オープンソースに匹敵する大変革「オープンソーシャル」が徐々に広がり中、自分のデータを使い回して色んなウェブサービスを使える仕組み

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X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSではユーザーのデータが各運営企業によって管理されており、「投稿内容やフォロー情報などを保ったまま別のサービスに引っ越す」という操作は不可能です。この状況を打破するべく各ユーザーが自分のデータを自分で管理できる「オープンソーシャル」という仕組みが整いつつあるとして、MetaやBlueskyで活躍してきたダン・アブラモフ氏がオープンソーシャルの仕組みや利点を解説しています。

Open Social — overreacted

https://overreacted.io/open-social/

アブラモフ氏はMetaでReactの開発に携わっていた人物で、2023年頃にMetaを退職してBluesky開発チームに加わり、Blueskyのクライアントアプリの開発を推し進めてきました。その後、2025年夏頃にBluesky開発チームを離れ、記事作成時点ではUIエンジニアリングに関するコンサルティングなどをして過ごしているとのこと。GIGAZINEでは2024年9月にBluesky開発チームの一員だった頃のアブラモフ氏に取材を実施しています。

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アブラモフ氏の言う「オープンソーシャル」とはプロプライエタリソフトウェアに対するオープンソースソフトウェアのように、閉じた世界で動作する既存のSNSに対して、共通の規格に基づいて動作するSNSを指しています。SNSの構築に使えるオープンプロトコルはMastodonなどの基盤となっているActivityPubや、Twitter創業者のジャック・ドーシーが開発に深く関係しているNostrなど複数存在しますが、アブラモフ氏は「自分はBlueskyのクライアントアプリの開発に関わっていたのみで、プロトコルの設計には関わっていなかった」と前置きしつつ、Blueskyの基盤となっているオープンプロトコル「AT Protocol」を「オープンソーシャルの好ましい一例」と絶賛し、その仕組みと利点を解説しています。

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オープンウェブは昔ながらのウェブ環境を現代のSNS社会に復活させるものといえます。SNSやブログが流行するより前は、各個人が自分でウェブサイト(ホームページ)を開設し、ウェブページに文章や画像などのコンテンツを配置したり、他人のウェブサイトにリンクしたりしていました。こうしたウェブサイトは「ホスティングサービスがサービス終了してしまった」とか「ホスティングサービスのポリシーが自分に合わないものに変化した」といった事態が生じた際にコンテンツやリンク情報を保ったまま別のホスティングサービスに乗り換えることができました。

しかし、SNSでは投稿した文章や画像やフォロー情報などは各運営企業によって管理されており、データを保ったまま別のSNSへ移行することは困難になってしまいました。

AT Protocolの大きな特徴は「ユーザーのデータをユーザー自身が管理できる」という点です。

各ユーザーは「サービス内だけで使えるハンドルネーム」ではなく「各ユーザーの固有のドメイン」を用いてデータを管理できます。例えば、GIGAZINE公式アカウントの場合は「gigazine.net」というドメインを用いています。

Blueskyではアカウント作成時に無料のサブドメインが発行されるようになっており、技術に詳しくない人でも従来のSNSと同じような使い心地でサービスを利用できます。以下のユーザーの場合、アカウント作成時に「testkun.bsky.social」というサブドメインを無料で取得しています。

各ユーザーは投稿内容やフォロー情報を自分の管理下に置いているため、Blueskyに不満が生じた場合は各種情報を保ったまま「Blueskyと同様のサービスを展開するAT Protocol対応サービス」に移行することができます。

また、AT ProtocolはSNS以外のサービスの構築にも利用可能で、既にブログサービスの「WhiteWind」やコード管理サービスの「tangled」といったAT Protocol対応サービスが稼働しています。これらのサービスへの投稿内容やお気に入り情報などはユーザーの管理するデータリポジトリにどんどん追加されていきます。

AT Protocolは基本的にすべての情報を公開情報として扱うように設計されています。このため、各種AT Protocol対応サービスは他サービスで作成されたユーザーの情報を参照することができます。これにより、「tangledの利用を開始した直後からBlueskyと同じプロフィールやアバター画像を表示する」といったことが可能になります。また、Bluesky用のサードパーティーアプリがBluesky以外のサービスの情報に対応することも容易です。

記事作成時点ではXやFacebookといった「企業によって管理されるSNS」が多くのシェアを獲得している状況です。このため、アブラモフ氏は「オープンソーシャルは、しばらくは苦労をいとわず活動する頑固な熱狂的ファンたちのコミュニティに依存することになるでしょう」と指摘。その上で「オープンソースと同様にオープンソーシャルも相乗効果を生みます。あるオープンソーシャルアプリが成功すれば、他のオープンソーシャルアプリにも貢献することになります。いずれオープンソーシャルは勝利を収めることになるでしょう」と述べ、将来的にオープンソーシャルが一定の地位を得ることになると予言しています。

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