ゲーム開発者の「力業実装テクニック紹介」が賑わう。鏡の反射用に“キャラと背景そのままコピー”などかなり大胆

Image Credit: Shesez on YouTube

ゲーム開発の現場においては、技術・コストなどの観点から本来実装が難しいメカニクスや表現が、さまざまな工夫によって実現される例も多々存在する。今回、ゲーム『The Walking Dead』におけるとある工夫が紹介され、SNS上で注目を集めている。開発者や業界人が別の“力業実装”を紹介し合う流れも発生しているようだ。

『The Walking Dead』は同名のコミックを原作としたアドベンチャーゲーム。DCコミックス作品のゲーム化などで知られるスタジオ・Telltale Gamesが2012年にリリースし、2019年にかけて4シーズンにわたって展開がおこなわれた。シーズン1の主人公のリー・エヴェレットは妻の不倫相手を殺した罪で捕まるが、警察に護送されている途中、車両は交通事故を起こしてしまう。しかし目を覚ますと世界はウォーカーで溢れかえっており、命からがら脱出。その後リーはクレメンタインという名の少女と出会い、ともにゾンビアポカリプスを生き延びるために奔走する。

7月27日にコンテンツクリエイターのShesez氏がXに投稿したポストでは、本作シーズン1の冒頭のシーンに施された工夫が動画で紹介されている。主人公を乗せた警察車両のルームミラーには、運転しているアトランタの警察官の顔が反射しているように見えるが、実はこのルームミラーは実際に風景を反射しているわけではない模様。警察官の上半身と車の内装の一部、そして筒状に切り出した背景の木々が車両前方に配置されており、プレイヤーはそれらをルームミラーの形をした穴を通して覗き見ているにすぎないようだ。

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なお元となった動画は、Telltale Gamesで本作シーズン1のプロジェクトリーダーを務めていたJake Rodkin氏が2018年に旧Twitterに投稿していた動画とみられる。運転手の上半身が車のボンネットに乗せられているという、外から見るとなんとも滑稽な見た目。疑似的に反射を表現した“力業”とも呼べるテクニックが明らかとなり、ユーザーからは驚きの反応が寄せられている。

こうした実装がおこなわれた背景には、当時の技術的な制約が存在するようだ。3Dゲームが急速に進化していった1990年代後期から2010年代初頭にかけて、反射を再現するさまざまなレンダリング技術が出現。風景の画像を貼り付けることで疑似的に反射を表現する「環境マッピング」にはじまり、リアルタイムの反射表現としては、シーン全体を反転させて描写する「平面反射」や、画面に映った情報から反射を計算する「スクリーンスペース反射(SSR)」などが登場した。ただし、動的な反射表現は処理負荷が高く、ハードウェア的な限界や実装の難しさなどから利用が避けられる状況もあった模様。そうしたなかで、特に半透明な床などを用いた場合には解像度を落としたテクスチャを利用しやすいということもあり、モデルを物理的にコピーして配置する手法は裏技的に多用されていたそうだ。

Your grandpa's RTXIn the earlier 3D era reflections like that were often made using a semitransparent floor, duplicated geometry and blurry textures

This approach had its limitations, but in my view it achieves much better results than any screen space solution#lowpoly #bnpr pic.twitter.com/sNHuWhoIWV

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