トランプ氏、東南アジア4カ国と相次ぎ貿易合意-内容は一方的との声も

トランプ米大統領は東南アジア訪問で、自らの政権が「歴史的」と称する貿易合意を相次いで打ち出した。ただし詳細を見ると、合意内容は不均衡で不透明な点も多い。

  トランプ氏は26日、マレーシアの首都クアラルンプールに到着後、マレーシアとカンボジアとの貿易合意を発表したほか、タイとベトナムとの合意枠組みも明らかにした。

  これらの合意によって、米国側には米国の輸出品に対する関税や非関税障壁の撤廃のほか、東南アジア諸国による数十億ドル規模の米国製品購入の確約など、明確な成果が示された。

  一方で、東南アジア4カ国にとっての利益は見えにくい。各国は、トランプ氏が当初課した19-20%の関税率を引き下げることができず、カンボジアやマレーシアの一部輸出品が関税免除となるものの、その対象は限られている。

マレーシアのアンワル首相、タイのアヌティン首相、カンボジアのマネット首相、トランプ米大統領

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のタマラ・ヘンダーソン氏とアダム・ファラー氏は、これらの「一方的な」合意は「東南アジアにとって明確なコストと不明確な利益をもたらす」と指摘。「合意は東南アジアへ輸出される米国製品に対する関税を引き下げ、規制を緩和するとみられ、既に米国の広範な関税政策に圧迫されている域内産業にとって脅威となる」と述べた。

  バークレイズによると、マレーシアに与えられた関税免除は対米輸出の約120億ドル、国内総生産(GDP)の2.8%に相当するが、そのうち約110億ドル分は制限付きで、実際に無税となるのはGDPの0.2%に相当する約10億ドルにとどまる見通しだ。

  バークレイズのエコノミスト、ブライアン・タン氏らはリポートで「合意に基づき相互関税が免除されるマレーシア製品のリストは膨大に見えるが、そのほとんどは制限の対象となっており、実際のプラスの影響は比較的限定的である可能性が高い」と分析した。

  マレーシア株式市場は27日に0.3%上昇したが、日本や韓国など他の主要市場に比べ伸びは小幅にとどまった。28日は反落している。投資家は既に合意内容を織り込んでいたとみられる。通貨リンギットは28日、対ドルで0.2%上昇。

  関税引き下げに加え、多くの合意には米国製品やコモディティーの購入に対するコミットメントも含まれている。マレーシアとの合意には、マレーシア企業による米国の半導体、データセンター、航空宇宙関連製品など約1500億ドル(約22兆8600億円)相当の購入が盛り込まれた。

  マレーシアのザフルル投資貿易産業相は、今回の合意で米国市場へのアクセス改善に加え、パーム油、カカオ、医薬品の関税免除が得られると説明。同国のアンワル首相も、米国は半導体の関税について「交渉に応じる用意がある」との見方を示した。

関連記事:米国の半導体関税、現時点で問題ではない-マレーシア首相

  カンボジアのチャントル副首相は今回の合意に「満足している」としながらも、輸出の約半分を占める衣料品と靴の関税免除をなお望んでいるとした。

  タイのスパジー商務相は声明で、今回の枠組みは拘束力を持たず、年末までの最終合意を目指して協議を続けると明らかにした。

原題:Trump’s New Trade Deals Give US an Edge Over Southeast Asia (1)

— 取材協力 Francesca Stevens, Avril Hong, Suttinee Yuvejwattana, James Mayger, Nguyen Dieu Tu Uyen and Karl Lester M Yap

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