ウォール街、関税について大統領の翻意促すことをベッセント氏に期待
トランプ米大統領が2日に米国の貿易相手国に対する相互関税を発表し、3日に市場が大混乱に陥った瞬間から、元ヘッジファンド運用者であるベッセント米財務長官の携帯電話には、同業界の関係者からテキストメッセージが次々と届いた。
事情に詳しい関係者によると、複数のヘッジファンド運用者や金融業界の幹部が、関税についてトランプ氏を説得する手助けをベッセント氏に求めた。
過去にソロス・ファンド・マネジメントの最高投資責任者(CIO)を務めたベッセント氏は、極端な関税は米経済にとって有害で市場を混乱させ続けると大統領を説得できる人物と見なされていた。
しかし実際には、ベッセント氏は関税についての議論で重要な役割を果たしてはいなかったと事情に詳しい関係者は語る。
関税案は主にトランプ氏側近の小人数のグループによって策定された。関係者によると、ベッセント氏は大統領執務室での会議で、さまざまな関税率に基づく市場と経済の潜在的なシナリオを提示したにとどまるという。
財務省報道官はコメントを控えた。
米経済の再構築と米製品の振興を目指すトランプ氏の試みは、国際貿易が世界秩序を推進するという考えから数十年にわたって利益を得てきたウォール街の既得権益層と相いれない。
少なくとも過去2日間は、ウォール街が恐れていた大混乱が現実のものとなり、市場では5兆4000億ドルの価値が消失した。S&P500種株価指数は11カ月低水準まで下落。世界中でリセッション(景気後退)への懸念が高まっている。
減税と規制緩和を公約に掲げるトランプ政権を支持していた企業経営陣は今、自らのビジネスを混乱させる恐れのある経済政策に直面している。
プライベートエクイティー(PE)投資会社は新規株式公開(IPO)中止を決定し、ヘッジファンドはトランプ氏の次の動きが予測できないため、取引を控える方向に傾いている。
関連記事:ヘッジファンド、トランプ関税の混乱に降参-無難な「静観」に傾く
より成長志向の政策を予測していた銀行の経営陣は、期待を後退させざるを得ない。相場急落により、トランプ氏を支持する議員らも広範な影響を懸念し始めた。
クルーズ上院議員(共和、テキサス州)は、関税は「米国内の雇用を破壊し、米経済に深刻な打撃を与える」と発言。関税による経済への打撃のために2026年の中間選挙で共和党が「惨敗」する恐れたがあるとポッドキャストで警告した。
関連記事:米共和のクルーズ上院議員、トランプ関税を批判-経済への打撃を警告
大統領1期目には株式市場の動向に細心の注意を払っていたトランプ氏だが、今回は関税のために株価が急落しても方針転換する様子は見えない。
トランプ氏は4日、政策を維持すると表明し、大企業は関税計画を不安視してはいないと述べた。一方、政権内の当局者らは、株価急落によって神経質になり、7日も売りがで続くかどうかを見守っている。
しかし、トランプ氏は関税に関して長期的な視点に立っていると事情に詳しい関係者は話す。米国の製造業を復活させ、サプライチェーンを確保し、他国への依存を減らす必要性をトランプ氏は強調している。
ホワイトハウスのデサイ報道官は「大統領の決定を導く唯一の重要な要素は米国民の利益だ」と述べ、「政権は米国の危機への対処で一致団結している。危機が恒常的な貿易赤字によって引き起こされたことを、大統領が正しく認識した」と語った。
政権外のトランプ氏のアドバイザーは、関税発表の方法と相場急落の中でのホワイトハウスのコミュニケーション戦略を批判。エコノミスト、企業経営者、労働組合の代表によるチームに関税計画をテレビで説明させるべきだったと述べた。
ベッセント氏は依然としてトランプ政権の経済チームの主要メンバーだと政府当局者が述べている。しかし、事情に詳しい関係者によると、関税についての議論は上級顧問のピーター・ナバロ氏とラトニック商務長が中心だという。通商代表部(USTR)のグリア代表も重要な一員だ。
ベッセント氏は2日に関税が発表された後のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、自分は他国との交渉には関与しておらず、税制改革に専念してきたと述べた。
保有企業のIPOで投資資金を回収することを目指していたプライベートエクイティー投資会社は頭を抱えている。しかしこれまでのところ、大統領の不興を買うことを恐れ公に意見を表明することはせず、ロビイストなどを通じて懸念を伝えることを試みている。
原題:Wall Street Gets Shock as Bessent Plays Second Fiddle on Tariffs(抜粋)