飛び出したパルサーが痕跡を残す“カシオペヤ座”の超新星残骸「CTB 1」
こちらは、カシオペヤ座の方向・約7000光年先の超新星残骸「CTB 1」の様子。
カナダのドミニオン電波天文台とアメリカのカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)で取得したデータを使って作成されたもので、色は擬似的に着色されています。
淡く輝く泡のようなCTB 1の見かけの直径は約0.5度で、満月の視直径とほぼ同じ大きさがあります。
【▲ 電波で観測された超新星残骸「CTB 1」(Credit: Composite by Jayanne English, University of Manitoba, using data from NRAO/F. Schinzel et al., DRAO/Canadian Galactic Plane Survey and NASA/IRAS)】超新星残骸は、質量が太陽の8倍以上ある恒星が超新星爆発を起こした後に観測される天体です。爆発した星の周囲に広がるガスを衝撃波が加熱することで、可視光線、電波、X線といった電磁波が放射されていると考えられています。
CTB 1の左下を見ると、細長い線のような構造が捉えられています。長さ約13光年にわたるこの尾のような構造の先端ではパルサー「PSR J0002+6216」(以下「J0002」)が見つかっています。
パルサーは高速で自転する中性子星の一種で、自転にともなう規則正しいパルス状の電磁波が観測されます。J0002の自転周期は毎秒8.7回で、その規則正しいガンマ線パルスを捉えたNASA=アメリカ航空宇宙局のガンマ線観測衛星「Fermi(フェルミ)」の観測データから発見されました。
2019年にはFermiの10年にわたる観測データをもとに、J0002がCTB 1を作り出した超新星爆発によって弾き出された可能性を示す研究成果が発表されました。J0002の移動方向を逆にたどった先や、通過後に残された尾のような構造は、いずれもCTB 1の中心を指し示しているといいます。
J0002の移動速度は当初の研究では毎秒約1100kmと算出されていましたが、その後の研究で毎秒約335kmに下方修正されました(いずれも地球からの距離を2キロパーセク=約6500光年と見積もった場合)。J0002の移動速度から算出した、現在観測されているCTB 1の推定年齢も、当初の約1万年から約4万7600年に修正されています。
冒頭の画像は2019年3月19日付でNASAから公開されました。本記事は画像公開翌日付の記事をリライトしたものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部