日銀12月利上げあるか植田総裁講演に注目、可能性は結構高いと門間氏
日本銀行の政策委員から利上げに前向きな発言が相次ぐ中、12月の利上げはあるのか、1日の植田和男総裁の講演と記者会見に注目が集まる。足元の急速な円安進行を踏まえ、元理事の門間一夫氏は12月の可能性が高いと語った。
みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストの門間氏は25日のインタビューで、ネガティブなニュースが起きず、円相場も現状程度であれば、「12月利上げの可能性は結構高い」と語った。1ドル=160円に迫る円安を受け、日銀は物価の上振れリスクが高まっていると判断することもあり得るとの見方を示した。
こうした日銀の金融政策運営は、物価高対策を最優先とする高市早苗政権の方針とも矛盾しないという。高市首相と植田和男総裁が18日に初会談するなど政府と日銀のコミュニケーションもとれているとし、「物価高対策の最大の敵」である円安の是正に向けて日銀が利上げで対応することを政権も許容するとみている。
日銀内では、政策委員のうち正副総裁を除く審議委員主導で利上げ議論に広がっており、10月会合の主な意見でも利上げ時期が近づいているとの意見が目立った。12月18、19日の金融政策決定会合での利上げの有無を占う上で、1日の名古屋市における植田総裁の講演と記者会見が最大の焦点となる。
前回の利上げが行われた今年1月会合の前には、植田総裁と氷見野良三副総裁が、同会合で「利上げを行うかどうか議論し、判断したい」と相次いで発言。市場の利上げ予想が発言前の約40%から80%程度に急騰した。足元で12月に日銀が政策金利を0.5%程度から0.75%程度に引き上げるとの予想は40%弱となっている。
片山さつき財務相は21日の会見で、円安は一方的で急激とし、為替介入は選択肢として「当然考えられる」と発言。植田総裁も同日の国会で、円安の物価への影響を注視していくとし、「基調的な物価上昇率に影響する可能性にも留意しないといけない」と踏み込んだ。円安阻止に向けて政府・日銀の足並みがそろうかが焦点となる。
植田総裁が利上げ判断において、来春闘に向けた「初動のモメンタム(勢い)」を重視する見解を表明している中で、年始の経営者の発言や支店長会議などを見極めるのが最も安全だと門間氏は指摘。来年1月に利上げが先送りになる可能性も排除はしていないと述べた。
審議委員
日銀内の利上げ議論を巡っては、小枝淳子審議委員が20日の講演で基調的な物価上昇率は「2%ぐらいになってきている」とし、現状の極めて低い実質金利を踏まえて金利の正常化の必要性を訴えた。増一行審議委員も同日の日本経済新聞とのインタビューで、利上げの環境は整っていると言及した。
高田創氏と田村直樹氏の2審議委員は、9月に続いて10月会合でも政策金利の維持に反対し、利上げを提案した。総裁講演に先立つ今月27日には、野口旭審議委員が大分市で講演と記者会見を行う。金融緩和や財政出動に積極的なリフレ派だが、9月の講演では「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつある」と発言している。
植田総裁が12月に利上げを提案すれば、9人の政策委員全員が賛成するだろうと門間氏はみている。一方、総裁が来年1月まで待つという判断をした場合、既に反対票を投じている2人を除き、他の政策委員は政策維持を支持するだろうとの見方を示した。
12月会合では、政府が21日に閣議決定した21.3兆円規模の総合経済対策の効果も踏まえて先行きの経済・物価情勢を議論する。ガソリンの旧暫定税率の廃止などは直接的に消費者物価を押し下げる。一方で、重点支援地方交付金の拡充や所得税の「年収の壁」の引き上げなどは経済・物価の押し上げ要因になる可能性がある。