【動画】7000万年前の「超肉食」ワニの新種、陸の恐竜を捕食か

 2020年3月上旬、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館の古生物学者であるフェルナンド・ノバス氏とマルセロ・イサシ氏は、アルゼンチン、サンタ・クルス州エル・カラファテの町から約30キロ離れたチョリロ層へ、化石の発掘に出かけた。

 この地層からはメガラプトル類のマイプ・マクロソラックス(Maip macrothorax)や、ティタノサウルス類のヌロティタン・グラシアリス(Nullotitan glaciaris)、鳥脚類のイサシクルソル・サンタクルケンシス(Isasicursor santacrucensis)が見つかっている。

 調査1日目、ベースキャンプを設営後、約30人の科学者と技術者は化石探しに出発した。重いスキャナーなどの装置を背負いながら山の中を何キロも歩いた。しかし、大した発見は得られなかった。

「ところが、日暮れ直前になって幸運が訪れました」とイサシ氏は話す。

 調査隊がほぼ全員キャンプに戻った後、イサシ氏は最後の一人が戻ってくるのを、古生物画家で論文共著者のガブリエル・リオ氏と一緒に待っていた。しばらく待っても姿が見えないので、2人は心配になって探しに戻ることにした。

 しばらく行くと、まだ戻ってきていない隊員の叫び声が聞こえた。安心してペースを落としたイサシ氏は、ちょうど大きな岩と石灰質の塊がある場所を通り過ぎようとした。

 そのとき、ベージュ色の岩に埋まっている何かに気が付いた。よく見てみると、黒い骨だった。

「リオ氏に見せると、驚いた声で『歯だ。しかもかなり大きい』と言うんです。すぐに目を上げると、岩の割れ目に、見間違えようのない影があるのに気づきました。それで、『頭骨だ!』と叫んだんです」

【動画】2020年3月、アルゼンチンのチョリロ層で、ベージュ色の硬い岩の中からコステンスクス・アトロックスの黒い化石を発見した研究者たち。(VIDEO BY ALEXIS SOSA)

 化石のワニに詳しいリオ氏は、それがすぐにワニの頭骨だと気付いた。さらに、岩の中から骨格の一部も発掘した。彼らがそれまでに見たものよりもはるかに大きく、はるかに完全に近い状態だった。

「素晴らしい、忘れられない瞬間でした」とイサシ氏は振り返る。

強力な顎で何を食べていたのか

 調査に出ている間に、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まった。2020年3月24日、調査は中断。都市封鎖のなか、やっとの思いで化石をブエノスアイレスに運んだものの、博物館の研究室で作業する許可が下りなかったため、ノバス氏はイサシ氏に頭骨が埋まった岩を自宅に持ち帰るよう頼んだ。

 それから6カ月間、イサシ氏は精密な空気ハンマーを使って岩石を除去し、化石を取り出すことに専念した。何か新しいものを発見するたび、研究チームに知らせた。やがて、大きな黒く輝く歯が、口吻(こうふん)の下から現れた。

【動画】7000万年前の岩からコステンスクス・アトロックスの化石を削り出す。コロナ禍の間、技術者たちが細心の注意を払って何カ月もかけて作業した。(VIDEO BY SANTIAGO REUIL)

 頭骨は49センチと短く、口吻は幅広かった。一部の歯は5センチもあり、頭との比率では現生や絶滅したワニに比べて大きい。頭骨や下顎からは、強力なかむ力を生み出す筋肉が付いていたことが示唆される。

 こうした手がかりは、コステンスクスが超肉食性の頂点捕食者だったことを示していると研究者たちは言う。小型のアンキロサウルスやハドロサウルスといった鳥盤類のような、小型から中型の草食恐竜を食べていた可能性が高い。(参考記事:「恐竜捕食した超巨大ワニ、なぜ広く君臨できたのか、定説覆す新説」

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