かつてIBMのThinkPad 701は9.7インチ幅なのに11.5インチのフルサイズキーボードをバタフライ構造で可能にしていた
1995年に発売された初期のThinkPad「ThinkPad 701」は、9.7インチのケースに11.5インチのキーボードを収納していました。どのように収納していたのか、なぜこのようなデザインになったのかについて、テクノロジーエディターのハリー・マクラッケン氏が解説しています。
This IBM ThinkPad was astounding in 1995—and still is - Fast Company
https://www.fastcompany.com/91356463/ibm-thinkpad-701-butterfly-keyboard 「ThinkPad 701」の動作は、発売当時放送されたCMで確認できます。画面を開くと、内部に収納されていたキーのうち35個が左側に、49個が右側に滑り出し、ボディーからはみ出すようにキーボードが完成します。IBM ThinkPad 701 Commercial (1995) - YouTube
ThinkPad 701の機構は画期的で、当時は「1995年に最も売れたラップトップである」などと報じられたこともありましたが、発売から1年足らずで製造が中止されてしまったといいます。
当時のノートPCは2020年代のノートPCと比べて圧倒的にベゼル幅が大きく、キーボードを収めやすいようにしていました。ところが、ノートPCのディスプレイサイズに加えてキーボードの幅が小さいという不満が少なからずあったため、IBM社内で展開型キーボードのアイデアが持ち上がったそうです。 この問題に取り組んだ人物の1人が、IBMの研究員だったジョン・カリディス氏でした。ある日、カリディス氏が娘と木製の積み木で遊んでいたところ、「2つの三角形のブロックをスライドさせると、アスペクト比が違う長方形になる」という気づきを得て、キーボードを分割してスライドするというアイデアをひらめいたとのこと。 初期のThinkPad開発に携わり、記事作成時点でレノボ・ジャパンの取締役副社長を務めている内藤在正氏によると、カリディス氏のアイデアを推し進めたのは当時IBM幹部だったティム・クック氏だったそうです。
1995年3月6日、ついに登場したThinkPad 701は、「キーボードは魅力的だが、プロセッサが古い」などとキーボードに関係のない部分が批判されたり、一方で「真の宝石のようなPC」と絶賛されたりしました。 マクラッケン氏は「IBMはどちらかというとビジネスライクなブランドであり、ThinkPadシリーズは実用的な面を積極的に押し出していました。ところが、ThinkPad 701は実用性に加えて面白ガジェットのような売り出し方もされ、『ジェームズ・ボンドがこれを持ち歩くでしょう』といったCMも打たれました」と解説しています。 ディズニー・ワールドのエプコット・センターで撮影された以下のCMでは、IBMの従業員がThinkPad 701の機能について説明する様子や、キーボードに感銘を受けたテーマパークの訪問者を見ることができます。
IBM Thinkpad 701 promotional video - YouTube
ThinkPad 701は27のデザイン賞を含む評価を得て、ニューヨーク近代美術館にも展示されましたが、わずか9カ月足らずで製造が終了していしまいました。マクラッケン氏は製造終了の理由として「いくつか考えられますが、開発が遅れて搭載チップが古いものになってしまったのが原因の1つでしょう」と説明しています。 1995年にThinkPadのデザインチーフに就任し、10年後にIBMがPC部門をLenovoに売却した後もその役割を続けたデヴィッド・ヒル氏は、ヒル氏の元を訪れた人へ見せるためにThinkPad 701を持ち続けているそうです。ヒル氏は「あれを取り出して人に見せると、いつも同じ反応があるんです。静寂が流れ、誰かが『もう一度やってくれ!』と言うのです。製造終了後も復活させようという試みが何度かありましたが、そこまでの力を得ることはできませんでした」と語りました。
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