ミャクミャク、なぜ人気?心理学者ら分析…「気持ち悪い」から一転「本当は優しいヤツ」との声も(読売新聞)|dメニューニュース
万博会場で人気を集めるミャクミャク(13日、大阪市此花区で)=宇那木健一撮影 【読売新聞社】
大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の人気がうなぎ登りだ。関連グッズは飛ぶように売れ、着ぐるみの周りには人だかりができる。3年前に登場した時は「気持ち悪い」といった否定的な反応が目立っていた。受け入れられている理由を、心理学などの専門家に聞いた。(林美佑、石見江莉加)
予想外の人気
「ミャクミャクや」。13日昼、万博会場の西側エリアで歓声が上がった。現れたミャクミャクの着ぐるみに、子どもたちが駆け寄り、一斉にスマートフォンが向けられた。
大阪府八尾市の小学3年男子児童(9)は、4月のリハーサル「テストラン」でミャクミャクに手をつないでもらって以来、ファンになったという。「目がいっぱいあって怖かったけど、本当は優しいヤツだと思った。万博が終わってミャクミャクがいなくなったら寂しい」と話した。
ミャクミャクのデザインが発表されたのは2022年3月。「水の都」大阪にちなみ、様々な形に変化する水と万博の赤いロゴマークを組み合わせた。4か月後、公募で愛称が「ミャクミャク」に決まった。
この頃、大阪府と大阪市には、市民から「腕が溶けているようにみえる」「選び直してほしい」といった否定的な意見が電話やメールなどで多く寄せられた。府・市の万博推進局の担当者は「当時は、ここまで人気になるとは想像できなかった」と驚く。
慣れた?
記者が万博会場で来場者に取材すると、多くの人が「最初は気持ち悪いと思っていた」と口をそろえた。
大妻女子大の野澤智行教授(キャラクターマーケティング)は、当初は「かわいくない」と批判を浴びた奈良県の公式キャラ「せんとくん」との共通点を指摘する。「気持ち悪いけどかわいいという『きもかわいい』が人気になる日本らしいキャラクターだ。着ぐるみになり、実際に動く姿を見ると愛着が湧いてくる面もある」と語る。
「慣れ」によって前向きな捉え方が生じると指摘するのは、北九州市立大大学院の松田憲教授(認知心理学)だ。「心をかき乱されるような刺激は記憶に残りやすい。何度も触れるうちに脳内の処理が慣れ、楽になってくる。その感覚を『好き』と認識することもある」と解説する。
コラボ商品
ミャクミャクの公式ライセンス商品の販売は、23年4月にぬいぐるみから始まり、今は手ぬぐいやカチューシャなど約8000種に広がった。サンリオのハローキティやシナモロールなどとのコラボ商品も多い。
近鉄百貨店(大阪市)が万博会場で運営する公式ショップでは、特にぬいぐるみが爆発的な人気で、メーカーに追加発注を依頼しても追いつかない状況だ。
広報担当の前川那央課長(34)は「想定をはるかに超える売り上げ」と驚く。「形や色、ポーズや表情の種類が豊富。他のキャラクターとのコラボのしやすさも魅力の一つ」と話す。
大中小のいずれかのぬいぐるみが当たるくじの売り場は18日、会場東側から西側に移された。パビリオンが比較的少ない西側に、にぎわいを生む役割が期待されている。
東京都西東京市の女性会社員(56)は5月に1時間半並んでくじを引いた。「正直、最初はそれほどかわいいと思っていなかった。会場にいる人がグッズを持っているのを見て不思議と愛着が湧き、記念にほしくなった」と話した。
松田教授は「みんなが持っていると、自分もほしくなる『バンドワゴン効果』で人気が加速しているのではないか。万博会場に行くと気分が高揚し、購買意欲が高まることもある」と指摘する。
SNS投稿、開幕後3倍に
関心の高まりはSNSへの投稿からもうかがえる。
読売新聞がデータ分析会社「ユーザーローカル」(東京)のSNS分析ツール「ソーシャルインサイト」を使い、「ミャクミャク」という言葉を含むX(旧ツイッター)の投稿(リポストを含む)を調べたところ、1日平均の投稿数は開幕前の3か月(1〜3月)は約5000件だったが、開幕後の3か月(4月13日〜7月13日)は3倍超の約1万8700件に増加した。
投稿内容を基に「ポジティブ」「ネガティブ」「中立」に分類すると、開幕後、肯定的な投稿は開幕前から微増の23・7%だったが、否定的な投稿は3・4%で半減した。(増田尚浩)