アングル:海外勢、中国株の戦略修正 長期投資から短期売買に
[シンガポール 29日 ロイター] - これまで中国の経済発展に賭けてきた海外投資家の間で、長期的な繁栄という壮大な展望に見切りをつけ、中国を「少額投資で手早く利益が得られる市場」と位置付ける動きが広がっている。
中国株式市場は昨年、景気対策への期待で一時的に急伸したものの、その後は政策に対する失望感や景気の先行き不透明感を背景に横ばい圏での値動きが続いている。
ゴールドマン・サックスの中国株ストラテジスト、キンガー・ラウ氏は「中国市場は基本的にトレーディングの場と見なされている。投資家は何かきっかけがあれば市場に参入し、短期間で売り抜けていく」と述べた。
トランプ米大統領の対中政策と中国政府の反応が明らかになるまでは、投資家の様子見姿勢が続く見通しという。
ゴールドマンによると、一時的な急騰で利益を得たヘッジファンドの大半は昨年10月までに市場から撤退。バンク・オブ・アメリカのファンドマネジャー調査では、今後1年で中国経済が好転すると予想した回答者はわずか10%で、昨年10月の61%から減少した。ファンドマネジャーの4分の1近くが中国株をアンダーウエートにしているという。
<先行きに不安>
長期投資家の悩みの種は、マクロ経済の見通しがますます不透明になっていることだ。
トランプ氏が対中関税を発動するとの見方は多く、政府の景気対策の詳細も依然はっきりしない。
HSBCのアジア調査責任者ジョーイ・チュー氏は、国内問題と外部のリスク要因で、人民元の見通しは「非常に厳しい」と指摘。「再び資本流出が起きており、財政刺激策導入の兆しが明確になれば支援材料になる」と述べた。
BCAリサーチの新興市場・中国担当チーフストラテジスト、アーサー・ブダギャン氏は「中国は為替レートの安定、金利の低下、資本流出の阻止、景気回復を望んでいるが、全てを同時に達成するのは不可能だろう」との見方を示した。
もっとも、一部の投資家は中国株の割安感を指摘している。上海総合指数の予想株価収益率(PER)は約11倍。米S&P総合500種指数は22倍だ。
シティ・ウェルスのアジア太平洋投資戦略責任者ケン・ペン氏は、銘柄選定のチャンスが豊富にあるとの見方を示し、国内観光とオンライン教育の一部分野に期待が持てそうだと述べた。
ただ、予測が不可能という理由で銘柄選定に慎重な姿勢を示す投資家もいる。
J・サフラ・サラシンのチーフエコノミスト、カルステン・ジュニウス氏は「われわれが推奨するのは勝者を選ぼうとしないことだ。中国当局がどのセクターを優遇し、どのセクターを冷遇するか、事前に特定はできない」と述べた。
ただ、全体としては市場の停滞ムードが買いを手控える要因となっている。
中国政府は先週、投資信託会社と大手保険会社に株式投資を増やすよう指示。シティのアナリストによると、年間の資金流入額が少なくとも年間8200億元増える可能性があるが、この対策の発表後も上海総合指数はわずか0.5%しか上昇しなかった。
MFSインターナショナルのグローバル投資ストラテジスト、ロブ・アルメイダ氏は「私にとって中国は投資の対象ではなく、トレーディングの対象だ」とし、不動産市場から人口動態に至るまでさまざまな問題を挙げた。
同氏は「中国のビデオゲーム会社数社と生活必需品メーカー数社に投資しているが、非常に厳選した投資だ」と語った。
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Tom reports from Singapore on financial markets in Asia, filing daily market reports and deeper pieces on stock, bond and foreign exchange trade. He contributes to the Morning Bid newsletter. He was previously a company and general news correspondent in Sydney and a reporter for News Ltd.