半導体メーカーの「悲喜こもごも」 絶好調のTSMC、人員削減のST
2025年4月7日週は、半導体メーカーの“景気”が見て取れる動きが見られた。まずTSMCは同年第1四半期の売上高が前年同期比42%増の250億米ドルに達したと発表した。その一方でSTMicroelectronics(以下、ST)は、同社の製造拠点と従業員の再編を全社的に実施することを明らかにした。またInfineon Technologies(以下、Infineon)は、Marvell Technology(以下、Marvell)の車載イーサネット事業部門を25億米ドルで買収すると発表している。
STは2025年4月、同社の世界製造拠点の全社的な再編と、それに伴うコストベースの規模調整を行うとの声明を発表した。これによって主に2026~2027年に従業員約2800人が削減される予定で、その大半が希望退職になる見込みだという。 STのプレジデント兼CEOであるJean-Marc Chery氏は「今回の改革は、欧州において、われわれの戦略的資産を活用した垂直統合型デバイスメーカー(IDM)モデルを将来的に維持していくための取り組みの一環だ」と述べている。 「われわれは、高度な製造インフラと主流技術に注力することで、引き続き既存の全ての製造拠点を活用し、そして一部の拠点についてはミッションを再定義することで、その長期的な成功を支援していく。長年にわたり構築してきた価値に基づいて責任を持ってこのプログラムを管理し、自主的な取り組みを実行する。イタリアとフランスにおける技術研究開発や設計、量産活動は、引き続き当社のグローバル事業の中核であり、主流技術への計画投資によってさらに強化していく予定だ」(Chery氏) この取り組みの目的は、300mm/200mm 炭化ケイ素(SiC)ウエハー工場のインフラに対する計画投資を最優先することや、既存の150mmと成熟した200mmの設備の生産性/効率性を最大化することだ。またSTは「事業全体で採用している技術のアップグレードにも引き続き投資し、持続可能性への注力を継続しながら、技術研究開発や製造、信頼性、認定プロセスのさらなる効率化に向け、AI/オートメーションを追加導入していく」としている。 製造に関しては、STの製造拠点では今後3年間、フランスではデジタル技術、イタリアではアナログ/パワー技術、シンガポールでは成熟技術に注力していくという。 STは、イタリアのアグラーテにある300mm工場を、スマートパワー/ミックスドシグナル技術向けのフラグシップ量産工場とすることを目指している。2027年までには生産能力を2倍に高め、ウエハー処理枚数は1週間当たり4000枚を実現できる見込みで、市場状況に応じて最大1万4000枚まで増強可能だという。そしてアグラテの200mm工場はMEMSに注力していく予定だ。 フランスのクロルにある300mm工場は、STのデジタル製品エコシステムの中核として強化される。2027年までに生産能力を1万4000枚/週まで増強する計画で、市場の状況に応じて拡張し、最大2万枚/週まで増強できるという。さらに、クロルの200mmファブは電気的ウエハーソーティング(EWS)による量産と先進パッケージング技術のサポートに向けて改修し、「これまで欧州にはなかったような生産活動の拠点となる」(ST)という。特に、光センシングやシリコンフォトニクスなどの技術に注力するという。 イタリアのカターニャは引き続き、パワー半導体およびワイドバンドギャップ半導体デバイスの生産拠点となる。新しいSiCキャンパスの展開は計画通り進んでいて、2025年第4四半期に200mmウエハーの生産を開始する予定だ。現在カターニャの150mmおよびEWS生産能力をサポートしている同社のリソースは、GaN-on-siliconを含む200mm SiCおよびシリコン(Si)パワー半導体の生産に再注力する予定だという。 他の拠点に関しては、フランスのルセ拠点は引き続き200mmの製造に注力し、他の工場からの追加生産を再配分することで、既存の生産能力を最大限に活用して、効率を最適化する。同じくフランスのトゥール拠点は引き続き、特定技術向けの200mm Si製造ラインに注力し、従来の150mmの製造を含むその他の生産活動はSTの別の拠点に移管して、主にエピタキシャル成長に関する窒化ガリウム(GaN)のコンピテンスセンターとしても存続する。また、トゥール拠点では新たな生産活動として、チップレットの重要技術であるパネルレベルパッケージングの拠点になるという。STは「これは将来的に当社の主要技術になる」としている。 シンガポールのアンモキオはSTの成熟技術向けの量産工場で、引き続き200mm Siの製造に注力するとともに、150mm統合Siの生産拠点とする。マルタのキルコップはSTの欧州における量産テストおよびパッケージング工場で、高度な自動化技術を追加してアップグレードを図るという。