これは、本当に生物だったのか…あまりに小さすぎる「火星の芋虫」が起こした「地球外生命への期待」(小林 憲正)
火星隕石中の生命の痕跡については、いまだ評価は分かれ、定まっていません。しかし、さらにくわしく調べるには火星探査が必要であるということでは、意見は一致しました。NASAは新たな学問領域の名称として「アストロバイオロジー」を掲げ、1998年にNASAアストロバイオロジー研究所(NAI)を設立して宇宙と生命の問題に積極的に取り組むことを表明しました。
欧州でもこれに呼応して、2001年に研究者ベースでアストロバイオロジーを推進するための組織として「欧州アストロバイオロジーネットワーク協会」(EANA)を設立しました。
なお、NASAはアストロバイオロジーを「宇宙(地球も含む)における生命の起源・進化・分布と未来を探る」と定義しています。それまで「圏外生物学」とよばれていたものとほぼ同じですが、あえて「未来」を加えたところが新しいといえます。
火星には水も有機物もあった
さっそくNASAは、下火になっていた火星探査を再開しました。今度は、ヴァイキングのときの反省に立って、一足飛びに生命探査に向かうのではなく、足下を固めながら進んでいくという戦法を採りました。地球型の生命が誕生し、生存するためには液体の水が不可欠です。
そこで、火星にはかつて液体の水があったのか、現在もあるのか、あるとしたらどこにあるのかを探ることにしたのです。掲げた標語は「水を追え」(Follow the Water!)でした。
ヴァイキング着陸機は降りた地点周辺の土壌しか調べられませんでしたが、ローバー(ロボット探査機(車両)。ランダーに比べ、より広範囲に探査できる。写真「オポチュニティ」参照。)を使うことにより、さまざまな場所での分析が可能になりました。
やがて2008年には、高緯度地点を調べていたフェニックス・マーズ・ランダーが表土をすくったところ、水が凍結した氷と思われる白い物質が見つかりました。ほかにも次々と成果があがったことで、過去には火星に大量の水が存在したこと、その一部は地下に氷として残されていることが確実となりました。