3Dプリンター自作銃「ゴーストガン」はどこまで進化したのか?

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3Dプリンターで部品を出力して組み立てるだけで製造した銃は、政府に登録されていないことから「ゴーストガン」と呼ばれます。2013年頃から自作銃を追ってきた記者のアンディ・グリーンバーグ氏が、3Dプリンターで自作できてしまうゴーストガンについてムービーで解説しています。

I 3D-Printed Luigi Mangione’s ‘Ghost Gun’ | WIRED - YouTube

2013年に登場した「リベレーター」と呼ばれる銃は、世界で初めてすべての部品を3Dプリンターで出力可能な銃でした。

2024年12月、アメリカ医療保険大手であるユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソンCEOを殺害したルイージ・マンジョーネ被告は、インターネット上で入手した設計図を基に自作したプラスチック製の銃で犯行に及びました。

アメリカでは、連邦政府や各州が3Dプリント銃の規制を進めており、2022年にはバイデン政権がキット販売に対してシリアル番号と身元確認の義務を導入しました。ただし、フレームを個人でプリントして他の部品を組み合わせる場合は、多くの州で依然として合法です。

銃として法的に定義されるのは「フレーム」部分のみ。つまり、3Dプリンターでフレームを自作し、市販のパーツで組み立てれば、法規制を回避可能。

グリーンバーグ氏は、今回すべての部品とプリンターをオンラインで購入し、マンジョーネ被告が使用した銃と同じものを作成。合計費用は約1145ドル(約16万7000円)だったそうです。

プリントには約13時間を要しましたが、かつてのような不安定な素材ではなく、商業品のように高品質。リベレーターが登場した頃と比べて技術の進歩が顕著です。

グリーンバーグ氏はYouTuberの「Print Shoot Repeat」と共に銃を組み立てました。Print Shoot Repeatは「購入できないユニークな銃が作れる」ことや「匿名性」に魅力を感じていると語りつつも、犯罪に使われるリスクも認めています。

銃の発射音を減衰するサプレッサーも3Dプリンターで作成しますが、これは連邦法で厳しく規制されているため、免許なしで作ると重罪に。今回は協力者が作成したため、合法だとのこと。

出力した銃を試射したところ、最初はサプレッサーのせいでスライドが正常に動作せず誤作動が発生。しかしサプレッサーを外すとセミオートマチックとして正常に動作しました。

実際の事件映像でも犯人はスライドを手で引いており、同じ構造的問題を把握していた可能性が高いことがわかります。

銃規制団体であるEverytownのニック・サプリナ氏は「通貨偽造防止のような検出機能を3Dプリンターに組み込むべき」と主張。一方で、所有者の自由を制限する動きには大きな反発が予想されます。

グリーンバーグ氏は「法整備が追いつかない限り、今後もゴーストガンとそれを使う犯罪者は増え続ける」と警鐘を鳴らしました。

なお、作成した銃をニューヨークに持って帰ることは違法になってしまうため、グリーンバーグ氏は銃を作成したルイジアナ州の地元警察に提出しています。

さらに以下のムービーでは、フィリピン・セブ島のダナオ市が「ゴーストガンの首都」と呼ばれ、自家製かつ登録不可能な銃が大量に製造されている様子が報じられています。市全体の人口の20%以上がゴーストガンの製造に携わっており、警察による摘発も年に数回あるものの、市民同士で情報を共有して職人たちは山奥へ逃げて身を隠すことができるため、取り締まりが困難。こうしてダナオ氏で作られた銃については、日本にも流入することがあるそうです。

フィリピンのゴーストガン取引の内幕 - YouTube

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