AIでノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏のスピーチ : 読売新聞

(抜粋)  “Initially, we used games as the sort of perfect proving ground for AI, because it’s very easy to generate a lot of data on your computers. You can have the systems play against themselves…  “So, in most games, you can specify to maximize the score or to just win the game. So, it’s very clear if you’re making progress with your algorithmic ideas.”
(和訳)  当初我々は、ゲームを AI の検証に最適な場として使いました。というのも、コンピュータ上で大量のデータを生成するのがとても簡単だからです。システム同士で対戦させることもできます。(中略)  ほとんどのゲームで目的を明確に設定できます。スコアを最大化するか、ゲームに勝つかです。つまり、開発した計算手法がうまくいっているか、一目瞭然なのです。

未知の打ち手で人間に勝利

 昨年12月、ノーベル化学賞に選ばれた英グーグル・ディープマインド社の最高経営責任者デミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏の受賞スピーチは、人工知能(artificial intelligence)の進化とゲームの関係に入る。同社が開発した囲碁AI 「アルファ碁」(AlphaGo) は、2016年、当時世界トップだった韓国の棋士を破り世界を沸かせた。そこへの道のりを述べる。

 通常 sort of に使うのは不定冠詞と思えるが、ここでは定冠詞だ。これは「“perfect” という特定のものを指すから」と豪州出身の同僚は解説する。最上級のものに the が付くのと同じという。

 proving ground は、性能や正しさを証明するための場所を指す。似た言い方には、試すための testing ground もある。

 さて、ゲームの最高峰は碁だとハサビス氏は話し、その理由を述べる。

 “It’s probably the most complex game we’ve ever devised. One illustration of how complex Go is that there are 10 to the power of 170 possible positions, which is more than there are atoms in the universe.”

 (碁は、人類が考案したおそらく最も複雑なゲームでしょう。囲碁がいかに複雑かを示す一例を挙げるなら、石の置き方は10の170乗通りもあります。宇宙に存在する原子の数よりも多いということです)

 日本語の「イラストレーション」は説明用の絵図を指すが、illustration の本質は「例示による説明」だ。語源を探ると、中を示す in- に、光を当てる lustrare からなる。同じ語源、意味の単語に illumination もある。

 10の170乗は、10を170回かけ合わせたとてつもない数だ。乗数は普段の生活であまり使わないが、x to the power of y(x と y は数)を一つの塊として覚えよう。

 碁の英語表記は、語頭が大文字になっていることに気づいた人も多いだろう。同じつづりの動詞と混同を防ぐためと思われるが、実際には小文字表記もある。英英辞典の Merriam-Webster のオンライン版では、“often capitalized”(しばしば大文字で表記される)とあり、確定はしていないようだ。

 アルファ碁のすごさは、膨大な数の候補から最適な打ち手を選び出す計算能力に加え、今までにない新戦法を見つけたことだという。

 “Importantly, it actually came up with new creative strategies and ideas that had never been seen before, even though we’ve played Go for thousands of years.”  (重要なのは、人類は何千年も碁を打ってきましたが、見たことのない新しく創造的な戦略や考えをアルファ碁は見つけたことです)

 come up with は、問題の解決法などを考え出すことを意味する。come up with a solution などの言い方がある。

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