太陽系に最も近い4.3光年先の恒星で木星サイズの太陽系外惑星候補を直接撮像か

太陽系に最も近い恒星系として知られる約4.3光年先の三重連星「ケンタウルス座アルファ星(アルファ・ケンタウリ)」。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測を行ったところ、この星で新たに木星サイズの太陽系外惑星が直接撮像で発見されたかもしれない……そんな研究成果が、学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。

【▲ ケンタウルス座アルファ星A(左上)を公転している可能性がある太陽系外惑星候補(右下)の想像図(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Robert L. Hurt (Caltech/IPAC))】

サイズは木星程度・質量は地球の100倍前後と推定

惑星候補が検出されたのは、三重連星を構成する星のひとつである、太陽に似た恒星「ケンタウルス座アルファ星A」です。

NASA/JPL=アメリカ航空宇宙局のジェット推進研究所およびカリフォルニア工科大学のCharles Beichmanさん、カリフォルニア工科大学の博士課程学生Aniket Sanghiさんなどが参加した研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置「MIRI」を使用して、2024年8月と2025年2月・4月にケンタウルス座アルファ星Aの周辺を観測しました。

その結果、2024年8月の観測時に、ケンタウルス座アルファ星Aから約1.5秒角離れた場所で何らかの天体が検出されました。

この天体の中間赤外線での明るさは、ケンタウルス座アルファ星Aと比べて1万分の1しかありません。この天体がケンタウルス座アルファ星Aと同じ距離にあると仮定した場合、星から約2天文単位(太陽から地球までの距離の約2倍)離れていることになります。

綿密に計画された観測、分析結果、コンピューターモデリングをもとに、研究チームはこの天体が偶然写り込んだ遠方の銀河や太陽系内の小惑星などではなく、太陽系外惑星の可能性が高いと考えています。しかし、2025年2月と4月に行われた観測では、この天体は検出されませんでした。

そこで、研究チームは2019年に発表された論文(ESO=ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」で観測を実施したもの)や、ケンタウルス座アルファ星Aと連星をなすもう1つの太陽に似た恒星「ケンタウルス座アルファ星B」の重力、それにジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で得られた新しい観測データを考慮したシミュレーションを実施。

2024年8月に検出された天体が2025年2月・4月に検出されなかったのは、惑星が公転して位置が移動し、地球から見てケンタウルス座アルファ星Aに近くなりすぎたために検出できなくなったからだと結論付けました。

【▲ 左:地上の望遠鏡で撮影されたケンタウルス座アルファ星。中央:ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測したケンタウルス座アルファ星A(下)と同B(上)。右:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中間赤外線観測装置「MIRI」で観測したケンタウルス座アルファ星Aの周辺、「S1」のラベルが付けられているのが検出された天体。ケンタウルス座アルファ星Aそのものからの光はコロナグラフを使って遮られている(星の位置は★印で示されている)(Credit: Science: NASA, ESA, CSA, Aniket Sanghi (Caltech), Chas Beichman (NExScI, NASA/JPL-Caltech), Dimitri Mawet (Caltech); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】

研究チームはこの惑星候補について、ケンタウルス座アルファ星Aから1~2天文単位離れた楕円軌道を公転していて、直径は木星の1~1.2倍、質量は土星に近く(地球の90~150倍)、表面温度は約225ケルビン(約マイナス48℃)と推定しています。

ケンタウルス座アルファ星を構成する星のうち、太陽よりも小さな赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」では、恒星の動きの変化をもとに、これまでに3つの惑星発見が報告されています(うち1つは惑星候補)。

ケンタウルス座アルファ星Aで検出された天体が実際に惑星だった場合、恒星の明るさや動きの変化をもとにした間接的な検出ではなく、MIRIによる直接的な検出例となります。今後の観測で惑星の存在が確認されれば、太陽系に最も近い恒星系での直接撮像による惑星の発見として記録されるだけでなく、太陽系外惑星の研究に大きな影響を与えることでしょう。

また、ケンタウルス座アルファ星を巡っては、レーザー推進で加速した超小型の無人探査機を20年程度で送り込む「ブレイクスルー・スターショット(Breakthrough Starshot)」と呼ばれる探査プロジェクトも構想されています。新たな惑星の発見は、こうしたプロジェクトにとって“追い風”となるかもしれません。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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