通常動力型潜水艦に対する空前の需要、ドイツが18隻受注で他の競合を圧倒
通常動力型潜水艦に対する空前絶後の需要=30隻以上を巡る戦いが一段落し、ドイツが18隻、フランスが6隻、スウェーデンが3隻の受注に成功したが、まだルーマニア、エジプト、アルゼンチン、フィリピンの結果が出ておらず、サウジアラビアの潜水艦調達も注目されている。
参考:Hanwha Ocean deepens US ties and eyes Saudi submarine prospect after Canada setback
カナダのカーニー首相はハリファックスで「ドイツのTKMSを潜水艦調達の優先交渉者に、韓国のハンファを予備交渉者に指定した」「TKMSと契約締結交渉が不調に終わった場合、ハンファを優先交渉者に指定して交渉に入る権利を留保している」と発表し、潜水艦12隻の調達を含むライフサイクルコストが約1,000億加ドルに達する大型契約を優先交渉者にTKMS(Type 212CD)が選定され、主要な通常動力型潜水艦に関する入札の大半が終了した。
出典:Koninklijke Marine
オランダ入札ではナバル・グループのバラクーダ(4隻)が、ポーランド入札ではサーブのA26(3隻)が、インドネシア入札ではナバル・グループのスコルペヌ Evolved(2隻)が、インド入札ではTKMSの214NG(6隻)が勝利し、カナダの結果を合わせるとTKMSが18隻、ナバル・グループが6隻、サーブが3隻の通常動力型潜水艦建造を受注し、計27隻の取得費用だけでも400億ドル以上の契約額となり、ライフサイクルコスト全体になると1,000億ドル以上の資金が動くことになる。
現時点ではTKMSがナバル・グループを圧倒しているが、ルーマニア議会は2023年にスコルペヌ調達計画(2隻)を承認、エジプトもロメオ型更新(4隻)のためスコルペヌを調達する可能性が高いと予想され、アルゼンチンもスコルペヌ調達(3隻)に関する意向書に署名しており、フィリピンの潜水艦調達(2隻)にはスコルペヌ、S-80Plus、KSS-IIIPN、U212NFSが競合しているため、このあたりの需要を取り込めればナバル・グループは受注でTKMSに追いつくことができるかもしれない。
出典:Naval Group Scorpene Evolved
カナダ需要を逃してしまった韓国は既に次の入札機会に向けて動きだしており、シェパードは「ハンファの成長戦略において中東、アフリカ、東南アジア、南米、ヨーロッパ、米国市場を優先し、特に米国を最も重要な市場と位置づけて生産拠点を確立する戦略を追求している」「さらにサウジアラビアはフリゲート艦5隻と潜水艦4隻~6隻の調達を含む海軍近代化計画(総額55.6億ドル)を検討中で、韓国は現代重工業がフリゲート艦受注を、ハンファオーシャンが潜水艦受注に向けて注力する見込みで、この潜水艦受注ではフランス、イタリア、スペインと競合する可能性が高い」と報じた。
サウジアラビア入札もローカライゼーション=国産化の成否が入札結果を大きく左右し、シェパードも「造船基盤を持たない買い手の間では完成品の納入よりも広範な現地生産と技術移転を提案するサプライヤーを好む傾向が定着している」と指摘。さらに「韓国造船業の軍艦建造に関する市場予測によれば、今後発注が見込まれる契約額は2020年代の終わりまで着実に増加するものの、2030年代初頭には減少に転じると予測されている。将来受注見込みが先細りする前に米国や湾岸諸国で展開している売り込みを受注に結びつけなければならないプレッシャーに現代重工業とハンファオーシャンは晒されている」と報じている。
出典:Hanwha Ocean
現代重工業はペルー海軍向けのフリゲート艦、大型OPV、揚陸艇建造についてペルー国営造船所(SIMA)から提携企業に選ばれ、現代ロテムもK2や装甲車の現地生産でペルー陸軍と交渉を進めており、2026年7月には現代重工業とSIMAがペルー海軍向けの潜水艦設計(HDS-MGP)を発表し、ペルーと共同で南米地域にも潜水艦を売り込んでいくらしい。
韓国造船業の軍艦建造は2031年以降に受注見込みが減少に転じるため、成長を維持するためには中東、アフリカ、東南アジア、南米市場で受注を積み上げ、米国市場で米海軍向け艦艇を受注して売上規模を大きく伸ばさなければならず、その足がかりがペルーやサウジアラビアからの受注であり、ハンファ・フィリー造船所への大規模投資と豪オースタルの米国事業買収に向けた動きなのだろう。
関連記事:トランプ大統領が戦闘艦の海外建造を条件付きで容認、最有力候補は韓国設計 関連記事:ハンファが狙う米海軍艦艇建造、豪オースタルの米国事業買収に動く 関連記事:米軍事委員会は海軍艦艇の海外建造を阻止、韓国資本の米造船所は建造を受注 関連記事:米下院が海軍艦艇の日韓建造を阻止する条項を可決、海外建造など言語道断 関連記事:米海軍艦艇の国外建造、国内雇用という利害を無視すれば実現しない 関連記事:Hanwhaの米市場進出が本格化、買収した米造船所に50億ドルを投資 関連記事:Hanwha Oceanが米造船所を1億ドルで買収、米海軍長官も買収を歓迎 関連記事:米海軍長官は艦艇建造に海外の造船所活用を希望、米造船業界は反対 関連記事:現代重工業が米造船所と提携、米海軍・沿岸警備隊向け艦艇建造・MRO事業に進出 関連記事:ペルーが韓国と防衛装備品協定を締結、K2とK808を計195輌取得へ 関連記事:ペルー海軍の艦艇建造プロジェクト、現代重工業が競合を抑えて勝利 関連記事:カナダ潜水艦調達を巡るドイツと韓国の戦いが決着、優先交渉者はTKMS 関連記事:白熱してきたフィリピンの潜水艦導入、FincantieriもU212NFSを提案 関連記事:フランス、オランダ海軍に続きインドネシア海軍からも潜水艦を受注 関連記事:通常動力型潜水艦に対する空前の需要、オランダがバラクーダ級契約に署名 関連記事:6ヶ国8設計案が競合したポーランドの潜水艦調達、勝者はスウェーデン 関連記事:インドの潜水艦調達を巡る戦い、スペインが脱落したためドイツ勝利か 関連記事:通常動力型潜水艦に対する需要は30隻以上、仏独韓が積極的に売り込み
※アイキャッチ画像の出典:TKMS