エヌビディア、見通し「物足りない」とアナリスト-時間外で株価上昇

人工知能(AI)支出ブームの中心的存在である半導体メーカー大手、米エヌビディアが26日発表した決算は底堅いものの、傑出した内容ではなかった。このため、投資家の反応は鈍いものとなった。

  発表資料によると、2-4月(第1四半期)売上高は約430億ドル(約6兆4400億円)を見込む。ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均は423億ドルで、最高480億ドルの見通しもあった。

  同社はまた、次世代AI半導体「ブラックウェル」の展開を急ぐため、粗利益率が予想よりもタイトになると警告した。さらに、米国の関税が業績を圧迫するリスクもある。エヌビディアの株価は米国時間27日早朝の時間外取引で前日終値を挟んで上下にもみ合った後、約1%上昇している。

  AI業界にとって今は不安定な時期にある。エヌビディアの株価は今年、データセンター事業者が支出を減速させるとの懸念から下落。中国のスタートアップ、ディープシーク(DeepSeek)も、チャットボットが安価に開発できるようになり、エヌビディア製AI向け強力チップの必要性が低下する可能性があるとの懸念を生じさせた。

  エヌビディア幹部はこれらの問題のほとんどに対処したが、同社が衝撃的な好業績を上げることは難しくなっている。

  エドワード・ジョーンズのアナリスト、ローガン・パーク氏はリポートで、「ガイダンスはやや物足りないものだった」と指摘。ただ、先に生産遅延が伝えられたブラックウェルの早期販売により、投資家の懸念は和らぐだろうと話した。

  昨年11月-今年1月(第4四半期)のブラックウェル売上高は110億ドルで、エヌビディアは同社の歴史で「最も速い製品立ち上げ」だと説明した。「ブラックウェルの需要は驚くべきものだ」とジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は発表資料でコメントした。

   11月-1月期の売上高はアナリスト予想を上回ったものの、その差は2023年2月以来最小だった。一方、ブルームバーグがまとめたデータによれば、利益の上振れ幅は22年11月以来最も小さかった。

  23、24両年の株価急伸を受け、同社は世界で最も価値のあるチップメーカーとなったものの、株価は今年に入り2.2%下落していた。

  エヌビディアはAI投資急増の最大の受益者であり、過去2年間で売上規模を倍増させている。大手テクノロジー企業の多くは、データセンターのハードウエアに多額の資金を注ぎ込んでおり、エヌビディアはAIソフトウエアを作成・実行するプロセッサの圧倒的な販売業者だ。

  11月-1月期の売上高は393億ドルに増加。これは予想平均とほぼ同じだったが、一部予想は420億ドルに上っていた。直近の四半期売上高は2年前のエヌビディアの年間売上高270億ドルを上回り、同社の急成長を裏付けた。

  一部項目を除いた1株当たり利益は89セント。ウォール街は84セントを予想していた。

  フアンCEOはアナリストとの電話会議で、「25年には力強い成長を遂げるだろう」と語った。

  エヌビディアの最大の収益源であるデータセンター部門の売上高は356億ドルと、予想平均の341億ドルを上回った。かつて同社の中核事業であったゲーム関連の売上高は25億ドルとなった。アナリスト予想平均は30億2000万ドル。自動車関連は5億7000万ドルだった。

  決算に先立ちアナリストは、データセンター顧客を対象とするエヌビディア最大の事業の当面の成長について懸念を表明していた。供給制約とブラックウェルへの移行が成長を鈍らせるかどうかが大きな疑問だった。新技術は一段と洗練されており、製造上の課題をもたらす。

  また、ディープシークは作成に必要なリソースがはるかに少ないとする強力なAIモデルを発表し、懸念に拍車をかけた。1月終盤の発表を受け、AI関連銘柄は広範な売りを浴びた。エヌビディアの時価総額は1月27日の取引で5890億ドル減り、米企業1銘柄の1日当たりの減少額としては過去最大を記録した。

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  しかし、マイクロソフトなどエヌビディアの主要顧客は設備投資計画を維持しており、AIへの支出急増が今後も続くことを示唆している。

  フアンCEOは電話会議で、ディープシークがAIへの新しいアプローチへの関心を促し、エヌビディア製品への需要を拡大すると論じた。ディープシークのモデルは微調整に依存するため、他のソフトウエアの「ワンショット」トレーニングよりも多くのコンピューティングセッションが必要になると述べた。実際、このアプローチには現在の何百万倍ものコンピューティングパワーが必要になるかもしれないとしている。

  ブラックウェルはこれらのコンピューティングタスクを処理するのに役立つ見通しだが、その展開にはコストがかかっている。エヌビディアによれば、製品を市場に投入するための費用が利益率を圧迫している。

  コレット・クレス最高財務責任者(CFO)は、同社がサプライチェーンを改善することでコスト削減が可能になると話した。2-4月期の粗利益率見通しは約71%と、アナリスト予想平均を1ポイント程度下回った。年末までに「70%台半ば」に戻ると見込む。

原題:Nvidia Sees Mixed Outlook After Two Years of Blowout Results (1)(抜粋)

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