恐竜の卵の殻を直接測定、驚くほど正確な恐竜の新たな年代測定法、今後の可能性に期待大(ナショナル ジオグラフィック日本版)
恐竜の卵を手がかりに年代を測定する新たな方法が見つかった。はるか昔に卵の殻に取り込まれた放射性鉱物から、その卵がいつ産み落とされたものなのかを判断できるという。この手法を使えば、古代の生態系の年代をこれまでよりも正確に特定できる可能性がある。 ギャラリー:見事な卵の化石も、決定版!奇跡の恐竜化石たち 写真23点 11月10日付けで学術誌「Communications Earth & Environment」に発表された研究は、化石化した卵の殻には年代を直接測定する手がかりとなる鉱物が含まれているという、近年注目されているこの説をさらに補強するものだ(2025年9月には中国の研究チームが、化石に含まれる方解石を手がかりとして卵の年代を測定した研究結果を発表している)。 「古生物学者は、化石を掘って研究することで地球上にいた生命の歴史の再構築を試みますが、年代を持たない物語は、無意味であるどころか誤解を招く恐れもあります」と、今回の論文の共著者で、米ノースカロライナ自然科学博物館の古生物学者のリンジー・ザンノ氏は言う。「時間と空間の文脈から切り離された化石は、何の役にも立ちません」
地質時代の年代区分はこれまで化石が埋まっている岩石を基準に定められてきた。たとえば、古代の火山が溶岩や灰を噴き出したとき、その噴出物にはウランなどの放射性鉱物が含まれていた。 ウランは時間の経過とともに一定の速度で鉛に変化する。この変化の速度を示す指標として「半減期」という言葉が使われることもある。そのため、地質学者たちは何十年も前から、岩石試料中に含まれるウランと鉛の比率を調べ、その岩石がどのくらい前に形成されたものかを算出してきた。 厄介なのは、多くの化石が、そうした放射性鉱物を含まない堆積物の中から見つかるという点だ。 ある恐竜について、専門家が「これは7500万年前のものです」と言う場合、それは通常、その恐竜の化石が「正確な年代を測定できる火山灰層などを含む岩石層と近接した7500万年前の地層から見つかった」ことを意味する。あるいは「その化石が、年代を測定できる7500万年前の火山灰層と関連して発見された別の化石と似ている」という場合もある。 恐竜の化石が、火山灰や凝固した火山岩を多く含む地層から見つかったのでない場合、古生物学者にできるのは、そのおおよその年代を推定することだけだ。モンゴルのゴビ盆地で見つかった有名な保存状態のよい化石、たとえば広く知られているベロキラプトルの化石などは、この範疇に含まれる。地質学的な時間を直接測る手段がないため、その正確な年代はいまだ不確かなままだ。 「北米やアジアには、卵の殻や骨が埋まっている重要な化石産地がありますが、火山灰層がないため、正確な年代は測定されていません」と、カナダ、カルガリー大学の古生物学者ダーラ・ゼレニツキー氏は言う。 恐竜の卵殻はそう頻繁に見つかるものではないが、「ウラン―鉛(U-Pb)年代測定法」を用いれば、「実際に卵殻が見つかったときに、化石産地の年代、特に火山灰層が存在しない産地の年代を特定する手がかりになります」とゼレニツキー氏は指摘する。