科学が教える「長生きのルール」7選、健康寿命で5年以上の差も

専門家によれば、寿命を延ばすための最良の方法は運動だという。例えばヨガは、細胞の老化を遅らせ、運動能力やバランス感覚、精神衛生、認知機能の低下を抑えるという研究がある。(PHOTOGRAPH BY ANDY RICHTER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

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 人間は昔から長寿に執着し、死から逃れようとしてきた。この40年で、科学における画期的なブレイクスルーが次々ともたらされた。最近では、永遠の若さを夢見る健康志向の「バイオハッカー」(体や生活習慣や環境を最適化して健康になる手法「バイオハック」を行う人々)たちが自ら志願して実験台になり、免疫抑制剤などとして使われるラパマイシンを服用したり、「若い血」の血漿輸血を受けたりしている。

 アンチエイジング産業も活況を呈している。非営利団体グローバル・ウェルネス・インスティテュートによれば、平均的な米国人は、健康維持のために年間6000ドル(約87万円)以上費やしている。

 科学者たちが老化の解明に近づいているのは本当だが、巷には誤った情報があふれている。先駆的な心臓専門医で、世界有数の論文被引用回数を誇る科学者でもあるエリック・トポル氏は、こうした誤解を正すために、『Super Agers: An Evidence-Based Approach to Longevity(スーパーエイジャー:エビデンスに基づく長寿へのアプローチ)』を書き上げた。

「科学は私たちに、寿命を延ばすだけでなく、老化を逆転させることも可能だと教えています」と、米スクリプス研究所橋渡し研究機関の創設者兼所長であるトポル氏は言う。「長寿の科学が猛スピードで進歩する一方で、それを食い物にする者たちも集まってきて、効果が証明されていなかったり、潜在的に危険だったり、お金の無駄にしかならないような製品やサービスを売り込んでいます」

 ナショナル ジオグラフィックは、加齢に革命を起こすテクノロジーや、この分野に広まっている疑似科学、私たちの健康を一変させるかもしれない強力なバイオハックについてトポル氏に聞いた。

 人々の死への恐怖につけ込むニセ医者や健康インフルエンサーがはびこる中、トポル氏は私たちに、より良く老いるためのガイドブックを授けてくれる。(参考記事:「健康長寿 科学で老化を止められるか」

1. 遺伝子ですべてが決まるわけではない

 身内にがんや心臓病やアルツハイマー病になった人が複数いると、その遺伝子を受け継いでいる自分も同じ宿命を背負っているように感じられてしまうかもしれない。しかしトポル氏によると、遺伝子は人間の長寿に約20%しか寄与していないことが研究から明らかになっているという。

 残りの80%は? 生活習慣の選択と、生活環境と、環境要因だ。

「健康的な加齢にとって、遺伝はあまり関係ありません」とトポル氏。「あなたには大きな力があるのです」

 すべては遺伝で決まると思い込んでいるせいで、健康的な生活習慣を取り入れない人が多いとトポル氏は言う。しかし、科学的なデータに裏付けられた生活習慣を身につければ、少なくとも5年から7年は健康寿命を延ばせることが示されている。(参考記事:「あなたの「本当の年齢」は? 老化の度合いはやはり顔でわかる」

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