恐竜も食べた「超肉食動物」、巨大ワニの骨格を発掘 アルゼンチン

パタゴニア南部で見つかった新種の巨大ワニの骨格を3Dプリンターで再現した標本/José Brusco

(CNN) 数千万年前、巨大なワニに似た頂点捕食者が、パタゴニア南部の湿潤な淡水氾濫原(はんらんげん)を闊歩(かっぽ)していた。体長は最大3.5メートル、体重は約250キロにもなり、捕まるものは何でも食べていた。一部の恐竜もその餌食になった。

南米大陸南端近くのアルゼンチンで科学者たちは最近、この「超肉食動物」の頭蓋骨(ずがいこつ)と顎(あご)を含む骨格を発見した。超肉食動物は、食べる物の70%以上を肉が占める動物を指す。科学者らはこの動物をコステンスクス・アトロクス(K.アトロクス)と命名。現代のアリゲーターやクロコダイルの太古の近縁種に当たるペイロサウルス科ワニ目の新種と説明した。同国のチョリジョ層で発見された初めてのワニ形類で、生息年代は白亜期末の約7000万年前とみられる。この研究グループがこれまでに発見した中で最も完全な化石となっている。

研究者らは8月27日、PLOS One誌の中で報告した。この地域でこれまでに見つかった絶滅捕食動物の中で2番目に大きい他、同種のワニ形類としては最大級の部類に入るという。

チョリジョ層で過去に見つかった他の化石から、K.アトロクスは恐竜、他の爬虫(はちゅう)類、両生類、そして現代のカモノハシの祖先までもが生息する多様な環境で暮らしていたことが分かる。研究論文の筆頭著者でブエノスアイレスのマイモニデス大学フェリックス・デ・アザラ自然史財団の古生物学者フェルナンド・ノバス博士によると、巨大な頭部、強力な顎、そして大きな歯を持つK.アトロクスは草食恐竜を容易に狩り、肉食の獣脚類恐竜に対抗して獲物を確保することができたと考えられる。そのためワニ形類は、当時の陸上生態系の重要な一部になっていたという。

ノバス氏はK.アトロクスがこれまでよりはるか南で発見されたことで、生息範囲とみられる地域が大幅に拡大したと説明。ブラジルやパタゴニア北部の暖かく乾燥した地域限定ではなく、温帯環境にも適応していたことを示唆していると述べた。

K.アトロクスの頭蓋骨の化石/José Brusco

セントラルオクラホマ大学の助教で古生物学者のキーガン・メルストロム博士はK.アトロクスについて、他のワニの仲間と酷似している点が本当に興味深いと話す。同氏は今回の研究には関わっていない。このような類似性は、近縁ではない種が進化して類似した特徴を持つようになる「収斂(しゅうれん)進化」の一例だ。

それでもK.アトロクスには、いくつか重要な点で現代のワニとの違いがある。彼らの鼻孔は前を向いており、眼は頭蓋骨の側面に位置している。一方、現代のワニは眼と鼻孔が頭蓋骨のより高い位置にあるため、体の大部分を水中に保ったまま獲物を待ち伏せすることができる。

恐竜さえも捕食する「超肉食動物」だったとみられる太古の巨大ワニのイメージ図/Gabriel Diaz Yanten

解剖学的証拠から、K.アトロクスは中型の草食恐竜が暮らす陸上で獲物を探していたと考えられると、ノバス氏は述べた。

K.アトロクスをはじめとする大型のワニ目が白亜紀末の大量絶滅を生き延びることはなかったが、他のワニ類は生き延びた。おそらく、小型で多様な食性だったためだろうと、メルストロム氏は述べた。同氏はワニの食習慣が進化にどのような影響を与えたかを研究している。

「今年初め、私は超肉食動物の方が小型種よりも大量絶滅で絶滅する可能性が高くなるという仮説を立てた」「ここではその通りのことが起きていたようだ」(メルストロム氏)

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