山本由伸が"最善"を尽くす深い理由 自問自答した「人生とは?」…50日間で見せた素顔

 最後に見つめた瞳は、ちょっぴり切なかった。ドジャースの山本由伸投手は8日(日本時間9日)、敵地で行われるダイヤモンドバックス戦での先発登板を予定。今季初めて登板間隔を中5日に詰めたマウンドで、5勝目を狙う。

【画像】由伸同僚の美人妻は「ハリウッド女優レベル」 黒コーデから胸元露わでファン興奮

「調子が良い、悪いはあんまりないと思います。この感じがずっと続くのがシーズンなので、まずは1年間、投げ切ることが大切。それが最初の目標になります。日程を見ても、ここから連戦が続いていくので、体調管理をしっかりしていきたいです」

 時折、無邪気な表情も見せる26歳だが、一喜一憂はしない。マイアミで“最後の挨拶”を交わした時も、そうだった。3月中旬に行われた東京ドームでのメジャー開幕戦から「ドジャースの山本由伸投手」を追いかけた。3月下旬に渡米してからは約50日。長期出張の最終盤、パッと目を合わせた山本は、いつもの笑顔で言った。

「あと何日ですか? 『もう帰りますフェイス』してるじゃないですか〜(笑)。1人で航空券とかホテルとかの予約だったり、大変だったでしょ? 毎日球場に到着するのも精一杯だったんじゃないですか?」

 静かなクラブハウスで、穏やかに会話を進めてくれる。気がつけば出会って6年以上が経つが、内心ではまだ慣れない。今でも目を見て話すと緊張が走る。何気ない一言が、後からズッシリと来るから、いつか聞いた言葉がいつも鮮明に残っている。

「緊張って2種類あると思うんですよね。僕は『良い緊張感』と『悪い緊張感』の2つに分けています。良い方は必死に不安と戦っているんです。良い緊張感は死ぬほどドキドキするけど、実力以上のパフォーマンスを出せるもの。悪い方はテンパって汗が止まらない。どうしようもないって気がついた瞬間のものです」

 だからこそ、日々の練習から手を抜くことがない。「本番のマウンドで最高のパフォーマンスを発揮するには、たくさん練習して、自信を深めるしかありません。そうすれば少し不安な気持ちになっても、そのゾクゾク感は自分の力に変えられます」。

「日本に帰ったらもう誰も覚えてくれてませんよ(笑)。また会いましょうね、どこかで」

 オリックス在籍時から、数々の名場面を見届けさせてもらった。今年、アメリカに来てからも、また新しい一面を教えてくれた。アイスコーヒーはブラックが好きなこと、ユンケルを1日1本飲むこと、コンタクトレンズは鏡を見なくても装着できること。昨季、怪我をしてしまった期間に「人生とは?」「生まれ変わったらどうなりたい?」と自分に問いかけたこと……。どんな些細なことも丁寧に言葉を紡ぐ。そんな26歳が、心に決めていることがある。

「好きなものをたくさん食べて、好きなだけ眠って、好きなことに夢中になること。その世界に入り込めば、もう勝ちです」

 異国で奮闘するエースの“素顔”に寄り添えた。「こんなに長い期間アメリカに居たら……日本に帰ったらもう、誰も覚えてくれてませんよ(笑)。また会いましょうね、どこかで」。どんな言葉も身に沁みる、幸せな50日だった。

(真柴健 / Ken Mashiba)

関連記事: