【阪神】「まだ高卒1年目ですよね?」 西武育成19歳左腕の快投に才木、坂本ら衝撃隠せず
阪神は8日の「みやざきフェニックスリーグ」西武戦(南郷)に2―1で辛勝。相手先発の高卒1年目育成左腕・冨士大和投手(19)の攻略に終始手を焼き、若手主体のレオを相手にロースコアのゲーム展開を余儀なくされた。
ポストシーズンを目前に控えた虎からすれば、〝かませ犬〟のような相手…と思っていたら大間違い。南郷のマウンド上にいた無名左腕は正真正銘の獅子だった。
昨秋のドラフト会議で西武に育成1位指名されたばかりの冨士は、ついひと月半ほど前にようやく19歳になったばかり。身長186センチの長い腕をムチのようにしならせる変則的な投球フォームで坂本、木浪、小幡ら一軍経験豊富な虎戦士たちを終始圧倒した。
140キロ台後半の力感ある直球に加えチェンジアップ、フォークなどの変化球も切れ味十分。初回に豊田に先制ソロこそ浴びたが、2回~5回までは4イニング連続で三者凡退。四死球0と抜群の制球力で、虎打線の内角を容赦なく突き続けた。
球数が100球にさしかかった7回に野選で1点を失い、なおも一死二、三塁のピンチを背負ったが中川を見逃し三振、井坪を三ゴロに打ち取り窮地から脱出。7回4安打無四死球7奪三振2失点の堂々たる投球内容で、背番号123はマウンドを降りた。
全くの無名投手の快投に、猛虎の看板選手たちも衝撃を隠せなかった。この日、CSファイナルステージ(15日開幕、甲子園)へ向けた最終調整登板に臨んだ才木浩人投手(26)はゲーム後「向こうの冨士君…でしたっけ? すごくいいピッチャーでした」と記者たちに対し、自ら切り出す形で言及。
セ・トップの防御率1・55でタイトルを確定させ、米球界からも注目される本格派右腕は「直球の質もすごくいいと思いますし投げ方を見てもしなやか。(打者は)タイミングを取りにくいだろうなと思いながら見ていました。まだ高卒1年目ですよね? すごい楽しみだなと思います」と賛辞を惜しまなかった。
虎の扇の要として、12球団最強の投手陣を牽引した坂本誠志郎捕手(31)も「いや…。いいピッチャーですね」と少し表情を明るくしつつも驚きを隠せない。「直球も強いし変化球でいつでもカウントが取れる。高卒1年目とは思えない。球威も落ちないしマウンドから『抑えてやる』という気持ちも伝わってきた。僕も前に飛ばそうと思って打ったんですが、前に飛ばなかった(笑い)。すげえなあと思いました」。
この日侍ジャパンへの選出が発表されたばかりの坂本は、今や名実ともに球界を代表する捕手のひとり。虎の頭脳派は「打席に立っている相手にいろいろ考えさせると、抑えることができる可能性も上がる。そういうピッチングをしていると感じた。とてもいいピッチャー」と19歳の野球脳やメンタルの強さも称賛した。
入団会見時の富士大和
藤川球児監督(45)も報道陣の問いかけに応じる形で「自分は今、CSに向かうチームの監督ですから、監督という立場を外せば…。良かったですよ。非常に。冨士投手も良かったですし最後の41番の投手(成田)も良かったですね。評論家としてなら言えますが、仕事が違うのでね」とコメント。日ごろは他球団選手への言及を極力控える虎指揮官も一線を踏まえながら、その将来性に太鼓判を押した。
この日の試合終了後、冨士は取材に応対。「才木も坂本も藤川監督も、冨士くんのこと褒めていましたよ」と水を向けられると「ホントっすか~! うれしいっす!」と19歳の少年らしい屈託のない笑顔で表情をほころばせる。「自分の実力を試せるいい機会でしたし、自信を持ってしっかり内角を突くことができました。きょうは成長できた一日だったと思います」。
当面の目標は支配下昇格。だがそう遠くないうちに、新たな難敵として虎の前に立ちはだかる日も来るかもしれない。