DeepSeek登場によるボラティリティー高まり、IPO回復の壁に
中国の人工知能(AI)スタートアップ企業DeepSeek(ディープシーク)の登場が米国のテクノロジー株を急落させたことで、既に慎重な投資家が新興企業の新規株式公開(IPO)への参加に一段と懐疑的になっている。調査会社ピッチブックのリポートが示した。
ピッチブックが24日発表したリポートによると、ベンチャーキャピタル(VC)が出資している企業のIPOは過去3年間停滞しており、ペースは2011年以来の低水準となっている。株式市場のボラティリティーが急上昇したことで、すでに疑問視されていたIPO回復への期待がしぼむ可能性がある。
投資家は、米国の競合企業よりも安価でエネルギー効率が良いとみられる中国のAIモデル「DeepSeek」の出現に動揺した。27日にナスダック100指数からはほぼ1兆ドル(約154兆円)が消失した。
ピッチブックの主任VCアナリスト、カイル・スタンフォード氏は、ボラティリティーの高まりは「VCの支援を受ける企業の多くが納得できる条件でIPOを通じて公開市場にアクセスすることを一層困難」にするもので、今回の株価急落はそうした「ボラティリティー要因の強力な例だ」と指摘した。
ピッチブックはリポートで「友好的でない出口環境」の中で株式公開を待つ未公開企業が「山積み」になっているため、25年前半のIPOの見通しは暗いと警告した。今年1-6月(上期)のIPO完了件数は21件と予想しており、ここ数年の緩慢なペースと変わらない。
「IPO株に投資される資金は限られており、VCの出資先企業は厳しい状況に挑まなければならず、評価額に対する期待値を下げざるを得ない可能性もある」とスタンフォード氏は述べた。
リポートで取り上げられたIPO候補企業トップ10のうち5社は、ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS、サービスとしてのソフトウエア)、AI、フィンテックなど、DeepSeek登場で株価急落に見舞われたテクノロジー関連分野の企業だ。
「VC支援企業は既に株式公開に懐疑的になっているため、公開の動きを再び軌道に乗せるには、より穏やかな状況が必要だ」とスタンフォード氏は付け加えた。ピッチブックのリポートによると、トランプ政権が課す関税も、IPO株に対する投資家の意欲を抑制する可能性がある。
「IPOまたはM&A(企業の合併・買収)による大型の出口戦略がなければ、25年はVC投資家およびVCファンドへの投資家にとって4年連続の低リターンの年になるだろう」とスタンフォード氏は述べた。
ただ、ピッチブックは25年7-12月(下期)には活動が緩やかに回復し、30-40件のIPOが完了すると予測している。
原題:Tentative IPO Rebound Threatened by DeepSeek-Fueled Volatility(抜粋)