パスワード使い回し、まだ続けてる? 160億件流出の今、さすがに考え直すべきこと
パスワードはまさにパスワードが登場した時代の産物であって、デジタル時代の技術とは言い難いことです。 サイバーセキュリティの脅威は、パスワードで保護できる範囲をはるかに超えて進化しており、パスワードは今や役に立たない代物になってしまいました。 たとえ、パスワードの作成方法や、安全な管理方法を正しく実践したところで、もうどうしようもありません。 そのことを明確に示すのが、最近報道されたパスワード漏洩のニュースです。漏洩件数はこれまでで最大規模で、研究者たちは、数百万件どころか数百億件のパスワードがウェブ上に流出していることを発見したのです。
「Cybernews」が2025年6月20日に報じた記事によると、同メディアの研究者たちは今年に入ってから、インターネット上に漏洩していたデータセットを30件、発見しました。 各データセットには「数千万から35億件を超えるレコード」が含まれており、合計すると160億件のパスワードがウェブ上に流出していることがわかったというのです。 それだけではありません。これらのパスワードはすべて、新たに流出したものです。2025年5月に、保護されていないデータベースで見つかった約1億8000万件のパスワードを除けば、これまでのデータ漏洩で報告されていたものは1つもありません。 研究者たちは、数週間ごとに新しい「膨大な」データセットを発見し続けているといいます。つまり、流出はまったく衰える気配がないのです。
研究者たちによると、データの構成から、認証情報が「Infostealer(インフォスティーラー)」を介して盗まれたのはほぼ間違いないようです。 Infostealerとは、デバイスからこの種の機密情報だけを取得するマルウェアです。悪意ある攻撃者は、AppleやGoogle、GitHub、Facebook、Telegram、さまざまな行政サービスなど、主要なアカウントのログイン情報を取得することができたわけです。 ただし、Cybernewsがはっきりと書いているように、これらの企業で情報漏洩が起きたわけではありません。 データベースには、これらの企業のログインページのログインURLが含まれていました。個々のデバイスから取得されたこうしたデータは、おそらくマルウェアを使って盗まれたものでしょう。 一部の認証情報には、ユーザーネームやパスワード以外に、Cookieやセッショントークンなどの情報も含まれていました。 それはつまり、この情報が一部のアカウントの二要素認証を回避するために使われる可能性があるということです。特に、パスワードを変更してもCookieがリセットされないアカウントは、注意が必要です。 この記事の中にわずかな希望があるとすれば、160億件のパスワードが漏洩したからといって、それが160億件の個人レコードというわけではないことです。 一部重複するものがあるのです。ただし、どれくらい重複しているかはわかりません。漏洩の被害を受けた個人アカウントは、160億件より少ないと言って差し支えありませんが、正確な件数を知ることが難しいのも事実です。
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あなたのアカウントが1つのパスワードだけで守られていて、しかも、しばらくパスワードを変更していないとしましょう。 その場合にまず考えられるのは、攻撃者が、流出したこのパスワードのデータベースを使って、あなたのアカウントにアクセスする可能性があることです。 しかし、それだけではありません。前述したように、漏洩したCookieとセッショントークンは、より脆弱な二要素認証を使うアカウントへの侵入に利用される可能性があります。 あなたがパスワードを変更しても、アカウントでCookieがリセットされない場合、攻撃者は二要素認証システムをごまかして、正しいコードや認証情報が提供されたと思い込ませることが可能です。 また、この情報をフィッシングに使うこともできます。 ハッカーは、あなたのパスワードを使って二要素認証コードを生成させます。そして、コードがあなたの手元に届いたら、おそらくはそのアカウントを管理する企業を装い、そのコードを提出させるようにします。 コードを送れば、攻撃者はあなたのアカウントにアクセスできるようになります。
これからは、パスキーをもっと真面目に取り入れるべきです。パスキーはパスワードと異なり、盗まれるリスクがありませんし、攻撃者があなたを騙してパスキーを送るよう仕向けることもできません。 この技術は、スマートフォンなど、あなたが個人的に所有するデバイスに紐づけられており、強力な認証で守られています。その個人のデバイスで顔や指紋をスキャンしたり、PINを入力したりしない限り、誰もあなたのアカウントに入ることはできないのです。 パスキーは、パスワードと二要素認証の長所を合わせ持っています。便利な点は、スマートフォンですぐに本人証明ができることです(パスワード・マネージャーで自動入力するのと同じですね)。 ただし、アカウントに入るには、その個人のデバイスをあなたが持っている必要もあります。二要素認証でログインする際に必要な、2番目の認証の仕組みと同様です。 パスキーを認証方式として取り入れる企業はどんどん増えており、Apple、Google、Facebook、Microsoft、Xなどが採用しています。 あなたのアカウントがパスキーをサポートしているなら、設定することを強くおすすめします。そうすれば、来たるべき次のデータ漏洩が起こったときも、守られるはずです。