しかった時に、すごく感じました」
―日本的な気遣いより、はっきり伝えることが重要。
「相手がどう思うかな、とお伺いを立てているようじゃ勝負にならない。その捕手と組むのは、その1回が最後かもしれない。だからこそ向こうも1回の機会に懸けに来ている。その気持ちもくまなきゃいけない。その上で、試合前のミーティングでは自分から『この打者に、こう攻めたい』と言うようにしました。実際、試合中、何度も首を振っていますし」
―いい意味で、6月の経験は“菅野智之”を出すきっかけになった。
「マグレじゃなく、前の打席の、このボールを生かしてアウトにできた。それをもとに『次こうしよう』と、シーズンを通して“線”にしていかなきゃいけない。普段使わないボールを使うとか、勝手に相手が意識する“捨て球”を使うとか、(後半戦の)伸びしろも出てくると思います」
―日本時代と比べて、折り返し地点での体の状態はどうか。
「何だかよく分かんないです(苦笑)。体調はいい。疲れも人並みにあるんだろうけど、よく分からないまま過ごしている。あまり調子がいいとか悪いとか考えないようにしている。慣れるまでは、そうじゃないですか。後半戦、しっかり完走するだけです」
―メジャーでは7月末までがトレード期限。オフにFAとなる選手ほど、プレーオフ進出を争うチームにトレードされる可能性もある。
「それはもう自分でコントロールできないことなので」
―オールスター休暇はどう過ごすか。
「寝ます(即答)。家族(※2)はニューヨークに行ったし。実はオフの日も結構、登板2日前とかやることがあったり、ボルチモアを見る時間もそうなかった。ゴルフを1、2回やって、それくらいでしょうね」
【※1】6月27日(同28日)のレイズ戦では2回に一挙6失点するなど5回9安打7失点も、打線の援護で6勝目をマーク。今月2日(同3日)のレンジャーズ戦は5回途中10安打6失点で5敗目を喫するなどメジャーで初めて2戦連続6失点以上と乱調だった。
【※2】7勝目を挙げた10日(同11日)のメッツ戦を、両親と伯父であり巨人前監督の原辰徳氏(66)が現地を訪れ観戦していた。